第1話
その日の色彩は、いつもと違っていた。
やわらかな朝の日差しが、白いバラの紋章があしらわれたステンドグラスの窓を通り、白磁の床に差し込んでいる。
微かな暖かさに促され、ウサギ族の少女ローリエはピクリと耳を動かし、ゆっくりと目を覚ました。ベッドサイドに白い修道服を纏った女性が座っているのが見えた。軽い身じろぎに気付いた彼女とパチリと目が合う。
姉のルタだった。
真っ白い毛に長い耳、姉妹はよく似ていた。
ただ、姉の両目は透き通った赤色をしているのに対し、彼女を見つめるローリエの片方は同じく透き通った赤、もう片方は萌えるような鮮やかな緑色を湛えていた。
ルタはふっと目線を窓の外に逸らし、穏やかな声で言った。
「おはよう、ローリィ。よく眠れましたか?」
「どうしたのですお姉様…?まだ礼拝の時間には早いはずでは…」
「今日は正式なシスターになる日でしょう?皆の規範となるよう、最初に洗礼を行わねばなりません。ほら、おいでなさい。」
豪奢なベッドから手を取り起こされた後、ルタの手によってあれよあれよと言う間にローリエの身支度が整えられていった。
「お姉様!ワタクシは昨日18歳になったばかりですわ!身支度くらい自分でできますの!」
「ローリィ、オトナになったとはいっても、私にとってはまだまだ可愛い妹のままですよ。」
ローブの背中のボタンをかけながら鼻歌交じりにルタは言う。
「んもう、おトイレもまだですのに……!」
恥ずかしさと嬉しさとでパタパタと揺れてしまう耳を押さえながら彼女は姉に抗議していたが、結局嬉しさが勝ったようで、最後はおとなしくされるがままでいた。
身支度が終わり、真っ白のローブに身を包んだローリエはルタに手を引かれながら城の歩いた。
城の扉を守る衛兵に会釈しながら、街の中心にある教会の礼拝堂へと向かう。
(……お姉様が手を繋いでくれたのはいつぶりだろう)
嬉しさを噛み締めながら歩く彼女は、繋いだ手のピリピリとした違和感に気づくはずもなかった。




