敏腕営業マンの錬金術?
【旦那、お困りですかい?】
その時、店の奥から、ひとりの男が僕たちに近づいてきた。こぎれいな身なりをしていて、隙がない。旅人なのかかそれとも王都あたりの商人で、この町に来ているのか、何にしてもこの田舎町には似つかわしくないギラギラとした目つきをしていた。
【良けりゃ、あっしがお出ししやすよ】
と、続ける目線の先には先輩が握っているライターが……えっ、それがお目当てなの?
【ふっ、あんたもこれが目当てか。安くはないぞ】
一応、先輩の名誉のためにライターとか言ったけど、実はアウトドアグッズの販促品であるそのチ○ッカマンを握り直して、先輩はそう言ってニヤリと笑った。そうやって見てみると、あの形はマジックロッドみたいに見えないこともないし、『キャンプのお供に……ファイアメイト』のロゴは、日本語なんて知らない彼らには何かの詠唱呪文を刻んでいるようにしか見えないかも。けど、安くはないって……元々タダでしょうが! 先輩、どんだけふっかける気なんだろ。
【数は用意できないでしょうかね。そしたらそれ相応の物はこちらも用意させてもらいやす】
【わかった、じゃぁ5つ6つ用意しよう。ただ、貴重品だからな、しかるべき所に隠してある】
車の中に問題のマジックロッドもどきは100個以上あるって言うのに、先輩はそう言って、一人先に店を出た。僕に日本語で、
「つけられないように、お前はここにいてあいつを見張ってろ」
と言い残して。




