表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/5

序章:運命の輪と、僕の退屈な日常に生えた毒きのこ

「えっと、自己紹介ってやつですか? どうも。タカシです。どこにでもいる、ごく普通の凡人。いや、むしろ凡人以下かな?」


僕の人生は、まるで薄味のスープみたいなもんだ。特筆すべきこともなく、刺激もなく、ただただ消費されていく日々。朝起きて、バイトに行って、帰ってきて、寝る。まるで誰かが作ったプログラムを、ただこなしているだけみたいで。


外見? ああ、これまたどうでもいい話なんだけど。背は中の下。猫背気味。髪はボサボサの黒髪で、いつも寝癖がついてる。眼鏡の奥には、生気のない魚みたいな目。服はユニクロの無難なTシャツと、ちょっと毛玉のついたスウェットパンツがお気に入り。


まるで、背景の一部としてしか存在しないような男。それが僕、タカシだ。そんな僕が、まさか世界の運命を左右するような大冒険に巻き込まれるなんて、一体誰が想像しただろうか?


まあ、強いて言うなら、ひとつだけ特技があった。それは「きのこ」を見分けること。図鑑片手に森を彷徨うのが、唯一の趣味だった。毒きのこだろうが、食べられるきのこだろうが、区別なく愛でる。変人? そうかもね。


そんなある日のことだ。いつものようにバイト先のコンビニで、廃棄弁当を貪っていたら、店の自動ドアが「ウィーン」と音を立てて開いた。そこに立っていたのは、目を疑うような「何か」だった。


頭のてっぺんから、真っ赤な毒々しいきのこが「こんにちわ!」とばかりに生えている。そんな少女が、満面の笑みで僕に向かって駆けてきたんだ。ピンク色のフリルがふんだんにあしらわれた、まるで絵本から飛び出してきたようなドレス。


キラキラと輝く大きな瞳。陶器のような白い肌。そして何よりも、頭から生えた、瑞々しい赤いきのこ。傘の部分には白い斑点までついてる。完全に、ベニテングタケだ。毒きのこ中の毒きのこだ。


「わたくし、モリミヤ・マドカ! 貴方の運命を断ち切りに参りましたなり!」少女はそう叫ぶと、僕の前に仁王立ちした。奇天烈な口調。そして、その背後から湧き出る、なんとも言えないキノコの香りが、コンビニの揚げ物の匂いをかき消していく。


これは、僕の退屈な日常に、突然生えてきた「毒きのこ」だ。そして、この毒きのこが、僕の人生の味を、劇的に変えることになるなんて。この時の僕は、まだ知る由もなかった。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ