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百合短編  作者: 美幸
むすんで、つないで
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3

 私はよく学校をサボっていたけど、あーやに会うため、積極的に学校へ行くことにした。授業を受けるかどうかはまた別である。私はたまに授業に出るが、目当てのあーやと教室で話すつもりはない。私といると、あーやに悪いイメージがついてしまう。迷惑はかけたくないから、話せるのはお昼の屋上でだけだ。昨日あーやと仲良くなった後、私はメールで、またお昼の約束をとりつけた。

 首を長くして、一人屋上であーやとふたりっきりになれる昼休みを待った。今日も私は授業には出ず、屋上でフェンスに向かってミサンガを編んでいた。いつしか熱中して、五本目に突入しかけると、後ろから、

「さーっちん」

 と声がしたと思ったら、腰に抱きつかれた。結った黒髪が、私の肩から胸にかけて垂れる。艶のある綺麗な黒髪だった。私はわっと驚いて手を止めた。

「会いたかったぁ。もう、何で教室こないの。ほとんどここでしか、さっちんに会えないじゃない」

 と、あーやは文句を言ってきた。口ぶりらして、もしかして、こうして会えるときを待ち望んでいたのだろうか。自意識過剰かもしれないが、もしそうだとしたら嬉しいことだ。私は編みかけのミサンガをそのままに、フェンスを背にして、あーやと並んで座った。

「私、教室嫌いなの」

 言いながら、私は学校指定の鞄からパンを取り出した。

「ちゃんと出ないと進級できないよ。一年生のときも、出席日数ぎりぎりだったんだよね」

 私はもっともらしく首を振り、「大丈夫」と答えた。

「朝のホームルームで出席とってるから」

「おぉー、賢いね」

 あーやは注意することなく言った。でしょー、と私は笑いながら言う。

「でもさっちん、いつもミサンガ編んでるね」

「これ以外することないから」

「ミサンガ職人め」

「これで稼げたらいいんだけどね」

 ねー、とあーやが声をそろえる。

「さっちん、昨日は編み方教えてくれてありがとね。それから、これも」

 あーやは右手につけた、ピンクと黒の、ハート柄のミサンガを指した。私はあーやにもらったもののお返しに、昨日一緒に編んでたやつをあげたのだ。

「教室にもミサンガ編む子いるんだけどさ。こんなハート柄の編み方、見たことないって言ってたよ。手作りなんだって、皆に自慢しちゃった」

「結構難しいからね、それ。あーやこそ、ミサンガありがと。でも初めて作ったんでしょ? 私なんかが、もらってよかったの?」

「うん。さっちんのために作ったんだもん。ごめんね、さっちんみたいに上手くなくて」

「そんなことないし。これはこれで、ユニークでいい感じ」

 私は所々整っていない斜め線をなぞってみせると、あーやは嬉しそうに笑った。

「よかった。ちょっと失敗しちゃったから、さっちんは気に入らないかもって不安だったんだ。それにしても結構面白いね、ミサンガ編むのって」

「また編む?」

 と私が訊くと、あーやは眼を輝かせた。

「うん、やろう! ご飯食べ終わったらすぐに。今度は違う色で、違う編み方で」

「すっかり気に入ったみたいじゃん。ねえ、よかったらさ……今度一緒に、フリマ行かない? 次の日曜日の朝十時からなんだけど、私とお母さん、そこで出店すんの」

「ほんと? どこで?」

「JR近くの公園」

「行きたい! 何出すの? ミサンガ?」

「それもあるし、着なくなった服とか、お母さんのブランド物とかも売るよ。店の場所とかは、携帯の画像で送るから」

「へぇ、楽しみ! じゃあ、またメールしてね!」

 私も、今から日曜日が待ち遠しくなってきた。高校に入って以来、初めてクラスメイトとどこかへ出かける。私は当日何を着ていくか、うきうきしながら考えていた。


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