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旅人兄妹  作者: 秋津珠音
2/2

ふつかめ。兄の買い物

2話目です。

1話から考えていた設定ですが、兄は喫煙者です。

というより、葉巻やパイプの喫煙文化が一般人から高貴な人達にまで広く浸透し受け入れられている世界です。

って事で煙草なんてふざけんじゃねぇ!!って人は読まない方がいいと思うよ。


ぼやけた思考のなか。小鳥の鳴き声が聞こえ朝が来たことを知る。

瞼を開けると窓から差し込む日の光に目が眩む。

今横たわっているのがいつもの固い地面の上ではなく、柔らかいベッドの上であることを感じ、あぁ、僕達は町について宿に泊まっていたんだと思い出した。

妹は隣のベッドで幸せそうにまだ眠っている。

僕は起き上がると、窓に向かって歩いていく。

窓から見えるのは住人たちが活動を始め活気づいた町。

もう日が上ってしばらくたったのだろう。

机のそばにあった椅子を僕は窓際までもってくると、窓をあけ椅子に座る。

ベッドのそばに脱いでいた外套のポケットから()れた小さな葉巻を取り出すとゆっくりと火を着け燻らす。

前の町で買ったこの葉巻もこれで最後の一本だ。

今日は色々買い出しにいかないといけないな、なんて考えていると、眠っていた妹が小さな呟きと共に目を覚ました。


「兄さん?もう起きてたんだね」


「ああ、ついさっきね。……寝癖、すごいよ。部屋を出る前に直さないと」


「兄さんも、少し髪が立ってるよ?」


僕も人の事は言えない髪型になっているらしい。


「本当?……此方においで、髪を()かしてあげるから。そのあと僕の髪も直してよ」


ベッドからおり此方に歩いてきた妹の髪を梳かしながら今日これからの事を相談する。


「ねえ、今日は町を散策しながら色々買おうか。僕も前の町で買った葉巻が無くなっちゃったからさ」


「うん。そうだね。雑貨屋さんとかがいいかなぁ」


「じゃあ雑貨屋にも行こうか」


「昨日の雑貨屋さん?」


「他の所にする?」


「昨日の雑貨屋さんでいいよ?」


「そっか。じゃあ昨日の所にしよう。……はい、寝癖直ったよ」


「ありがとう。じゃあ次は兄さんの番。後ろ向いて?」


僕達は互いに髪を梳かすと部屋を出て酒場に向かう。


「おう、よく眠れたか?」


酒場のおじさんが話しかけてきた。



「ええ、とても」


「そうか。そりゃよかった。それで今日はどうするんだ?町の散策か?」


「はい、そのつもりです。……そうだ、いい煙草屋を知りませんか?前の町で買った葉巻が終わっちゃって新しいのを買おうと思うんですが」


「煙草屋か……というかお前煙草吸ってたんだな。昨日は吸ってなかったからてっきり吸ってないのかと思ったよ」


「ああ、昨日は残り一本だったので。朝起きた時に吸おうと思って吸わなかったんですよ」


「なるほど、お前が吸ってるのは葉巻なんだよな?俺はパイプだ。葉巻は少し高いからな。俺のよく行く煙草屋でいいか?たしか葉巻も売ってたと思うが」


「ええ、そこで構いません。僕も葉巻はたまにしか吸いませんから。パイプも持ってはいるんですよ。前の町を出る時にはまだ煙草葉が残っていたので買わなかったのですが、この町につく前に葉が終わっちゃって」


「そうか、じゃああとで案内しよう。ちょうど俺の煙草葉もきれそうなんだ。……それで、何か食べてくか?簡単な物なら出せるぞ?」


「ならそうですね……エメロード、何か食べたい物はあるかい?」


「う~ん、軽い物がいいかな。寝起きだし」


「そうだね。……じゃあパンとサラダはありますか?あとお茶があるといいんですが」


「おう、パンとサラダだな。お茶は大したものはないがそれでいいか?」


「ええ、それで構いませんよ」


「なら待ってろ、すぐに持ってくる。……俺もまだ何も食ってないんだ、一緒に食ってもいいか?」


「ええ、もちろん」


「ありがとな。すぐ持ってくる」


僕達はおじさんと一緒にパンとサラダを食べると、さっそく煙草屋に案内してもらう事になった。


「そう言えばまだ名乗ってなかったな。俺はアルジルだ。あと数日だろうがよろしくな」


酒場のおじさんはアルジルというらしい。


「ええ、よろしく。僕はサフィール、妹は……自分で名乗るかい?」


「妹のエメロードです。よろしく」


「おう、よろしくな。煙草を吸ってるのは兄ちゃんだけか?」


「はい、兄さんだけです」


「そうか。だったらこれから案内する煙草屋はつまらないかもしれないな。なにせ喫煙関係の物しか扱ってないんだから」


「いえ、私は煙草を吸いませんが、嫌いな訳ではないので。そういった物を見ているのもなかなか楽しいですよ?」


「そうか、ならいいんだが……おい、兄ちゃんよ、お前妹大事にしろよ?いい妹じゃないか」


「ええ、言われなくても。……貴方にはあげないですからね?」


「おいおい、俺はそんなつもりはねぇよ。ただいい妹だから大事にしろっていっただけで他意は無い」


「そうですか。ならいいんですが」


「おう、もう着くぞ。あそこだ」


「ん、あぁ以外と近いんですね。もう少し離れているかと思いました」


「近いに越したことは無いだろ?一番近い所にしたんだ。……ん?いねぇじゃねえか煙草屋のおばぁ……おい、おばぁ!いねぇのか!」


煙草屋についたんだが、どうやら店の人がいないらしい。

奥にいるのかな?


「うるさいねぇ、まったく。いつもいつも来るたんび。そんな大声出さんても聞こえとるよ」


やっぱり。奥に居たらしい。

出てきたのは背を曲げたお婆さん。

背は曲がって居るけどハキハキしたお婆さんだ。


「俺が来る度いっつも店に出てないからだろうが。今日はこいつが葉巻が欲しいってんで連れて来たんだ。うちに泊まってる旅人だ」


「確かに初めて見る顔だねぇ。それでお前さん何が欲しいんだ。葉巻ったっていくつもあるんだ、どんなやつがいいんだい?」


「そうですね。少し見せて貰ってもいいですか?見てから決めたいので」


「かまわんよ。ついといで。……それであれはお前さんの妹かい?随分と面白そうに店ん中見てるがあれは吸っとらんのか?」


「ええ、妹です。吸っているのは僕だけですが……なあ、エメロード。お前も吸ってみるかい?」


「ん?兄さん、私は吸わないわ。でもこのパイプは欲しいかも。見て、綺麗だよ」


エメロードが指差しているパイプは細かい細工が施された白と黒、モノトーンの小ぶりなパイプだった。確かに綺麗なパイプだ。


「あぁそれかい。それはメシャムだよ。吸い口は黒い角でできとるがボウルは石できとる。……小さいパイプだ。この辺には使う者もおらんから売れんのよ。安くしておくから買ってやってくれんか」


「そうですね……なあ、エメロード。僕が葉巻を見ている間に考えておくといい。本当に欲しいなら買ってもいいからさ」


「うん。ありがとう。考えとくね」


「お婆さん、葉巻はどんな物がありますか?」


出来れば前の物と同じやつがあるといいなぁ。

でも違う物も気になるかもしれない。


「この辺はどうかいな?……前に吸っとったのと同じやつはあるかいな」


そう言ってお婆さんが出してきたのは小ぶりなものから中くらいの大きさの物だった。

そのなかには前に吸っていたのと同じやつも入っている。


「ええ、あります。この小さめのやつです」


「そうかい。何本買うのかいな」


「そうですね、五本ほど買おうかと思います。あとパイプ用の葉も欲しいのですが」


「パイプの葉はこの辺りかいね。どれがいい」


品揃えはなかなかいいみたいだ。

しかし何種類もあると悩んでしまうな。


「……では、これを一袋」


僕が選んだのは数種類の葉を混ぜた物だった。

軽過ぎず重くない物だ。


「葉巻五本とあわせて大銅貨七枚よ。さっきのパイプは銀貨一枚と大銅貨二枚だよ」


やっぱり結構するなぁ……

まぁ仕方ないか、嗜好品だからね。


「わかりました。……エメロード、パイプは買うかい?」


少し離れた所で棚に並んだ品物を見ているエメロードに問う。


「うん。買って欲しい」


「わかった。……では葉巻と煙草葉、パイプで銀貨一枚と大銅貨九枚ですね」


「ああ、まいどあり。また買っていって欲しいが旅人ではな。またこの町に来ることがあったら買っていっておくれ」


「ええ、また来た時は」


そう言って店を出る。

お婆さんは店の奥に戻っていく。

まだ煙草屋には人がこない時間なのだろう。

宿のおじさんは僕達より早くパイプ用の葉を買うと宿に戻っていった。

宿や酒場の準備があるのだろう。


「じゃあエメロード、町を散策しようか」


僕達は予定通り町を散策する事にする。

さっきの店で結構お金を使ってしまったからあまり買い物はできないけどね。


僕達は町見て廻って、日が傾き始めた頃に宿に戻ったのだった。

屋台でちょっとした食べ物を買って食べたり、雑貨屋を覗いたりして一日を過ごしたのだった。

宿に戻ってからは明日はどうしようかなんて話をしているうちに夜になり僕達はベッドに潜り込む。

なかなか充実した楽しい一日だったんじゃないかな。明日もこんな一日になるといいなぁなんて考えていると眠気がやって来る。

それに抗うこともせず、溶けるように眠るのだった。




















2話目は兄が葉巻やらなにやらを買うだけという……

3話目は町の散策が書けるといいなぁ。


3話目の投稿はいつになるかわかりません。

なるべく早く投稿しようと思いますが。


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