表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/72

48.構造把握


「えっと……赤ずきん……? どうして、ここに?」

「なんでもどうしてもないよ、シェリーちゃんが心配だったからね~。黙って来ちゃった」


 赤ずきんは笑う。それを見てシェリーは少しの困惑と嬉しさを隠せないでいた。

 それでも、シェリーは唇を噛む。


「でも……」

「でもこれは……とかいいからさ~?」


 それを見透かしたかのように、赤ずきんは走りながら言う。

 それに対して、シェリーの足が止まる。


「まずは、どうやってシェリーちゃんのお姉さんを見つけるのか、聞かせてよ?」


 アンリーもシェリーに合わせて足を止め、彼女に振り向き、そう聞いた。


「ありがとう。まずは――」

「……」


 シュバリエは思う。今までのシェリーであれば、ここで引くことがなかっただろうと。

 やはり、彼女の成長を見ていると少し不安になると、どうしても置いて行かれそうで不安になってしまうと……。


 でも、同時に思う。


 置いて行かれたとしても、それでいいんじゃないかと。シュバリエは、シェリーを守ることよりも、共に歩くことを選んだ。

 例え、置いて行かれることがあるのなら、何度だって彼女に追いついて見せる。その覚悟が、彼にはあった。


 そのために自身にできることを振り返る。


「――えっと、外で様子見、侵入、目星をつけて直行、見つかったら変装を解いて攪乱……なるほどね。了解」

「うん、赤ずきんは私たちのサポートをお願い。具体的には、攪乱時に狩人を一人ずつ無力化してほしい」

「オッケー、さらなる混乱を生むためだね」

「話は終わったようですね」


 そう言うとシュバリエは軽く抱きかかえた。


「シュ、シュバリエ? 私は、一人でも……」


 シェリーは少し動揺した様子でシュバリエの方を見る。


「はっきりと言いますが、お嬢様には体力がありません。今ここで、無意味に消耗してしまっては、本当に必要な時に、動けなくなってしまいますよ?」

「まぁさ、ここはシュバリエに連れてってもらおうよ、フーちゃん」


 少しの間、考えるシェリー。少しの沈黙。


「うん……お願い、シュバリエ」

「ええ。それと、お嬢様が立てた作戦を実行するのであれば、私も呼び名を変えなくてはなりません。是非――ジャック……そう、お呼びください」



 ◇



 協会を目指すべく、再度走り始めた三人は、存外すぐに目的地へとたどり着くことに成功した。

 これも全て、赤ずきんが加勢に来たこと、シェリーがシュバリエに抱えられているといった状況、この二つが大きいだろう。


 赤ずきんが先行し、敵の位置を把握し、シュバリエが幹を使って橋や階段を作るなどして、移動をスムーズに行う。

 やはり偵察がいるのといないのでは、行動が大きく変わってくる。


 シェリーは考える。


 自分には何もできない。体力もなければ、戦闘能力も、特別な技術力も、とにかく今、ここで役立つことが何もないのだ。

 だからこそ、思考を回す。自身の我儘に付き合ってくれている人がいる。それに甘えているだけでは駄目なのだ。


 せめて、頭を使ってことを上手く運びたい。そう、シェリーは考える。


「……ジャック。まずはさっき話したみたいに、この辺りで待機してくれる? それとお姉ちゃんがどの辺りにいるのか探せる?」

「ええ」


 外観としては、そこそこの貴族が住んでいる豪邸と同程度、あるいはそれ以上の広さをした、五階建ての要塞と言った所だろうか。

 前面は贅沢にガラス張り、そのまま左側へと向かっていくと、鍛冶場らしき建物と倉庫、本館から外へと出るための非常階段が設けられている。

 右側には宿舎と中庭へと続く道、裏側には、複数の従業員扉らしき物が設置されている。一階は各エリアへとすぐに出入りできるように、吹き抜けといったイメージが強い。


「鍛冶場は避けた方が良さそう……宿舎は出払ってると思うけど、要警戒……食堂側は人はいないと思うけど、そもそも入れない」

「フクロウ、見つけましたよ」

「どこ?」

「やはりというべきか、地下から姉君の気配を感じます」


 少なくとも、これでヘケロンの言っていたことは合っていたことになる。しかし、問題はどうやってその地下へと向かうかだ。

 元より、ずさんな計画だ。それもシュバリエだよりときた。シェリーにも思うところは有る。


 それでも、この心が感情が、義姉を助けたいと叫ぶのだ。


「ジャック……頼りにさせてね」

「ええ、お任せください」



 ◇



「えっとねー、とにかく広いね……」


 戻って来た赤ずきんは、協会の内部構造を記した紙を広げて説明を行う。


「ま、色々あるんだけど、現時点で狩人が出入りしているのは二階だけだね。それも事務仕事メインの狩人っぽいね」

「……ねえ、赤ずきん。ここって?」


 そう言うと、シェリーは二階の地図を指さした。


「多分、会長室。要はディガードの仕事部屋ってことだね」

「じゃあ、ここの真下は隠し通路だね」


 二階の地図と一階の地図を重ね、一つの大きな柱に丸を付けるシェリー。


「だろうね、中は空洞ぽかったし、なんかあると思うよ?」

「……この位置と役割を考えると、あとは鍛冶場と宿舎、倉庫……この辺りかな……?」


 シェリーは地図へと、どんどん印を付けて考える。


「分かった。宿舎側に回ろう」


 どうやら答えが出たようだ。その様子に、赤ずきんは小さく口笛を吹くふりをした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ