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ユイがいる『お菓子』で『おかし』な日常  作者: 阿礼 泣素
3章 魅せろ! 新たに開幕、天上天下ユイちゃんが独尊カップ
13/59

『戦うアイドル』

1年ババアロア組の生徒が後にエクレア組の脅威となることを、まだだれも知らないのであった……

「夕影君……どう、かな……」

「惟斗! 私が一番かわいいよな!」

「夕影さんは私を選ぶに決まっています……」

「惟斗君……分かってるわよね?」

「夕影……」

 天彩、彈野原、牧ノ矢、我舞谷、ユルゲンスが夕影に秋波を送る。

「ちょ、ちょっと待ってくれ! もう少し時間を!」


「「「「ダメー!」」」」


そう言われ、夕影は五人の少女に押し倒された。




――時は一時間前に遡る。


「はーい、みなさん! おはようございます! 突然ですが、みなさんには『アイドル』になってもらいます!」


 美甘先生が出し抜けにクラスの皆に告げる。あまりにも荒唐無稽な話だったため、皆は唖然としていた。


「それって、歌って踊る……あの、『アイドル』ですか?」


 牧ノ矢が皆の心を代弁するように質問する。


「うーん……歌って、踊ってだけじゃなくって……」


 一呼吸置いて美甘先生は言った。


「――『戦うアイドル』かな!」


 《天上天下ユイちゃんが独尊カップ》、通称《ユイちゃん杯》。それは、クラス対抗の《アイドル戦争》と言い換えることが出来る。クラスの数人でアイドルユニットを組み、歌って踊りながら、「戦う」。二クラス同時にステージの設営を行い、対戦相手のクラスのステージに《克巧力》を使って攻撃を行いつつ、自分たちのクラスのステージを守るという攻守一体の競技である。ステージに上らない者はステージのアイドルを守りつつ、他クラスのアイドルへの攻撃を行う。ステージ上のアイドルは他クラスの攻撃を受けながらも、最後まで歌い続けることが求められる。ステージ上のアイドルが演技不能となった場合はその時点で試合終了となり、両クラスとも最後まで歌いきることが出来れば、厳正なる審査の上、勝敗が決する。


「要はアレだろ? 相手のステージをぶっ潰せば終わりってことだろ?」


 彈野原がいけしゃあしゃあとして言ったのをすかさず我舞谷が否定する。


「この競技はそんな簡単なもんじゃないでしょ。攻守のバランス、アイドルのユニット編成、《克巧力》をどこでどう使うのかってことを色々考えないとこの勝負は勝てない。単純そうに見えて良く考えられている……」


「我舞谷さん、解説ありがとうございます」


「別に、そんなつもりで言ったわけじゃないわ。彈野原さんの意見に一言いいたかっただけだから」


 水会が我舞谷に礼をするも、我舞谷は眉ひとつ動かさず水会に返答する。字面だけをみるといかにもツンデレ風に見えてしまうが、決してそうではない。我舞谷はそのような語調で言ったのではない。あくまで棒読みだった。


「で、この競技に意味はあるの? っていててて……」


 無相が無骨にこの競技の意義について問おうとしたところをユルゲンスが頬をつねってやめさせる。

「無相! この競技を行う意味など言わずとも、一つに決まっているだろう!」


「……ユイドラシル、だね」


 天彩がぼそりとつぶやきながら夕影の方に視線を向ける。




――俺は……どうすれば……


 数分の潜思の後、夕影はある結論に到達する。


「決めた! この一年エクレア組は、この《天上天下ユイちゃんが独尊カップ》に出場し、優勝してみせる!」


 夕影は意気揚々と押っ立ち、必死に学級委員長らしいところをみせようとした。


「お! いいねー夕影君! この勢いのあるうちに一つ頼みたいんだけど、いいかな?」


 美甘先生は夕影が波に乗っているところを見計らって依頼する。


「良いですよ! 俺に出来ることなら……」


 それは一種の気の迷いだったのかもしれない。あるいはお決まりのパターンで、どう足掻いたって、この展開は約束されていたのかもしれない。夕影は美甘先生の要望に応えようとした。それが、今回の一年エクレア組の方針を良くも悪くも決定してしまった。


「夕影君……プロデューサーになってくれない?」

「!?」


 こうして、夕影 惟斗はこの一年エクレア組の学級委員長兼プロデューサーということになった。


学級委員長兼プロデューサーになりました。


次回は明日6月9日7時更新です。

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