18.失ったもの
誤字の修正を行いました。
狩人協会の奥部でホーンロッツはディガードに呼び出しを受けていた。
「なんや、わざわざ俺の事なんか呼び出して……告白か? そんなんお断りやで?」
頭をポリポリとかきながら、嫌そうに答えるホーンロッツ。
そんな彼を見て笑みを浮かべるディガード。
「アズレアが敗走しました」
「あいつのことや、どうせ遊んどったんやろ?」
「罪火の魔女と花の化け物、そして野良人であるルー・ガルーと赤ずきんがいたそうです」
野良人。魔女に味方する、魔術を扱う者たちを協会ではそう呼称している。
ルー・ガルーと赤ずきんは、その中でも度々名前が挙がる存在で、狩人間でも問題視していた。
「なんや、その組み合わせ……」
怒気を強めるホーンロッツと、尚も笑みを絶やさないディガード。
「……もとはと言えば、あんたの軽率な行動が招いたこととちゃううんか?」
「私もことを急いてしまっていたようです」
ホーンロッツはため息を付く。
「んで? 俺に何をせいって言うんや」
「あなたの部下をお借りしたい」
「何のために?」
更に怒気を込め、強調するように言うホーンロッツ。
「あのなぁ、さっきから自分、言葉足りてへんとちゃうんか?」
「今回アズレアが無理やりに引き受けた任務。そこで仕留め損ねた魔女がどこに行くのか、疑問に思ったことはありませんか?」
こめかみを抑えるホーンロッツ。
「はぁ……まあええわ。続けて」
「私の方で色々と調査を行いまして……魔女の治療を行っているかもしれない、医者の存在にたどり着いたのです」
「そいつ、ふざけとんのか?」
人を殺し、その体を乗っ取り、何食わぬ顔で暮らし、その人が大切にしていた人々を虐殺する。
それが魔女だ。それを治療するなど、言語道断。
それは、人の涙を、苦しみを、恐怖を知らない愚か者のすることだ。そうホーンロッツは激怒する。
「……分かった、うちの奴らにそいつの調査をせいって言うんか?」
「ええ。もし、魔女エレナ・クロードを発見できれば、確実でしょう。そうでなくても、何かしらの証拠を掴めれば上々」
「あくまでも調査っちゅうことか?」
「確実であるならば、そのまま処刑していただいても構いません」
「わかった、うちのホームバイツと何人かで調査に向かわす」
ディガードは頷き、写真とメモを手渡す。
「エレナ・クロードさんの写真と、その医者がいる場所の地図です。是非ご活用ください」
「ほおん、わかった。ところで一つ聞いていいか?」
「なんでしょう?」
「なんで俺なんや? 他のバックアップ連中でもよかったんとちゃうんか?」
ディガードは驚いたように口を開いた後、また微笑む。
「あなた方は裏切らないでしょうから」
「……そうか」
そのまま、ホーンロッツはその場を後にした。
≫◇≪
「さて、行きましたか」
一人残されたディガードは、彼が去った扉を見つめ、その正体をあらわにする。
普段の糸目とは違う、全てを見下すかのような、傲慢そうな目を開き、自身の髪をすいてポニーテールを作り上げる。
それは、マーキュリーが手にした、写真の人物その人だった。
「さて……行くとするか」
低い声で彼は言う。
そしてそのまま、部屋に設けた隠し通路を使い、ディガードもまた、外へと出ていった。
◇
とある孤児院の中で、物騒な集団が子供たちと、楽しそうに遊んでいた。
スキンヘッドの大男に、眉間にシワを寄せた堀の深い顔の男、顔の半分にまで刺青を入れた筋骨隆々の男。
真剣に子供たちと指遊びや、ままごと、お絵かきに勤しむ彼らの傍で子供たちと一緒に笑うホームバイツを見つけ、ホーンロッツは声をかける。
血の繋がらない兄弟。しかしここでは――
「おお、隊長。どないされたんです?」
「長い遠征からやっと戻って来たっちゅうのに、ディガードから急ぎの案件を渡されてもうた」
「あー、大体分かったんで、皆まで言わんでいいですよ?」
ぼさぼさの髪の毛で目が隠されているホームバイツは、考えが分からなくて気味が悪い、そう言われることがよくある。
しかし、ここでは違う。
「すまんな、頼りにしてんで?」
気味が悪いなんて周囲の評価をホームバイツ本人はさほど気にしていないが、それでも思う。
ここの連中に、そしてホーンロッツに頼られるのは誇らしいと。
だからこそ、彼は頑張れる。
「それで、俺は~何を調べればいいんですか?」
「ここや、何人かお前に付けたるから、くれぐれも無理せんようにな」
「ええ、死なんようにラインを見極めろ。いつも隊長が言ってることですからね」
「分かってんならええんや。ほな、俺もガキどもと遊んでくるわ」
ホーンロッツも子供たちと遊びに行ったのを見て、ホームバイツはくすりと笑う。
「ええ、隊長もお気をつけて」
お疲れ様です。
チュートリアルは、あらかた終了といったところでしょうか?
ここからは、誰を応援したいのか。それを考えながら読んでいただければ、より物語を楽しめると思います。
最後に、私自身のモチベーションが低下しつつあるので、「見てるよ」だけでもコメントを頂けると幸いです。もちろん評価などでも喜びます。ですのでどうか、よろしくお願いします。




