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百合短編  作者: 美幸
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13/20

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 ――雨が上がった。

 雲の隙間から、木漏れ日のような光が差している。



「ほんとに車出さなくていいの? あたしの親、構わないって言ってるよ?」

「いえ、結構ッス。いつも部活で走ってる距離に比べたら短いもんなんで」

 にっと笑う。

 今はあたしん()の前。涼子はこれから学校に戻るらしい。

 あたしは松葉杖をついて見送る。この天気ならまだ部活やってる感じだから、途中参加する気みたい。

「ああ、とりあえず釘さしときますけど――先輩が卒業して県外に行っちゃって、また無茶していたら絶好ッスからね?」

「わかってるわかってる。何であんたはこう口うるさいのかなあ――」

「先輩はうそつきッスからね」

 あはは、耳が痛いね……。

「今度はちゃんと守るから」

「本当ッスか? 嘘だったら先輩が自分の胸で泣いていたこと、部員のみんなの言いふらしますよ?」

「それはやめてーっ!!」

「ま……言いませんけど。自分だけが知ってる、かわいいかわいい先輩の秘密ッスから」

「ううーっ……」

 意地悪く言う涼子。弱みを握られてしまった。

「――もう行きますね。明日また球場で会いましょう」

「うん、今日はありがとね。明日大会行ったときみんなに謝るから、試合がんばって」

 了解ッス! と力強い返事が返ってきた。

「もしかして先輩がいなくても、案外優勝できちゃったりして」

「そんな甘くないって。でも、優勝する気でいきなよ? やるからには、やっぱ勝つ気でいかなくちゃ」

「言われなくとも、自分はいつでも全力ッスよ」

「ふふっ、違いないね」

 また、ふたりで笑い合った。一区切りしたところで、涼子がランニングフォームで背を向けようとする。

「それじゃ、自分は部活に行ってくるんで」

「待って」

 驚くほど自然に声が出た。

「何スか?」

「伝えたいことがあるの」

 伝えたいこと? と首を(かし)げる涼子。

「聞いて、涼子」

 今からあたしは、涼子に大事なことを言う。

 あたしたちをつなぐ『あかし』が欲しいから。

 ついさっき気づいた、この気持ちを伝えたいから。


 今度はあたしの番だ。

 今ごろになってごめんね。

 でも、ちゃんと言うから。 

 まあ――あたしって口下手だし?

 だから、得意のストレートでいくよ。


 ありがとう

 もう、偽らないから

 もう、嘘はつかないから

 ありのままの、あたしを伝える

 涼子の笑顔も

 あったかさも

 口うるさいところも、ぜんぶ


 ――大好きだよ。



「あたし、涼子のことが好き。付き合ってください」





   fin


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