プロローグ
ーー痛い痛い痛い痛い痛い。
もし神という存在がこの世に実在するなら、人智を卓越した存在がいるのなら、もしそいつがクソみたいな奴だったとしても、何と言われようと俺は助けを乞うだろう。
ーー血が流れ出ている。自分の体から。
閉じ込められていた獣ように獰猛
で濁流の如く流れ出ている。
ーー痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
心臓に槍でも刺さっているかもしれ
ない、いや刺さっているのだろうか
そんな事を考えていられる間は大丈夫なのだ
別に医療的な知識は持ち合わせていないが、何となく感じられた。まだ生きていいのかそんな考えが頭の中をよぎる。
ーーヤバいこれ以上持ちそうにない。
自分は何かこの世に残すことができたのか?
決して0ではない。この18年間一つでもいい事が出来ていれば天国に行ける。そう信じている。
ーー目の前に誰かが立っているのが分か
った。敵か味方かそんな事はどうで
もいい。今すぐ自分を殺してくれる
なら敵だったとしても。
次の瞬間だった槍が脳を貫通したのは。
痛さなどもう微塵も感じなかった。嬉しかった、この痛みから解放されるのが。自分がもう人としての理性を保っていないことはとっくの昔に感じていた。
ーー痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
だが俺は死ななかった。痛みに愛着が湧くほど殺された。拷問でもない殺人でもないそれは実験だった。狂気に満ち溢れた実験。誰が何の為に行っているかは知らない、いや知る必要なかった。そして彼女は机に置いてある紙にこう書いた。
「被験体01ー3月10日1890回目の殺害
で無事死亡。実験感想ーあれは人で
はない、人間の皮を被った化け物だ」