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第九話 病状悪化
ある日から、サツキは学校に来なくなった。最初の一日は、ただの風邪だと思った。二日目は、少し胸がざわついた。三日目になると、理は授業中も黒板の文字が頭に全然入らなかった。放課後、遠慮していた理はついにスマホを手に取った。サツキの番号を押す。 ワンコールも鳴らずに、無機質なアナウンスが流れた。
『・・・電源が入っていないか、電波の届かない場所にいるため・・・』
理はしばらく画面を見つめたまま動けなかった。胸の奥に、言葉にならない冷たいものが沈んでいく。だから固定電話にかけてみた。呼び出し音がやけに長く感じられた。
「・・・はい、後藤です」サツキの母親の声は、どこか張りつめていた。理は自分の名を名乗り、サツキの様子を母親に尋ねた。
短い沈黙があった。
「・・・ごめんなさいね。今、ちょっと・・・体調がよくなくて」
その“ちょっと”の中に、何か大きなものが隠れている気がした。
理はそれ以上、踏み込んでいいのか分からなかった。
「・・・そうですか。あの、また・・・」理は言葉が続かなかった。
通話が切れたあと、教室の窓から差し込む夕方の光が、妙に白く見えた。




