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道の先には……  作者: 神山 備
経験値ゼロ
47/80

お名前は?

「あの……今更なんですが、あなたのお名前は……」

私がそう聞くと、

「あ、ああ、すいません。僕名前も言ってなかったんですね。それは警戒されても仕方ないな。

僕は……た、いえ、マイケル。そうマイケルです」

天使様改めマイケルさんは、真っ赤な顔になってそう答えた。警戒していたこと、気づかれてたか。けれど、名前のところで若干口ごもったのが気になる。それで、マイケルさんが私に、

「あなたの名前も教えてくれますか」

聞き返したとき、私の本名は更紗さらさなんだけど、

「私ですか。さらです」

と、答えた。実際、私の学生時代の友達なんかはさらちゃんって呼ばれているし、コレくらいなら偽名にはならないよね。それにしてもぴったりだな。マイケルって、大天使ミカエルの英語読みでしょ。

「さらさんか、かわいい名前だ。そのね、最近ではミシェルと呼ばれることも多いんだ。新しい義母ははがフランス語圏で育ったんで、マイケルとは呼んでくれなくて。義妹や義弟はそれに倣うしね。だから、マイケルでもミシェルでもどっちでも良いですよ」

と、マイケルさんは私が訝っているのを察したのか、そう付け加えた。それにしても新しい義母ははって……口調は全然寂しそうじゃないんだけど、そんなハードな話を見ず知らの私が聞いちゃっていいのかな。それで、

「あなたはどちらで呼ばれたいですか」

私は少し考えてそう聞いた。

「うーん、どっちでも良いけど。さらちゃんが呼びやすい方で」

するとマイケルさんはそう即答する。本当のお母様との思い出とかあるかなとか思ったんだけど、その口振りを聞くと、ホントにどうでもいいみたいだ。

 にしても、いきなりさらちゃんって呼ぶ? 確かに、5つ? 7つかな、くらいは年上みたいだけど。


 そうこうしている内に車は近くの救急病院に着いた。休みの今日は救急外来から入る。でも、せっかくサンダルまで買ったというのに、私は相変わらずお姫様だっこのままだ。

「サンダルも履いているんだし、もう下ります」

と言っても、ダメだの一点張り。案の定、待合いの椅子に着くまでに、ナースの人から、

「事故ですか? 歩けないんでしたら車いすをお持ちしますよ」

と言われてしまう。それで、

「い、いえちょっと捻っただけですから。歩けます」

そう返して、再度着地しようとするけど、マイケルさんはそれをがっちりとホールドして、

「何度言ったら解るんですか、捻挫の方が実は骨折より質が悪いんですよ。すいません、僕は一向構わないんですが、この人が歩きたがるので、お願いします」

と、勝手にナースさんにお願いしてしまって、ナースさんはクスっと笑って車いすを取りに行ってしまった。

 そして、すぐにやってきた車いすに乗せられる。何だか格好だけは大けがしてるみたいで恥ずかしい。


 中に入ると、冷却シートをおでこに張り付けてぐったりしている小さい子とか、いかにも辛そうなお年寄りとかがいて、なんか場違いな感じがする。マイケルさんは待合いの椅子の横に車いすを停めて、

「さらちゃん、保険証持ってる? あったら、受付に出してくるよ」

と言ったので、持っていたバッグをさぐった。今日は着物だから財布ぐらいしか持っていないけど、保険証は、カード化されてから財布の中に入っている。車に乗れない私には、これが身分証明書のメインだし、どうせ今日は休日料金だけど、それでも保険証を出さないよりはマシ。私は保険証を取り出して、マイケルさんに手渡した。でも、受け取った彼は、ちらっとそれを眺めると、

「へぇ、月島……あれ、コレでさらって読むの?」

と聞く。

 あ、あああっ! しまったぁ!! 


……保険証って、ばっちり本名が書いてあるんだった……


 私のついた軽ーい嘘は、こうして一時間も経たない内にバレてしまったのだった。







実年齢50歳のタケちゃんもとい、マイケル君ですが、ムダにバイタリティーのある彼は、更紗ちゃんに40代前半に見られているようです。

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