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68.つまらないはずの日々(2)


 フランクウッドは仕事がひと段落付き、近くの喫茶店らしき場所で紅茶を嗜んでいた。

 そして、そこに近づく一人の影。


「あ、フランクウッドさん! こんにちは……ご一緒しても?」


 リリステナだ。


 フランクウッドは彼女の方をちらりと見た後、自身の対面の席を示して言う。


「好きにすればいい」

「それでは遠慮なく」


 うきうきで席を引き、そこに腰かけるリリステナ。


「こんな所で、フランクウッドさんをお見かけするとは思いませんでしたよ」

「さてね」

「だって、いつもはお酒を飲んで、人生絶望みたいな雰囲気出してるじゃないですか?」

「人生絶望か……まあ、あながち間違いでもなかったかもな」


 フランクウッドは少し笑う。

 その様子を見て、リリステナの口角もつられて上がる。


 それに気づいたのか、フランクウッドは「なんだ?」そうリリステナへと投げかける。


「いえ、何でも……!」

「…………それより、何か頼んだらどうだ?」

「珍しい! いつもはダメだって言うのに!?」

「……あれは……君が無理して酒を飲もうとするからだろ?」

「……! そうでした! すみませーん!」


 彼女は何かに気づいたように柔らかにほほ笑んだ後、店員へと注文をするのだった。



 ◇



「ねえ、フランクウッドは将来なにしたい?」

「いきなりなんだ?」

「ふと、思ったの。この終わりの見えない戦争が終わった後、私は何してるんだろうなって」


 リリステナはいつにもなく、真面目に言葉を口にする。


「……やりたいことか……特にないな」


 フランクウッドはふと考えてみる。今の役目を取り上げられた後に残る自身の姿を。

 しかし、全くと言っていいほど想像できないのだ。


「……ふーん?」


 リリステナは少し考えたように言う。


「私は、何でもいいから自分の店を開きたい。それも自分の名前を入れてみたい!」

「……は?」


 その反応に、リリステナは隣を歩くフランクウッドを力強く小突いた。


「おい、やめろ……」

「その反応は酷くない?」

「……そうだな、悪かった」


 リリステナは「よし」と言うと、話を続けた。


「でさ、もしフランクウッドがやりたいことがないんだったらさ、私のこと手伝ってよ?」

「……まあ、それは構わないが……」


 フランクウッドはふと、疑問を口にする。


「なんで自分の名前を店の名前に入れてみたいんだ?」

「なんか、自分が生きた証みたいな……自分を大切にできそうみたいな、そんな感じがするでしょ?」

「……生きた証か」

「……それにさ……」


 リリステナは少し俯きながら自嘲気味に笑う。


「それに?」

「やっぱり、なんでもない」

「――……」


 フランクウッドは気づく。いつの間にか、彼女の考えていることが読めなくなっていたことに。



 ◇



「う~ん? 人の気持ちがわかりすぎる?」

「ああ」

「今もそうなの?」


 フランクウッドの自室で、二人は話をする。

 話と言うよりはフランクウッドの悩みのようなものではあるのだが、それに対してリリステナは嫌な顔一つしない。


 ただ穏やかに話すのだ。


「いや……君に関しては分からない……後は……友人も最近は」

「ふーん? フランクウッドはそれが嫌なの?」

「……分からない。俺はこの特技を買われたわけで、この特技のせいで嫌な思いもしてきたが、いざ分からないとなると、それはそれで不安でしょうがない……」

「じゃあ、私は今何を考えているでしょうか?」


 リリステナは頬杖をついて、首を傾げながら挑発的に笑う。


「……可愛いとかだろ?」

「わかんじゃん」

「まあ……」

「私が思うに、フランクウッドは人との間に一線を引いてるんだと思うよ? どっちかと言うと怖いのかな?」


 リリステナは指をくるくると回しながら、宙を見る。

 その指先をフランクウッドは自然と追って、何もない事に気が付くとリリステナの方へと視線を戻した。

 そして、そこで視線が合う。


「ふふ。その人がどういった人間なのかを深く知らないと関係を持ちたくない。でも、深く知ってもまだ壁を作っちゃう。そんな感じなんじゃないかな?」

「壁……」

「猜疑心が強いとか? フランクウッドはさ、内面を重視するよね。外と内の乖離がないかみたいな……不安症みたいな?」


 リリステナは深く考えてから、悩んだそぶりを見せる。


「うーん、私はさ。ぶっちゃけ私は私、他人は他人。気になったら当たって行って、跳ねられても更に当りに行くみたいな感じだから、あまり分からないんだけどさ……」


 正直、その時リリステナに言われた言葉をすぐには実行できなかったし、難しいとも思っていた。

 でも何故か――その時の表情と仕草をフランクウッドは今でも鮮明に覚えている。


「フランクウッドが、少しでも心を許してもいいかもって思えた人の前では、あまり考えなくてもいいんだよ?」

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