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僕と彼女と眼鏡拭きⅡ

『どうしたのそんなに慌てて、』

電話の相手は先ほどランチを届けてくれた皆口葉介だった。電話口に珍しく若干の焦りを出す久坂に疑問符を重ねるとその質問には久坂は答えず自らの疑問を払拭するヒントを求めるようにある問いかけをした。

「結構前に新しくバイトが入ったと言っていたよな?その子の名前は?」

『え~?個人情報よ、簡単には教えられないわ』

仕事モードの皆口、もといヨーコは女性の話し方が抜けないが今はその事よりも気づいた事項を確認しなくてはならない。

「すまないが急いでいるんだ。名字だけでも構わない」

『あー、…まひるちゃんだよ、確かお前の研究室のOGだったか。ある意味直の後輩っていう』

「やはりか。ちなみにその子は今出勤しているか?」

『そっちに顔出したときに言ったでしょう。バイトが帰ったタイミングで注文してきたからアタシが届けたって』

「何か最近変わった事とか無かったか、例えば…」

『待って、どうしてそんなに質問攻めなの。わけを知らないまま個人情報を伝えるわけにいかないのよ何かトラブルでもあったの?』

あまりにも立て続けに質問を繰り出したため、ヨーコは冷静になるように宥める。電話を聞いていた十四郎も訝し気に壁に飾られていた絵をまじまじと見てみたが何が変わったとかも、まったく見当がつかない。

「希世さんはある理由で朝が苦手なんです。朝日も、いつも浴びないようにしてカーテンを閉め切ったまま研究に没頭するのに、苦手な朝日が描かれた絵なんて買うわけがない」

「じゃあ希世が買った絵を違う誰かが入れ替えたのか?」

十四郎がボソリと反応すると、久坂はスマホを片耳にあてながらこくりと頷いた。

『朝日の描かれた絵?…それっていつから飾られてるの?』

一方的に聞かれるだけだったヨーコから、久坂の期待する返答の糸口が見つかった。

「ここ一か月のことだと思いますが」

『それって写真か何か送ってもらえる?少し気がかりがあるの』

「すぐに送ります。そしてまひるさん、という方に連絡してもらえますか。今すぐ研究室へ来るようにと。私の連絡先をお伝えしてください」

『分かったわ、じゃあ後で』

迅速かつ無駄のない会話で久坂は通話を切った。

ようやく見つけた確信が頭の中でパズルを組み上がっていく。

「希世さんの身の回りで絵を飾ってもおかしくない距離感で、研究室にも足を運べてなおかつ災害に一定以上の知識を持つ人物こそがこの頃に起こったデータ紛失に関わっていると睨んでいました。ずっと無くなってしまったデータの内容に疑問が残っていたのですが…」

「久坂くんはそれを追っていて最近寝ていなかったのか」

「でもまあ今夜からは少しだけ寝られる気がしますよ。この予想が当たっているとしたらですが」

急な推理ショーに遅れて十四郎は座っていた椅子から立ち上がり、例の壁に掛けてある絵の元へ近づいた。

「この絵にいったい何が仕掛けられているんだ…?」

「それを説明するには、何とか仮想空間むこうからレスポンスがあればいいんですが」

その時ジジジとモニターに映し出されていた数値の異常音と文字が出て久坂と十四郎が目を合わせ急いで脳波と感知した異常音の正体を突き止める。

「モールス信号か…!」

ラジオの電波に近い雑音と共に周囲の環境音で反応するパッドが反応を示した。

「だ…しゅ…つ……ふ…の…う…?」

「脱出不可能と言っているのか」

「それです!モールス信号分かるんですか室長!」

「…妻がよくいたずらで暗号を作っていたことがあったんだ。もう少ししか覚えていないが」

懐かしむように切ない目線で十四郎は数値の揺れともう出されることのなかったと思い込んでいた信号の反応に一つ一つ文字列を並べ言葉を組み上げていった。






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