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さようなら、初恋の人

一章序章終了です

「きっと…俺も好きって返事をしました。実際、面接に足を運んだ際に告白した様なものです。早苗さんの表情に一目惚れして、貴方だけをずっと想ってました」


「年齢的に五歳も下の男の子をって考えると私もほら…奥手だからね〜?でも…そっか。ううん。ありがとう。昇くん、この世界でも頑張ってね〜」


 彼女は俺の背中を言葉で押した後、いろひすとディナーパックを両手に持ち、ゆっくり手渡そうとする。


 しかし、早苗さんの足が徐々に白い光となっていたのを確認して気づいた。


 『エスカレーション』は、無限の効果時間じゃないもんな…。


 ——それでも、もっと彼女を見たいと思ってしまうのは…俺の我儘なのだろうか?


 俺の手元に届いた頃は…早苗さんは首から下まで光になった姿だった。


 一瞬だけ悲しそうな表情をした後、いつもの笑顔に戻り、そのまま彼女は俺の右頬に口づけた。


「彼女じゃないのに、キスしちゃって…ごめんね〜…。私も不器用だけど、努力していた昇君が大好きでした」


 早苗さんも自分に残された時間が長くないと分かっていたのか…普段とは異なり…早口だけど…大きな声で俺に告げる。


 先程の口付けで、硬直してしまった口を無理矢理にでも動かし、彼女へ返事をしようとする頃には、もう彼女は顔だけ頬から下になっており、その直後、白い光に包まれて消えた。


 ——俺の視界に映った想い人の表情は、頬を赤らめながらも、満面の笑顔だった。


 俺の手元に残ったのは、いろひすと、ディナーパックだけだった、ディナーパックはミートボールが入っている味で…とても甘いはずなのに…まるで、初恋と呼応するかのようにしょっぱく感じたのはなんでなのかな?


 あの口煩いテレーフォがこの時だけは何故か、口を挟むことはなかった。


 心の中で感謝をし、空を見上げて、別れを告げた。


 ———さようなら、僕の初恋で両想いの人———


 ———どうか、僕を忘れて幸せになってください——



 ◆◇◆◇


 暫く経つと…精神的な疲労も軽減されてきたので、全く険しくない道を右手に受話器を持ちながら歩く。


 トワの馬車でワンダール国の風景を眺めていたが、この世界に電車等は、流通していないと考える。


 そう考えると、この森が整備されているのは、交易ではないか? と推測した。


 同時に矛盾も生じる。なぜならば、中間地点以降、いくら歩いてもライオン以外の獣は出なかったからだ。


 整備された道で、獰猛なライオン達が姿を表した時点で違和感に気づくべきだった…。この時の俺はわかりやすいほどに、真っ青な表情をしていたんだと思う。


『気づきましたか…?昇は、馬鹿なようで馬鹿ではない。勇敢なように見えて実は奥手、面白いですね。…ところで、誰が狙ったと思いますか?』


 それを裏付けるかのように、テレーフォが問いかけてきた。——俺よりも早くに気づいたのか。


「順当に考えれば…ワンダール?国王だろう。トワは考えにくい。しかし、国王ぶただとしたら、やばいな。トワの命はもうないかもしれねぇ…」


『いい推測です。もう一つの可能性もあります。それは、あれが《《調教済み》》ならば、トワとあなたの後ろを気づかれないように追いかけ…トワが去った後、襲えと命じていたケースです。どちらにしても…《《その仮説が真実ならば》》、厄介な相手です』

 

 まぁな…色々可能性はあるが、今は、生き残ることに集中しよう。


 ◆◇◆◇


 その後も、代わり映えのない景色を上の空を見上げたり、時には左右を交互に剥きながら歩いて行く。


 そうしていると、物凄い速さで後ろから馬車が俺の隣を横切っていく姿が見えた。


 いいなぁって眺めていると…意外な事に、その馬車は俺の近くで止まったのだ。


 新品のような黒色の馬車から降りてきた黒いシルクハットと蝶ネクタイが特徴的な男性はやや興奮した様子で、俺の方へ駆け足で近寄ってきた。


 目の前の彼の外観から察するに、どこかの商人…ともすれば、経営者の可能性が高い、


 商談を行うにあたって、大事なのは第一印象だ。彼の場合、少し恰幅がいいものの…一目見れば、分かる。


「初めまして、僕の名前はデルと申します。もし、良ければ…君のその手に持っている透明な入れ物を買わせて欲しいのだが、どうだろうか」


『伝説の秘宝って嘘をつきましょう』


 テレーフォの癖に、分かってるじゃん。


「デル様…お目が高いです。これはこの世界で一つしかない大変貴重な物でございます。つまり、これは俺の命とも同等なので…お渡しすることは…」


 詐欺? 関係ないね。生き残る為に通貨は、あって損がないのさ。


「白、白金貨二枚までなら出そう!!後、君の疲れてる様子からして、君の目指している場所は、ダンラー帝国にではないだろうか?君さえよければ、そこまでこの馬車で送っていこう。それでどうだろうか?」


 ダンラー帝国…? なるほど、覚えておこう。


「白金貨()()にしてくれたら…」


「やれやれ…僕の負けだよ。受け取ってくれ」


 俺はその後、白金貨を受け取り馬車に乗り込んだ。馬車の中には、デルさん以外に雇われたであろう御者と彼の護衛らしき人が一人いた。


 ———それにしても、馬車に乗り込む際にデルさんが笑っていたような気がしたのは気のせい…か?


 ◆◇◆◇


 きっと…善意を振りかざす人がいれば、俺がデルさんにした事を異世界の主人公にあるまじき行為だとか批判や指摘をするのかもしれない。


「『当たり前だ(です)。絞れる所は絞るんだ(です)』」


 ——分かってるじゃねぇか。


『昇、一ミリ程度の好感度が上がりました』


「俺も、口煩いだけの受話器なら、どうにかして捨ててやろうかと想ってたところだ」


『奇遇ですね。あの時、昇がライオンに食べられて仕舞えば良いのにと想っていたところです」


「『ハッハッハッ、いつか離れてやる(ます)』」


「そ、そろそろいいかね…?一人で夢中に変な物へ話しているように見えたから…話しかけにくくてね…。改めて、僕の名前はデル、これでも()()商会を経営しているんだ。もし、良ければ、君の名前と着ている服装の事について、詳しく教えて貰えないだろうか?」


 …テレーフォに嵌められた。許さん。客観的から見れば、確かに、彼から見れば、俺は突然、社長したかと思えば、笑い出している変人だ。


 今は良いとして…服装…? あー、確かに、この異世界だとパーカーとジーパンは珍しい素材かもしれない。


 日本だとユヌクロで二千円なんだけど…いっかな。


 確か…あの玉座にいた人達は、ドレスとタキシード、兵隊達は銀色の鎧がメインだったし、この人も似たような類の物を身に纏っている。


 彼らの服装だけならば、近代のヨーロッパに近い物を感じるのは俺だけだろうか?


『商会の経営者とか、ぶっかけ放題じゃないですか。やっちまいましょう。その後、私とずっと天国《ニート

》しましょう!!』


 はぁ…その思考、大好きだ。


「ご挨拶が送れました。俺の名前は叢雲昇と申します。まず、服に関しては丈夫な素材で出来ており、太陽の光等を守る事ができる優れ物でございます。ズボンの方はですね…?なんと相手に自身の足を細く見せる事ができるこちらも業物でございます。故に、いくら()()()()()()()()とはいえ、予算的に厳しいかもしれません」


『昇ぅ、主も悪よのぉ』


 ふはははは…!!テレフォーさんには負けます!!


「…いくらだい?白金貨六十五枚までなら出そう」


 なるほど…六十五枚は出しても痛くないんですね?


「白金貨七十枚と服を購入してくださるのでしたら…」


「くっ…わかった。それで手を打とうじゃないか」


 さて、釣り上げに成功した。この世界の、通貨価値がわからないけど、恐らくお金に当分問題ないな…。


 デルさんと二つの商談が成立した後…彼に促されて、助手席側の椅子へと招かれる。


 黒の馬車の中は、赤い絨毯のようなものが敷かれており、トワと乗馬していた時より前揺れがなく快適で…色んな事があって…うとうとしていた。


『昇…()()涙はなんですか?』


 テレーフォの悲しそうな声が聞こえた気がしたが…直後、意識を手放した。


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