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道の先には……  作者: 神山 備
経験値ゼロ
75/80

結婚式直前

 幸太郎さんたちの結婚式の前々日の金曜日、私は18年間勤めた会社を後にした。ちょうどミュートスの仕事にもキリが付き、納品の時には一緒にお嫁に行くような気分になって、ちょっとほろっとしてしまったりもしたけれど。

 敢えて送別会は固辞した。どうせ、近い内に結婚式に来てもらうのだし。でも、男の人たちは宴会が多ければ多いほど良いのかしら……

「じゃぁ、結婚式の日取りが決まったらまた連絡します」

と言って頭を下げた私に、

「ん? 結婚式?? それはしゅうま……痛てっ、智、何しやがる!」

社長がそう答えると、それを聞いていた智くんが慌てて社長の向こうずねを蹴った。

「社長! それってこの間来た息子さんのじゃないっすか。なにボケてんですか」

智くんにそう言われて、社長は頭を掻きながら、

「ああ、そうだったな。そうそう」

と智くんに歯切れ悪く謝る。

「そうですよ。とにかくそれが終わらないと身動きがとれなくて。私の結婚式にみんなを呼ばないなんてことしませんよ」

そうよ、先週末は薫さんのドレスの最終調整に同行してちゃっかりドレスも品定めしてきたし、一応私だって昔なら大年増とは言え、初婚なんですからね。すると、

「そうですよ。月島さんの旦那さんになる人ってあの有名な作家なんすよね。じゃぁ、小出はるかとか結婚式にくるんでしょ。そりゃ絶対に呼んでもらわなきゃ」

と、相づちをうちながら、智くんは『コーラルブルー』に出演していた若手女優の名前を出す。サインあわよくばデートとかはしゃいでいる智くんに、社長が、

「バーカ、縦しんば来たってスタッフにガードされておまえなんぞ近づけるか」

と、さっき蹴った智くんを言葉で蹴り返して、事務所は大爆笑に包まれた。

 そんなみんなのおかげで、私は泣かずに笑って仕事場を離れることができた。

  

 そして、翌日は朝から薫さんとエステ。フェイシャルパックから首もとの産毛まで剃って、全身をマッサージ。元からそんなに黒くはないんだけど、更に3割増し美白の私ができあがった。まぁ、黒留め袖だからお嫁さんより目立つことはないだろうけど、なんだかなぁ。確かに、仕事の疲れはずいぶん取れたんだけど。

 さらに帰りがけ、薫さんは私に、

「あ、サーラさん、明日は9時集合ね。宮本君が迎えに行くから。それまでに、武叔父様も用意させといて」

と当然のように言う。私の呼び方はこの2週間の間に、美久さん以外はなし崩しにサーラさんになっている。えっ、でもお式は一時のはずでしょ、早すぎない? だけど、幸太郎さんのお母様は実働部隊だし、挨拶とかは私が早めに行って応対しなきゃならないのかもと思って、帰ってそのままマイケルさんに伝える。マイケルさんも、

「美久くんが迎えに来てくれるんだったら、それで良いんじゃない」

楽ができるねと、私たちは特になにも考えずに当日を迎えた。

 

 だけど、午前8時半、迎えに来た美久さんの車に乗ってホテルに向かうと、

「本日はおめでとうございます。では、ご主人様はこちらに、奥様はそちらにお願いいたします」

と、私とマイケルさんはいきなりホテルの従業員に引き離された。私担当? のホテルウーマンは、マイケルさんから私の黒留め袖を奪い、

「こちらでございます」

とすたすたと歩き出す。たどり着いた部屋にはなんと、きれいな毛筆の字で

『月島家』

の文字が書かれてあった。。しかも……

「本日はおめでとうございます、月島様。ああ、良かった。一月ほどですので、そうお変わりはないとは思っておりましたが」

と言って斜め45度の完璧なお辞儀したのはあの、一目で私のファンデーションのサイズまでピタリと当てた某老舗デパートの敏腕外商部員、和光さん!


 でも……和光さんがどーしてここにいるの??


幸太郎の性格を考えると……


皆さんはお解りですよね、これがどういうことだか。


解ってないのは更紗ちゃんだけ。うん? ミッシェルもかな。

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