とりかえばや物語
私はまず、彼らの乗っている自動車のレプリカを作りました。内部などは全く分からないので適当ですが、結果壊してしまうので、何ら問題はないと思いました。そこに彼らが持っていた火の属性をもつ魔道具(美久はそれをチャ○カマンと呼んでいましたが)を少量もらい受け、その上で、彼らを自動車ごとグランディールへと送りました。
場所の特定まではする余裕はなかったのですが、結果街道筋近くにたどり着いたようです。ただ、時間を止めた反動なのか、私たちが襲われてから約一月も経ってはいましたが。
一方、私はそのままトレントの森に戻って殿下をニホンにお連れし、レプリカを障壁にぶち当てた後、魔道具に炎系の魔法をぶち当て、大破させました。
そして私は、殿下とともにその大破した張りぼての中に倒れ込み、時を戻したのです。私自身も無傷ではありませんでしたし、高度な魔法を連発した衰弱も相まって、ほっとした途端私も一旦は意識を手放してしまいました。
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【しっかしまぁ、よくそんなんで……お前が王子は無事だって言うからには、ちゃんと王子は俺として病院で治療受けてんだろ? 日本の警察はいったい何やってんだって感じだな】
【ええ、しかし幾分衝突と言うには不可解な傷が多々あるにしても、私たちはあなた方の身分証明書を持参していますし、生存している間は治癒師の領分ですから、警備隊はそこまで関われないようですし】
【まぁな。医者が必死こいて助けようとしてる時に、警察が茶々入れても医者が怒鳴ってそれで終わりだろうけどよ。それでもなんぼなんでも、王子目が覚めたら全部ちょんばれだろうが】
私の説明に、幸太郎氏は半ば呆れながらそう返しました。
【ええ、ですから殿下にはこちらにお連れする目途が経つまで眠りの魔法をかけてあります】
【は、至れり尽くせりなことで。ドッペルゲンガーなのに、宮本とはえらい違いだな】
幸太郎氏は、手を肩の所くらいまで挙げてつぶやくようにそう言いました。