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67.違和感


 ホーンロッツはホームバイツが死んだ場所、アベリアックの診療所があった場所を訪れていた。


 目的は二つ。


 ここに飛ばされた一般人たちの護送と、ここ周辺の調査だ。


「……ここか」


 列車から降りたホーンロッツは、何とも言えない表情で街の大広場へと向かう。

 そこにはあの夜、魔女に連れ去られてしまった人々が集められていた。


 ホーンロッツはその人々の支援を行っている狩人たちの中から、自身の部下を見つけ声をかける。


「コンスタンス、すまんな……お前からしたら、数日前に仲間を失った場所やって言うのに」


 ホーンロッツとしては、コンスタンスには休養を取らせたかったところだ。

 仮に動かすとしても、この場所には配置したくなかった。


 しかし、それらの決定権はホーンロッツにはない。

 あくまでもディガードが決める事だった。


「いえ、お気になさらず。それに、それを言うのであればホーンロッツさんの方こそ……」

「いや、いい。それは気にすんな……」

「そうですか……それはそうと、報告です」


 ホーンロッツは一つ頷き、コンスタンスの話へと耳を傾ける。


「どうやら、ここにいる人間は皆、魔女に襲われそうになった際に別の魔女に掴まれ、気づいた頃にはここにいたと……」


 ホーンロッツは思考を巡らせる。


「……続けろ」

「おそらくですが、その魔女の死体が回収されていました」

「何処で?」

「王都近辺の街だそうです」


 ホーンロッツが現在気になっていることとは、因果関係が見えてこない。

 しかしながら――「魔女が人を助けたかもしれない」こういった小さな違和感を見逃してはならない。そう直感が叫ぶのだ。


「例の件はどうだった?」

「……場所を変えましょう。ここは人が多すぎる」


 コンスタンスは周囲の狩人へと視線を向ける。

 それを見て、納得したようにホーンロッツは言った。


「せやったら、この街を一望できる場所とか知らへんか?」

「ええ、案内しましょう」


 コンスタンスとホーンロッツは歩きながら、話を重ねる。


「ロイシアン……奴についてどう思う?」


 先の魔女の進行。その際に協会の警護に当たっていた上級狩人の一人、ロイシアン。

 素性も、魔術も、他者に公開しておらず、任務等にもほとんど参加しない。

 それなのに、上級狩人へと上り詰めた人間だ。


 それだけでもあまりいい顔をしないものが多い中、奴は今回、同じく上級狩人のディガードがいる協会を守っていたのだ。


 協会の警護としてはディガードが居れば事足りる。

 仮に足りなかったとしても、素性の知れない人間よりも、もっと信用のおける人間を配置すべきだっただろう。


「少なくとも、警護には当たっていなかったように思えます」

「どういうことや?」

「俺はあの日、協会への連絡係を務めていました。ですが、協会を往復している際に、奴の姿を確認できませんでした」

「バックアップとしての技能……は使う必要もないか……」

「ええ……」


 ホーンロッツは嫌そうな顔をしながら、少し前を歩くコンスタンスへと更に話を振る。


「俺は元凶の魔女と相対する時に仕方なく魔術を行使した」

「その様ですね」

「正直あの雷を防ぐ手段がなかったから、クオーツもあの雷に巻き込まれるそう思ってた。せやけど、あいつが助けにきたんや」

「ええ」


 それは本来であれば、喜び、感謝すべきことだ。


 しかし、ホーンロッツは考えてしまうのだ。

 何故、警護に当たってたはずの人間をすぐにあの場所へと直行させる決断ができたのか。

 何故、最初からあの場でのバックアップとして組まなかったのか。


 ディガードは何故、あんな配置を取ったのか。


「配置で言えばアズレアの件もそうや。あいつこそ魔女に当てるべきやったはずや。俺の魔術は制御がきかん。それはディガードも知ってたはずや……」

「それなのに、貴方とクオーツ様を組ませてあの作戦に当たらせたと……」

「最近のディガードの作戦はどれもずさん……俺の考えすぎ、もしくはあいつの衰えならそれでええ」


 「でも」そう、ホーンロッツは一言添える。


「俺は、あれが衰えるとは思えへん。あれは正真正銘の天才や……」

「前も話されてましたね」

「あいつのとる行動、思考はどれも理解はできる。でも同時に不確定的な何かがある。せやのにあいつは言いおるんや……」


 ――できそうだったから。


 ホーンロッツは苦虫を嚙み潰したような顔を浮かべる。


「正直俺は、あいつのことが気持ち悪くてしょうがない」

「……その様ですね」

「…………まあええわ。今は全てが全て何かが変や。やのに、情報が圧倒的に足りひん。いいか、色んな違和感を逃すなよ」


 コンスタンスはその声に目を閉じ頷いた。


「ええ」

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