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4.【改稿済み】初仕事(2)


「おはよう、シェリー君」

「おはようございます」


 開け放たれた窓から、心地の良いそよ風と眠たくなってしまうような日差しが部屋の中に差していた。

 電気はいらないといったところだろう。


 フランクウッドは書類を纏めると、シェリーにソファーに座るように促す。


「起きてから何か飲んだかな?」

「いえ、何も……」


 ソファーに腰かけようとして、フランクウッドは何かを思い出したかのように立ち止まる。


「寝ている間にも体の水分は奪われていくと聞く。君も何か飲むといい」

「えっと、じゃあお言葉に甘えて……おすすめはありますか?」


 フランクウッドは一つ頷いた後、レモンシロップを取り出し微笑んだ。


「レモネードなんてどうだろうか? ちょうど、今朝がた氷を届けてもらったんだ」

「いえ! そんな貴重な物……!」

「おや、どうやら私のおすすめはお気に召さなかったようだ……さて、どうしたものか?」


 フランクウッドはわざとらしく落ち込んだ後、シェリーの方をちらりと見遣る。

 シェリーはぐぬぬといい淀んだ後、諦める。


「レモネードをお願いします……」

「ははは、君はまだ若いんだ。もっと大人を頼りなさい」


 爽やかなレモンの香りに、キリキリと音を立てていた氷がグラスの中でカラリと転がる様子。少しの結露。

 軽やかな朝に、シェリーは一口――


「すっきりしていて美味しいです」

「それは良かった」


 ソファーに腰かけながらフランクウッドは言う。


「さて、本題に入ろうか」

「……ふぁい」

「はは、ゆっくりでいいよ」


 よほど気に入ったのか、ちびちびと大切そうにレモネードに口を付けるシェリーは、少し恥ずかしそうにする。


「早速だが、君にも仕事を与えたいと思ってね」

「魔女に手紙を届ける」

「ああ、そうだ。詳細を話す前に、君にはこれを読んでもらいたい」


 そう言って、フランクウッドは一通の手紙を取り出した。

 何処にでも売っているような、安物の封筒の中に入った、二つ折りの上質な紙。


「魔女宛の手紙……ですか?」

「ああ」

「勝手に読んでしまってもいいものなのでしょうか?」

「事前に了承は得ているよ。私としても、届けても良いものなのか、判断しないといけないからね」


 シェリーは手紙を手に取り読み始めた。


 ――愛しいエレナへ。


 あの時は、貴方のことを拒絶してしまってごめんなさい。

 怖くて、怯えて、悲しくなって、狩人に通報してしまってごめんなさい。


 あの後、お父さんとお母さんでよく話し合いました。

 たとえ貴方が、エレナに成り代わっていたとしても、どれくらい一緒に暮らしていたのかがわからなくても、貴方が大切だということには変わりないと思います。

 貴方は覚えているでしょうか。貴方がまだ小さくて、お菓子が欲しいんだと駄々をこねながら、一緒に手を繋いで帰った夕暮れを。あの時は、お菓子を買ってあげられなくてごめんなさい。

 それからしばらくして、色々落ち着いて、お父さんも無事に帰ってきて、一緒にお祝いをしましたね。その時になってあなたが、「お菓子ってあんなに高かったの?」なんて言った時は少し笑ってしまいました。

 それに貴方に彼氏ができたと知った時、お父さんは言葉では好きにすればいいなんて言ってたけど、裏ではすごく悩んでいたんですよ。知っていましたか?

 こうやって、色々思い出していると――


「…………ここから先は、滲んでいて……よく、読めません」


 シェリーは泣きそうな気持ちをぐっと抑えて、手紙の涙で滲んでしまったであろう箇所を俯きながら見つめる。


「不思議だとは思わないかい? 言葉にしなくても、その先が伝わってくるような、そんな温かなものがあることに」

「はい……! 痛いほどに、感じます……」


 シェリーは思った。これは他人ごとではないのだと。

 自身が感じた寂しさを、暗闇を、辛い気持ちを。きっとその魔女も感じている。


 だからこそ、伝えたい――


「私に、この手紙を届けさせてくれませんか……?」


 シェリーは、気づけば泣いていた。

 声にならないような、力強い声で泣いていた。


「ああ、君に任せよう」

この度は、私の勝手でご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ありませんでした。

これからは改稿などというものがないよう、丁寧に仕上げていきますので、ご理解いただけますと幸いです。

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