13
――雨が上がった。
雲の隙間から、木漏れ日のような光が差している。
「ほんとに車出さなくていいの? あたしの親、構わないって言ってるよ?」
「いえ、結構ッス。いつも部活で走ってる距離に比べたら短いもんなんで」
にっと笑う。
今はあたしん家の前。涼子はこれから学校に戻るらしい。
あたしは松葉杖をついて見送る。この天気ならまだ部活やってる感じだから、途中参加する気みたい。
「ああ、とりあえず釘さしときますけど――先輩が卒業して県外に行っちゃって、また無茶していたら絶好ッスからね?」
「わかってるわかってる。何であんたはこう口うるさいのかなあ――」
「先輩はうそつきッスからね」
あはは、耳が痛いね……。
「今度はちゃんと守るから」
「本当ッスか? 嘘だったら先輩が自分の胸で泣いていたこと、部員のみんなの言いふらしますよ?」
「それはやめてーっ!!」
「ま……言いませんけど。自分だけが知ってる、かわいいかわいい先輩の秘密ッスから」
「ううーっ……」
意地悪く言う涼子。弱みを握られてしまった。
「――もう行きますね。明日また球場で会いましょう」
「うん、今日はありがとね。明日大会行ったときみんなに謝るから、試合がんばって」
了解ッス! と力強い返事が返ってきた。
「もしかして先輩がいなくても、案外優勝できちゃったりして」
「そんな甘くないって。でも、優勝する気でいきなよ? やるからには、やっぱ勝つ気でいかなくちゃ」
「言われなくとも、自分はいつでも全力ッスよ」
「ふふっ、違いないね」
また、ふたりで笑い合った。一区切りしたところで、涼子がランニングフォームで背を向けようとする。
「それじゃ、自分は部活に行ってくるんで」
「待って」
驚くほど自然に声が出た。
「何スか?」
「伝えたいことがあるの」
伝えたいこと? と首を傾げる涼子。
「聞いて、涼子」
今からあたしは、涼子に大事なことを言う。
あたしたちをつなぐ『あかし』が欲しいから。
ついさっき気づいた、この気持ちを伝えたいから。
今度はあたしの番だ。
今ごろになってごめんね。
でも、ちゃんと言うから。
まあ――あたしって口下手だし?
だから、得意のストレートでいくよ。
ありがとう
もう、偽らないから
もう、嘘はつかないから
ありのままの、あたしを伝える
涼子の笑顔も
あったかさも
口うるさいところも、ぜんぶ
――大好きだよ。
「あたし、涼子のことが好き。付き合ってください」
fin




