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神の遣い  作者: Moa
13/28

13話


ーー吉田兼煕(かねひろ)ーー


 (あなや(まさか)、花の御所にて義満様が上座に向かいて、頭を垂れ(たてまつ)るとは)

「このたびの不調法、申すもおろかながら、ただただ恐懼(きょうく)()え、、」

「、の振る舞い、まこと心得(がた)し。余が九条と知りての所業か?」

御隠居様が声静かに言を発し給い、()び言を断つ。広き座敷に男四人、場しづまりぬ。義満様が唾を呑む。

「朝廷、二つに分かれ五十余年を経たり。此春(このはる)楠木(くすのき)千早(ちはや)城を落とし、大覚寺の勢衰えにけり。天下泰平のため、(それがし)、いかばかりの力にても御貸し(たま)うべく、ここに願い奉る次第なり」

()がための天下泰平ぞ?」

「、、持明院(じみょういん)が、た、」

「かっかっか」

言を淀ませる声を遮る笑い声に、思わず顔を上ぐれば、民と見分けがつかぬ格好の翁がこちらを見据える。慌てて顔を伏せた。

「義満よ、そなた持明院の了承も得ずして、両統迭立(りょうとうてつりつ)などと考えあらせぬことなるや?」

義満様と顔を見合わせる。

(話漏れたりや?あるいはすべてお見通しあらせらるか)

「三種の神器さえあらば、すべての事、相成(あいな)るべきものと存ず」

義満様が顔を上げて申されけり。

「おそろしきや?源氏のごとく、風に吹かるるを」

(海に沈みし剣の祟りと申され候や)

「争わずして事を収むる道、御教示(たまわ)りたく候」

「して、その(しろ)は?」

「父上!なりませぬ。この者、九条の名を借りて約を破らんとしておるのですぞ。そのようなる事を為さば、末代まで(そし)られん」

「老いたる身にてなす約など、死なば諸共か。そなた、良基(二条よしもと)と似ておるのぅ」

「そのような事は、露ほども考えておりませぬ。ただ、道を御示し賜らんことを願い奉るのみ」

「道とな。そなたの()く偽りの道は、行き止まりじゃ」

顔を伏せたる義満様、口元に力の入りぬるを見たり。座敷、また静寂(しじま)に包まれぬ。

「今宵は、ここにて宿らん。明日は吉野へ参らんとす」

「父上!屋敷へお戻りを。吉野へなど決して参らせ申さぬ!」

「忠基、壇ノ浦の(てつ)を踏むべからずぞ」

静かなる一言に、九条の当主様が押し黙りぬ。



ーー足利義満ーー


 「はぁーーーー」

居所(いどころ)にて()し転び、天井を(あお)ぐ。

「御隠居様が力を御貸し下さるのですな」

(かたわ)らに正座す兼煕が言う。

「とんでもなき者が、隠れおりたわ」

「藪をつつき給いしや?」

「蛇どころにあらず。大蛇(おろち)よ」

戯言(ざれごと)を発せしところ、心いささか軽くなりぬ。

「亡き二条様は御隠居様を何とお()せなされておりしや?」

「あやつより九条の話など聞き及びたることなし」

(良基め、恐れておったのだな。草葉の陰より、常に覗きおりたのだ)

「公家を侮ったわ」

「まさか御所に乗り入れなさるとは。されど、輿に詰めるはやや手荒に過ぎませぬか?」

「貞行にはそう申し付けたが、されど、、、やられたわ」

あまりの滑稽(こっけい)に、思わず笑いこみ上ぐる。

「いかなることにて候か?」

「九条の当主よ。勝手に振る舞う親に一物あらん。怒りたるふりをしつつ、二人にて我を笑いおりしのだ」

「御隠居様のあの御姿も、そのためにてあらんと?」

「偽りの道か。五摂家は格別と申しておるのであろう」

「信を置き奉りて、よろしきや?」

「あやつの申す通り、他に道はあらず。当主ですら約を破らんことを見抜きおりし。兼煕よ、しかと支度いたせ。雪の降らぬうちに、大覚寺を京へ移すぞ」

「御意に候」

(天下泰平より女を追うとは、いかにも公家らしきことよ。いや、我が頭を下ぐる時をこそ、待ちおりけれ)

八岐大蛇(ヤマタノオロチ)、九つ目の頭()でたり。九つ目の尾にありし剣、海に沈みし剣の代わりに納められたり」

「九条家にかかる秘め事が!」

「ふっ、戯言よ。そのような作り事があれば、さぞ面白かろう?」

「九条に祟られかねませぬ」

二人ながらに、しばし打ち笑いける。

お読みいただきありがとうございましす。

主人公側の話が盛り上がらないため、考え直します。

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