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ユイがいる『お菓子』で『おかし』な日常  作者: 阿礼 泣素
2章 目指せ! この世のてっぺん、ユイドラシル!
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委員長決定

それでは早速、この一年エクレア組の委員長が決定したので名前を呼びたいと思います……」

――ドゥルルルルー……


突如、美甘先生は口でドラムロールを始め、そして、こう続けた。


「……出席番号七番、夕影 惟斗君!」


 夕影の名前が呼ばれ、当の本人もまさか自分の名前が呼ばれるとは思っておらず、どんな顔をしてよいのか困っている様子だった。


「いや……でも……俺は……」


「決め手は二つ! 一つは他の人を守ろうとしていたってこと! これからの戦いはクラス一丸となってのチーム戦です、クラスのみんなのこと大切に出来る人がこのクラスの長としてふさわしいと思います!」


「でも……あれは……」


 そう言いかけた夕影を遮って、美甘先生は続ける。


「そして、理由二つ目! ここでは個人情報なので言えないけれど、夕影君、君自身は分かっているよね? あなたは他の人よりも優れている理由があることを……」


「…………」


 夕影は知っていた。この世界で自分が圧倒的なアドバンテージがあることを……そして、それは同時に夕影の心の傷であり、触れてほしくはない部分であった。


――これはまた狂った因果だな。一度は捨て去ったと思っていたのに……


 もう一度、自分自身と深く向き合うチャンスなのかもしれない。そう感じた夕影はこの結果に反抗する気はなかった。


「どうしても気になるって人は夕影君と仲良くなって教えてもらってくださいね! はい! 夕影君からも一言!」


 そう付け加えて、美甘先生は夕影に発言権を譲渡した。


唐突に回ってきた発言タイム。(二回目)


「えっと……その……いきなりのことで戸惑っていてなんて話せばいいのか分かんないんですけど……その、あの、とりあえず、こんな俺が学級委員長になって不満のある人もいるかもしれない。でも、そんな人にも認めてもらえるように、そして、胸張って一年エクレア組の学級委員だって言えるように、これから精いっぱい頑張っていこうと思うので、どうかよろしくお願いします」


 まばらな拍手が起こり、夕影はみんなが自分を認め、受け入れてくれたのだということを感じた。


「ふふふ……みんなを手中に収め、これで早くも夕影ハーレムの完成ってわけね………抜け目のないその態度に脱帽……」


 牧ノ矢が皮肉を込めつつ夕影に向かって囁いた。


「私は決して巷で話題のちょろインなどではないからな! 覚えておけ!」


「彈野原さん……それフラグ……」


 彈野原と水会がさながら漫才コンビのように息の合った様子をみせている。


「まあ、一時的に協力するってだけだからね、別にあなたのことを認めたということではないから。そこははき違えないで欲しいわ」


 字面だけをみるといかにもツンデレ風に見えてしまうが、決してそうではない。我舞谷はそのような語調で言ったのではない。あくまで棒読みだった。


「トップになることに意味なんてないのに……」


 無相が、意味ありげにかつ無神経にそう言った。


「……このユイアーネ・ユルゲンス! いつでも下剋上のために牙を研いでいるということを忘れるなよ!」


 ユルゲンスは思いのたけを赤裸々に夕影にぶつけ、夕影に戦闘の意志が依然としてあるということを伝えた。


「夕影君! 頑張ってね!」


 そして最後に、天彩が夕影に向かって微笑んだ。


――ああ、俺はこの笑顔のために頑張ってるんだなあ。


 なんて、少々クサい様なことも考えつつ、夕影は改めて自分がこの学級の級長に選ばれたということをかみしめていた。


――そういや、俺がそんなポジションになったことはなかったな……


 平平凡凡、普通の中の普通の夕影には縁のない役職だと思っていたが、まさかこんなことになるなんて……


 各々が一年エクレア組の学級委員長である夕影にコメントを残し、夕影がその背負った役割について自覚したところで、この《スイーツグランプリ》は幕を閉じた。


だが、まだまだ彼らの戦いは始まったばかりである。今はまだスタートラインに立っただけ、本当の物語は今まさに始まろうとしている。無理矢理この世界へと誘われた夕影惟斗という少年が何をして、何を残すのか……


――そして、


夕影は自分が男であることがどれだけ重要であるかということをまだ知らない……



次から新章です


次回は明日6月7日7時更新です。

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