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第十九話 「錬成武器」


 武器錬成の修行を始めて一週間。

 クリムの言った通り、その短い期間だけですっかり感覚を掴むことができた。

 錬成術は誠に恐ろしい技術である。

 そんなこんなあって私はすでに、騎士団用の剣を大量に錬成していた。

 近衛師団と討伐師団の数人にも試し斬りをしてもらって、かなりの好評をもらっている。


「傷薬に続いて武器まで面白い性質が付いてて、みんなすごくショコラちゃんの武器を気に入ってるよ」


 近衛師団の師団長ムースさんからもそんな報告を受けた。

 そう、私が手がけた剣には傷薬同様、特殊な性質が付与されている。

 そこを評価されて、今は大量に錬成依頼をもらっているのだ。


◇黒石の直剣

詳細:岩人(ゴレム)の鉱石を素材にした直剣

   深みのある漆黒の刀身が特徴的

   軽量でありながら耐久性に優れている

状態:良

性質:鋭利性強化(S)耐久性強化(S)自動研磨(S)


『鋭利性強化』は刃が付いている武器の鋭さを増してくれる。

 そのSランクの性質が付与されているため、どのような魔物も簡単に切り裂くことができるようになっているのだ。

 ちなみに取り扱いには注意である。


『耐久性強化』は文字通り武器の耐久性を底上げしてくれる性質。

 これのおかげで簡単に壊れることがなく、錆び付きにくいということもあって騎士たちからはかなり好評だ。


『自動研磨』については手入れの手間が完全に無くなるということで重宝されている。

 いくら鋭利性強化の性質が付与されていると言っても、使い込んでいけばいずれ刃こぼれしていく。

 しかしこの性質があるおかげで刃は自動的に磨かれて、常に最高の切れ味を保つことができるようになっているのだ。


 極限まで鋭さを増した、簡単に壊れることのない、手入れいらずな規格外の直剣。

 それが私の錬成した武器――ショコラの『黒石の直剣』である。


「初めはみんなも、見習い錬成師が手がけた武器なんか使い物にならないって見向きもしてなかったんだよ。傷薬の時もよく思わない人たちが多くて、クリム君の作った品じゃなきゃ受け付けないってね。でも、少しずつその認識も変わってきた」


 ムースさんは私が手がけた黒石の直剣を見つめながら、笑みを浮かべて続けた。


「今じゃ、一部の騎士たちはすっかりショコラちゃんのファンになっててね、早く別の品を見てみたいって言ってるんだよ。俺もそのうちの一人だしね」


「そ、そうなんですか……」


「それに今回作ってくれた剣なんか、特に面倒くさがりな俺にぴったりの武器だからね。これからもこういう便利な品を期待してるよ」


 みんなが、私の作ったものを見てみたいって言っている……

 それは錬成師冥利に尽きるというものだ。

 今まではブラックなアトリエで素材採取係としてしか活動していなかったし、こうして錬成師として認めてもらえるのは素直に嬉しい。

 ちなみに私の作った剣の中には、『炎属性付与(S)』で斬撃に火炎をまとわせるものや、『筋力強化付与(S)』で装備者の筋力を上昇させるものもできた。

 それらの特殊な性質を付与された剣も、騎士団内で話題になったそう。

 ただ、そんな感じで性能にかなりのバラつきがあるから、騎士団全体での採用は見送られるそうだ。

 あくまで王様を守る『近衛師団』と、町を守る『守衛師団』で使ってもらえるらしい。

 一方で魔物討伐を主眼とする『討伐師団』と、魔物領域開拓を目的とする『開拓師団』の武器は、引き続きクリムが担当することになった。


 やはり安定感と信頼性を考えるとクリムの作った剣の方がいいということらしい。

 訓練で剣を使用する際も、性能にバラつきがあったら意味がないし。

 それでも充分にクリムの仕事量を削減させることはできているみたいで、クリムはやりたがっていた錬成術の研究に僅かながら時間を割けるようになっていた。

 今も自分の作業机の方で、私とムースさんが話していることなんか気付いていないように研究に没頭しているし。

 こうしてアトリエで修行させてもらっている身だから、少しでも役に立てているみたいで本当によかった。


「じゃあ引き続き、傷薬と武器の錬成、よろしく頼むよ」


「はい、わかりました」


 というわけで私は、クリムのアトリエの手伝いとして少しだけ前進したのだった。

 さて自分の作業机に戻って錬成作業を再開しようかな、と思っていると……


「あっ、そういえばショコラちゃん」


「……はいっ?」


 アトリエから立ち去ろうとしていたムースさんが、不意に足を止めてこちらを振り向いた。


「町の冒険者たちから、武器錬成の依頼が届いてるよ」


「えっ?」


 唐突にそんな話を持ちかけられて、私はぽかんと口を開けた。

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