迷子 2
先輩はとっさにその辺にあった木の棒を持って構える。某ド〇ク〇の初期アイテム『ひのきのぼう』っていうのがあるけど、さしずめこれは『りんごのぼう』ってところだろうか。何にしても再弱アイテムには違いない。確か剣道2段の先輩は格好に反して意外と素早いゲル状を、それでバンバンふっ叩いている。何をしても様になる人だと思う。
そのとき、先輩がぶっ叩いているのとは別のゲル状が僕の足にまとわりついてきた。ひえ~っ、キモチワルイ!! 僕は全身総毛立ちながら、そのゲル状に自分の食べていたリンゴをぶつけた。そして自分の手でもげる範囲のリンゴを次々ともぎとって、ガンガンゲル状に投げつける。
「宮本、もういい。これ以上やったら、リンゴがもったいない」
しばらくして、そう言いながら先輩が僕の腕を抑えた。
「僕がどうなってもいいっていうんですか」
「どうなるって、どうもならんだろ。もうこいつとっくにノビてるし」
だって、こんなアンデットっぽい奴、またすぐ復活して動き出しそうな気がするんだもの。そう言おうとした僕に先輩は、
「でも、お前思ったよりもなかなかやるな。さしずめ技名は『リンゴ乱舞』ってとこか。ガキ大将に泣きながらめちゃくちゃな攻撃加えるチビガキみたいで、なかなか良かったぞ」
と言った。一応褒められているみたいだけど、そんな褒め方ってなんかウレシクナイ。
とにかく、投げたリンゴを回収して(だって、そのまま放置したって腐っていくだけだし、それなら洗って食べた方が……)車に乗せると、先輩はそれを見て鼻で笑った。 その時、ちょっと離れたところから
「Help help me!」
と、ちょっと訛った英語で助けを呼ぶ声が聞こえた。僕はその声を聞くと、自分のスキルなんてものは一切無視して、そこに走り出していた。
「おいこら、宮本! 待てよ!!」
それを見た先輩がやれやれと首を振りながら、今度はトランクを開けて車から修理用のスパナを取り出し、僕の後を追いかけた。