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僕と彼女と腕輪Ⅰ

こんにちは、前回からの読者様であればご無沙汰しております。

作者の小鳥遊です。

2020年~2021年頃から練っていたお話をようやく紡ぎ始めました。

そうして一度区切りを付けました続編となります。

難しくはなく、前回よりは照らし合わせの方が多くなりそうなので

長くはならないかと思いますが、完結まで見守って頂けると嬉しいです。

よろしくお願いいたします。


2025.7 編集。

 突然、僕の前に現れたのは、金髪の長髪を後ろで高く結わえた女の子…ではなくこちらに向かって腕輪を渡す希世だった。

「大丈夫?」

短い単語で心配の意図を示すのはクールな見た目とは裏腹で、小さな唇から紡がれるそれは安心の一言に尽きる。一人じゃないだけで、こんなにも変わるのだろうか。

そして黒光りしている手首に付けた腕輪それは、不気味なほど沈黙を貫いていた。確か、非常時にアラームが鳴る設定なのだと希世から教えてもらった。

「さて、ここが瓦礫の山ゾーンだけれど、前に入った時が崩れ具合がマックスだとすると…少し」

「崩れ方が違うような…?」

「以前の崩れ方を完璧に覚えているかと言われればそれまでなのだけれど…何か違うわね」

コンクリートの、かつてはビルだったものの残骸や環境緑化のために植えられた木々など、曖昧な記憶の中で最も覚えているのはそれらの散乱の仕方だった。記憶を辿りながら、周囲をキョロキョロと見回すとやはり人の気配がない。普段見慣れているはずの喧騒が一切外部と遮断されているような感覚だ。そうだ、これは前にも感じたことだと納得しながら東島は一歩ずつ確かめるように希世と進む。

「人の姿がないのは前も同じだったよね」

「そうね…私が共にして同じ体験を促す管理者とするならば、あなたたちがプレイヤー…ほんの少し見ただけでは分からないことも私には違和感に感じるかもしれないわ」

もっともだと感じた。さらに記憶を思い起こしながら瓦礫の山を進もうとすると、確実にあり得ないものが転がっていた。

「よォ、遅くなっちまったなァ」

掠れた声と聞き慣れた話し方。

隆大たかひろくん?!どうして瓦礫の下に挟まって…!?」



―――数十分前、希世が所属する研究室にて―――。

「さて、ではこれから臨床試験に臨むわけですが、事前確認としてまず体調は万全ですか?」

「はい」

「体調面ではなく精神面での不調は測りかねますので、そちらは?」

「正直不安です、というか怖いです」とは言えるはずもなく。東島は問われたことに一度頷く。

医師のように淡々といくつか問診した久坂は、手元の端末を見ながら頭部にはめるヘルメットのような機械から伸びるケーブルの差込口を確認したり、パソコンのディスプレイを見たりと忙しなく動いている。参加するのは希世と東島。遅れて参加するといっていたまひるはバイトの都合がつかなくなり来られなくなったと連絡があった。隆大は連絡がつかず、優太も同様だった。通っている学部が忙しいのもあり、もしかしたら不参加になるかもしれないと前もって予想はしていたが、どこか嫌な予感を東島は感じていた。

「仮想空間に移動した後、途中で何か異変、思い出した反動で体調が悪くなればヘルプをタップ。着けている腕輪に出てくるのですぐに押してください」

「分かりました…久坂さんは入るんですか…?」

「いいえ、私は反応の脳波や外的心因を調べます。…おそらく覚えていないでしょうが、私は主にサポート担当です」

「は、はい…よろしくお願いします」

何故だろうか、久坂を目の前にすると希世を近付けさせたくないと思ってしまう。

「無理せず行きましょう。反応がどの程度自身へ影響を及ぼすか分からない。本当は…」

希世が東島を気遣って声を掛けると久坂も冷たい視線からほんの少しだけ目尻を緩めると同意した。

「そうです、しかし直接得られるデータの方が確実性はありますね」

並んだ椅子に備え付けられた小さなテーブルに腕を置くよう指示され、心拍数を測る装置を腕に、そしてやや大きめなヘルメット型の装置が希世と東島それぞれ目の前に一つずつ置かれる。

「東島くん、くれぐれも無理に思い出そうとしたり、勝手な行動は慎むように頼むよ」

十四郎からの言葉は厳しいように思うが、どうやら心配してくれているようだ。希世が思うほど性格的にひどい人ではないのかもしれない。ただ娘としての立場からしたら違うのだろうか。

「ではスタートします」

ヘルメットを自身で装着し、仮想空間への接続を開始した時だった。

「遅くなったァ!!」

勢いよく入ってきたのは髪をこれでもかというほどに乱した隆大だった。



「―――ってなァ、急に入っちまったんだ。ハッキングじゃねェからな、言っておくが」

「時間に遅れるなら参加しないこともできたのになぜ?」

「恩人の航大が参加するのにオレが出ないわけねェだろうが。」

「と、とにかく瓦礫から出さないと!もしかして瓦礫の散乱が違うのはもしかして…」

「上から降ってきたんだ」

「仮想空間なのに登場の仕方が隕石だよ…」

「すまねェが出してくれると助かる」

上に重なっているのはそこまで大きくない瓦礫ではあったが、いつ崩れるかは分からない。








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