第十一話 理の最後
司法解剖の結果を手に法医解剖医がうす暗い部屋でサツキの母に、こう告げた。
「サツキさんの死因は、腹部の損傷による多量の内出血です。外からは分かりにくい状態でしたが、内部で急速に出血が進んでいました。死に至るまでの時間は短く、救急搬送時にはすでにとても危険な状態だったはずです」淡々とした説明が続く。「また、慢性硬膜下血腫も患っていたことが解剖で分かりましたが、こちらが直接の死因となったわけではありません。この病気で死亡するのにはまだ時間がかかったと思われます」医学的な事実だけが、部屋の空気を冷たくしていく。サツキの母は、言葉を失ったまま椅子に座り込んだ。その後、別室に移された母のもとへ、警察官が静かに現れて言った。
「事件性があるので、現在調査を進めています。詳細が分かり次第、改めてご説明を致します」
さらにその頃、理は別の病院で診察を受けていた。意識は朦朧とし、視界は揺れ続けている。担当医は、近くにいた警察官に向かって低い声で言った。「ほぼてんかんではありません。脳腫瘍の可能性が高い。この状態では、判断能力に影響があった可能性が高いと考えられます。私の経験からするとこれは乏突起膠腫の可能性が大いにあります。専門医でも誤診しやすいがんです。検査でも捉えられない場合が多いです。このがんはこの状態では最早手遅れかもしれません。家族を呼んでください」
担当医が家族を呼んでくれと言った日の午後、理は担当医と家族に見守られながら旅立ったのだった。




