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お嬢様、私とワルツを踊りませんか?  作者: 踊る大福
モース硬度の行く末に
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105.枯れた涙と尺度の違い


 ドルクは、フランクウッドが亡くなっていた机の上を調べていた。


「……嫌な予感がしとったからに、不安ではあったんだ…………」


 ドルクは机の上に引かれた血の痕跡を辿り、引き出しを一つずつ確認していく。


「……ねえ、ドルクさん……それ何してるの?」

「フランクウッドさんみたいな人はな、大抵死ぬときに何か残そうとすんだ……だから、そういったもんを探してやんねえといけねえ」


 そう言いながらドルクは、引き出しの中からいくつかの手紙を取り出し、アンリーへと手渡した。

 それをアンリーは無言で受け取り、宛先を確認する。


「先生……こんなのどこに隠してたの?」

「……二重底だったな」

「…………そっか」


 アンリーとヒュース、マーキュリー、そしてシェリーとシュバリエへと向けた四つの手紙。


「アンリー、とりあえずフランクウッドさんを埋葬するぞ。ずっとそのままは良くないだろう。そろそろ休ませてやらんとな」

「うん……」

「おい、アンリー」


 ドルクは声に力を込めて、アンリーの名前を呼んだ。

 それにより、アンリーの背筋が正される。


「俺はぁ……お前に何を教えた……?」


 鋭くアンリーの目をドルクは見る。

 もう、随分な歳だというのに、視線だけで人を殺してしまえるんじゃないかと思えるほどの、そんな恐ろしい表情をする。


「悲しむのは……目的を達してからにしろ……」

「そうだ。お前はもう、目的を達したのか? あの子はどうした?」


 ドルクはやって来たシェリーの方を、親指で指し示し、首を傾けた。


「…………」


 アンリーは自身の表情をぐっと押し固め、歯を食いしばる。


「もう一度聞く。お前は、目的を達したのか?」

「まだ」

「……なら、どうするべきか分かるだろ? それとも、それすらも分からん馬鹿になったか?」

「ううん……もう、大丈夫。ありがとう、ドルクさん」


 ドルクは一つため息を付いた。


「はい、シェリーちゃん。これ……」

「……これは、フランクウッドさんから?」

「うん、シェリーちゃんとシュバリエに向けてだってさ」


 シェリーに近づき、アンリーは彼女たちへと向けられた手紙を差し出し、手渡した。

 それをシェリーはゆっくりと受け取り、その手紙に込められた重みをしっかりと確かめる。


 それを見て、アンリーはシュバリエの方へと目を向ける。


「ねえ、ドルクさん」


 そしてアンリーはドルクの方へと振り返る。


「……なんだ」

「でもさ、やっぱり私は悲しむよ。これは私が噛み締めるべき罪だから」

「ふん……そういうのはな、自分の中でモノにしてからいいやがれ」

「……うん。頑張るよ。自分の言葉にできるように、頑張るよ」


 ドルクは少しだけ笑って見せた。

 その様子に、アンリーは少し、驚いて見せる。


「……そんな言葉も受け入れられるようになったんだな。アンリー」

「…………」


 アンリーは息を呑む。


「うん」

「それで、俺も話に混ざってもいいですかい?」


 その話を見守っていた一人の男が、ドルクたちへと向けて声をかけた。


「何処から入って来た?」

「え? いやあ~、玄関からに決まってるじゃないですか」


 ドルクはただ、淡々と男に尋ね、男はそれを飄々と受け流す。


 シュバリエはシェリーを背中へと隠し、男の方へと視線を向ける。

 魔術の反応はまだない。


 が、フランクウッドの一件があり、不安が絶えず、シュバリエの中へと流れ込んでくる。


「それより、なんであそこに居る人は死んでるんですかね?」

「それを知ってどうするつもりだ?」

「いきなりすいやせんね……ただ、知り合いに牛飼いがいやして。飼ってた牛が狼に食い殺されちまう時があるんですよ」

「……何の話だ?」


 ドルクが、一歩前へ出る。

 男は片手を背中へと隠して見せる。


「悠々とした大自然の中で、綺麗な紫の空が黄金色に染められて、食い荒らされた牛の死体を露わにするんです。血をキラキラと反射させながらね」


 しかし、男はそんなことなど構いもせずに、話を続ける。


 ドルクが足を、肩幅ほどに広げる。


「ドルク様……お待ちを」

「……なんだ?」


 シュバリエの呼びかけに、ドルクは男を見据えたまま答えを返す。


「ねえ、貴方……」


 アンリーがドルクの前へと歩いていく。

 その姿を見て、ドルクは何かを察したのか、警戒を解いていく。


 彼が出した牛飼いの話、その中に隠れていた言葉。

 そこからアンリーは、彼の名前を言い当てる。


「なんでしょう?」

「……ガラック……さん?」


 ガラックはニヤリと笑う。


「初めまして。フランクウッドさんに頼まれ、そちらの二人とユニ・フローラさんを国外へと逃がす手伝いへとやってきたガラックと申します」

「チッ……紛らわしい」


 ガラックは少し笑い、先ほどの行いを謝罪する。


「まあ、先にあの人を寝かせてやりましょう。話はそれからでも遅くはないでしょう」

「……ああ」

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