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百合短編  作者: 美幸
むすんで、つないで
18/20

5

 私はお母さんと車で公園へ向かった。学校から一キロも離れていないから、自転車で行けない距離ではないけれど、売り物があるため車を選択する羽目になった。あーやの家は公園の近くだから、歩いてくるらしい。

 会場は開始の二時間前から、多くの人が集まっている。私はお母さんと設営の作業をしていたら、時間はあっという間に過ぎてしまって九時半を回った。借りた長机に並べられたミサンガを見て、お母さんは言った。

「すごい量ねぇ。いつの間に、こんなに作ったのかしら」

 ざっと見て三百はあるだろう。屋上で編み続けるうち、いつしか数えるのはやめていた。売値は大体、二百円から五百円に設定してある。

「あ、いた。おはよ、さっちん!」

 あーやの声がしたので、そっちを見た。

「あ、」

 私の視線は釘付けになった。一瞬、誰だか分からなかったというのが正直な感想だった。

「あーや、眼鏡してないじゃん。髪の毛も下ろしてるし」

「うん、どっか行くときはいつもこんな感じなんだ。変かな?」

 全然変じゃない。むしろ、やばい。これはとにかくやばいぞ……。私ん()のブースに表れたあーやは、恐ろしく綺麗だった。青のブラウスに花柄の黒いスカート、つやつやの黒髪。飾り気のなさが返ってあーやの顔や雰囲気によく合っていて、綺麗さが倍増している。同じ年の子を『かわいい』ではなく『綺麗』だと思ったのは初めてだった。びっくりさせてやろうと気合い入れてきたけれど、私は呆気なく返り討ちにされてしまった。

「あーや最高……。やっぱ清楚ってのは、こんなのを言うんだよねぇ……」

「そんなにじろじろ見ないでよ、恥ずかしいじゃない。それにさっちんもその服、すっごくかわいいよ。元が大人っぽいから、そういう格好してると際立つっていうか」

 あーやは私を見ながら、傍に寄ってきた。

「ってうわっ! よく見ると、すごいミサンガの量。これもしかして、全部さっちんが編んだの?」

「うん」

「うっわぁー……」

 あーやが長机の上を、ざっと見渡した。あーやに気付いたお母さんが、

「あら、もしかしてこの子が、祥子の言ってた綾乃ちゃん?」

「はい、羽柴綾乃です。今日はよろしくお願いします」

「嘘ぉ、すっごく真面目そうな子じゃない。本当にこんな子が、祥子の友達なの?」

 私は軽く、お母さんに肘鉄した。

 それから間もなくして、開催時間となった。最初はあーやと一緒に売って、途中からはお母さんに任せることにし、二人で回ることにした。お母さんは掘り出し物を発掘するため、私達を置いて行ってしまった。

 客は老若男女様々で、うちの店は快調な売行きを見せた。女性に人気で、誰かは常に机の前にいて、特にミサンガを時間をかけて選んでいた。時には客にあーやが編んだのかと訊かれることもあったが、私が編んだと言うと非常に驚かれた。

「さっちんのミサンガ、大人気じゃん」

「売ってるあーやが綺麗だからだって」

「えー、さっちんがかわいいからだよ」

「いや、絶対あーやのおかげだって。私ってほら、若い子じゃなかったら近づきにくいイメージあるじゃん?」

「うーん、それじゃあ……」

 あーやは私に手を伸ばしてきた。何をするのかと思ったら、いきなりベストのフードをかぶせてきた。

「さっちんかわいい! その羊さんで売ればいいじゃない!」

「これで?」

 フードについた耳を軽く引っ張った。確かに、これだと少しはとっつきやすくなるかもしれない。小さい子とかにウケそうだし。それからお母さんが帰ってくるまで、私はあーやと店番をしていた。


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