ストレスが爆発して、第三王子を吹っ飛ばしました。
人のストレスというのは限界があるらしい。
私のストレスが極限まで達してついに爆発したのは、王宮の庭で婚約者の第三王子との定期お茶会の最中だった。
文字通り、爆発したのだ。
魔力暴走を起こし、庭が更地になるくらい吹っ飛んだ。
爆風を巻き上げ、私は混乱状態のまま、本能に従って魔力を体から放っていたらしい。
全然覚えていない。
ついでに第三王子殿下も王宮の屋根まで吹っ飛んでいった、それは見た。
心底スカッとしたのを覚えている。
さて、エヴァーソン公爵の次女である私、シャリル・エヴァーソンへの今度について、今から王座の前で聞くこととなる。
当主であるお父様も一緒だ。
私の治療が終えるまで、直接沙汰を下されなかったのは恩情かしらね。
「さて、此度のことだが、まずシャリルと第三王子との婚約は解消となる」
陛下の前だというのに、ガッツポーズしそうになった。
令嬢としては不名誉なことだろうが、私からすれば天にも昇る気持ちだ。
これまで婚約者という名の奴隷からの解放宣言だ、こんなに嬉しいことはない。
家に帰ったら大きいケーキを焼いてもらうように頼もう。
もう、本当に酷かった。
第三王子なんて、第一王子殿下のスペアのスペアに過ぎないというのに、能力もなければ血筋に見合う努力もない。
側近は気に入らないものは全員クビにしてしまったからまともな側近は残っておらず、私の同士は皆いなくなってしまった。
まず、偉そうね。
これはもう性根に染み付いちゃっていたから無理ね。
あと、暴言の嵐。
到底女性相手に言うのは憚られるものばかり聞かされてきた。
ブスだと気色悪いだのは序の口で、将来股を開いて子を産むのしか役に立たない女め、とよく言われたものだわ。
体を柔らかくしておけよとか、せいぜい俺を楽しませられるように努力しておけだの、まあ気持ち悪いことを並べまくっていたわ。
そんなことで尊厳を傷つけられると思っているあたりが馬鹿なのよ。
それから、浮気…これはどうでもいいわ。
いつも違う女性に手を出していて、どこに子どもがいておかしくないと思うわ。
どうするのかしらね、子どもが子どもをなんて。
暴力、といっても私は直接されていない。
でも街中で気に入らない相手がいたら、側近に暴行されたり、自分も殴っていたとの報告は受けている。
悪行は言い出したらキリがないけど、一番信じられないのは、数少ない仕事を全部私に押し付けていたことね!
本当に信じられない…!!
なんで私が代わりに仕事をしなくちゃいけなかったのよ!!!
「とにかくご苦労だった」
「いえ、お使いは果たされたでしょうか?」
「ああ、あやつはもうダメだ。廃嫡することが決定したよ」
「左様ですか」
「今はシャリルに飛ばされて全身骨折しているからな、治り次第追い出す。あやつの監視役および魔力の証明しかと受け取った」
「では…!」
私の声に、陛下は鷹揚に頷いた。
「国家魔法士の試験合格とする。これからは魔法士として、我が国を支えてくれ」
「やったーーー!!!やりましたわ、お父様!これでもう文句は言わせませんわよっ!!」
今日は、大きいケーキの三段重ねにしてもらいましょう!
「御前だ…!やめなさい!」
「ははっ、エヴァーソン、お前の賭けの負けだったな」
「…此度は娘の試験を用意くださりありがとうございました」
お父様は渋い顔をしながら、お辞儀をした。
私は、魔法士になりたかった。
でも魔力をたくさん秘めているだけで、魔法が使えなかった。
国家魔法士の診断により、魔力回路が詰まっているために魔法が使えないが、一度噴射したら国家魔法士になれるほどの魔法が使えるようになるだろうと言われた。
そのために手っ取り早いのが、過度なストレスを与えることだった。
それで、父の姉である伯母の王妃陛下に相談という名の直談判をしたのだ。
「国家魔法士はいくらいても足りないですよね!私の魔力が使えるようになるストレスのかかる仕事はないですか!?」と。
そしたら、陛下直々に第三王子の婚約者という名のお守り役を承ったのだ。
お守りと言っても、見ているだけ。
見ていたことを全部報告するだけで、私が直接何かをしなくていい、と。
このまま王族にしておくのも悩ましく、一代限りの爵位を授けることすら危うかった第三王子の最後の試験のようなものだった。
その代わり、婚約期間中に魔力回路を使えるようになったら、国家魔法士にしてくれるという条件をつけてくれた。
国家魔法士になると貴族ではなくなって、国家のための人間になるために反対していたお父様を納得させるにも一石二鳥だったので、快く引き受けた。
まあ、第三王子のお守りがあんなに大変だとは思わなかったし、物理的に吹っ飛ばしてしまうとは思っていなかったけど…。
「シャリル、大変な役目を受けてくれてありがとうな」
そこには王ではなく、伯父の顔をした陛下がいて、私も満面の笑みでお辞儀をした。
「いえ!こちらこそ、機会をくださりありがとうございました!」
さ〜て、晴れて婚約解消と魔法士への未来が開けたわ!
その点だけは、あの第三王子に感謝しなくちゃね!
「王子殿下にお見舞いの品は贈った方がいいですか?」
「しなくてよい、図に乗る」
「かしこまりました!では、私は魔法士の宿舎に行く準備をしますので、これで失礼いたします!」
「こら、シャリル!まだ話は終わってないぞ!」
「よいよい、あの子はもう自由なのじゃから」
私は最後の貴族生活を終えるために、家と帰るとすぐに厨房に顔を出した。
「ねえ、今日は特別にケーキを焼いてほしいの!お祝いよ!」
了
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(追記)誤字報告ありがとうございました!修正いたしました!(2026.5.2)




