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オペレーター、異世界召喚に巻き込まれる。

新連載です♪一人称で物語は進んでいきます。よろしくお願いします

「お待たせ致しました。ベネマルコーポレーションの叢雲むらくもがお伺い致します」


「あのー…お宅の商品が使えなくてー…クーリングオフしたいんですけどー」


 俺の名前は、叢雲昇むらくものぼる別海大学べっかいだいがくの文学部に所属している三回生の二十一歳だ。


 コールセンターのアルバイトでお金を稼ぐために働いてるんだが、今日は運が悪い。女の悪魔クレーマーに遭遇してしまった。


「お客様…大変申し訳ございません。もし、よろしければ、具体的な事情をお聞かせ願えないでしょうか?」


「だからーフライパンがポンコツなの!!コンセントに刺しても付かないの。わかったぁ?」


 フライパンならコンセントに刺しても、付かなくて当然では…? と思ったものの、冷静に対応しようとする。


 しかし、女の悪魔クレーマーは甲高い声を喚き散らしながら、憂さ晴らしと言わんばかりに、ただのオペレーターの俺に対して、八つ当たりをしてきた。


 思わず、口から舌打ちが出そうになるのを押し留めて悪魔クレーマーに断って、保留のボタンを押す。


 その後、軽く溜息を吐き…右手を上げて管理者に指示を仰ぐ。


 ちなみに、この行為を『エスカレーション』と呼ぶ。


 コールセンターで働き始めたばかりの頃は、よく頼らせて貰った。


 働き始めて二年目になると、慣れて来た事もあり、『エスカレーション』をすることは減ったものの、それでも悪魔クレーマーと遭遇した時は力を借りる。


「昇君〜♪どうしたの〜?」


 俺の右手に気づいたのか高梨早苗たかなしさなえさんがやって来た。


 早苗さんはバイトリーダーで、綺麗な黒髪を背中まで伸ばしている女性だ。彼女の特徴的な所は、大きな黒い垂れ目、纏ってる雰囲気も穏やかで、何より幸せがたくさん詰まってそうな胸がある所だろう。


 ベネマルコーポレーションの中でも嫁にしたいランキング一番人気で、俺が一目惚れした女性だ。


「実は…温度感が高い人に遭遇してしまって」


「温度感が高い人の場合は、何も考えずに頷いて謝罪するんだよ〜。無理なら変わるから、やってみて〜」


 はー…なんて心地よい声音…だからこそ、彼女は悪魔クレーマーを任せられるエグゾシストに選ばれているのかもしれない。


「はいっ!!」


 その後、保留解除を押し、もう一度、心からの謝罪をしようと思ってた——その時だった。


「ちょ…なにこれぇ。あたしの足元にーいきなり変な紋章が浮かび上がってるんですけどー!?助けてー!?」


 悪魔クレーマーが先程の怒っていた声音とは異なり、電話越しの俺に助けを求め出したのだ。


「お、お客様落ち着いてください」


「無理無理ー」


 どうやら悪魔クレーマーは相当切羽詰まっている様子だった。そんなわけ…と思い、念の為、自分の足元を確認してみると、俺にも変な紋章が浮かび上がっていた。


「お、お客様!?あの、異世界に旅立たれるのであれば、このお電話を是非とも切ってから、行っていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」


 思わず、『異世界』などと口走ってしまったためか、隣の人達に白い目で見られる羽目になった。


 だが、俺の立場からすれば、この現象を許容できるはずがない。


 なぜならば、変な白い紋章に似た物をアニメなどで見たことあるからだ。


 だからこそ、嫌な予感がして、周りの引く目よりも、お客様に本音をぶつけたのだ。


「絶対いーやーだー」


「てめぇぇぇぇぇふざけるなぁぁぁぁぁぁぁ」


 怒りの声を叫んだ後、俺の視界は、コールセンターでお客様から電話をとっていた仕事仲間達の現場風景から一瞬で白い光に包まれ…異世界へと切り変わった。


 ◆◇◆◇


 日本とは全く異なる空間にきたせいか、思わず、周囲を確認してしまう。


 全体的に白色で彩られた空間であるものの、絨毯じゅうたんは赤く…目の前に段差のような物がある。


 俺が一番上を見上げれば、王冠を頭に乗せて、煌びやかな服を身に纏っている太い王…? がいた。


 そして、隣には、妻と思しき美しい赤いドレスを纏い、こちらに微笑みかける王妃…? がいる。


 なるほど——王様と王妃のみが大きな金色の椅子に座ってて、他の人達は立ってる状態か。


 目を凝らして見ると、王子や姫様っぽいのがいたが…そんな事よりも、俺は違和感がある。


 先ほどから右手に、受話器があるような感覚がするのだ。確かに、ここに来る直前まで持っていた…。


 だが…嘘だよな…? 嘘だと言っくれ。どこの世界にいるんだよ。受話器を持って異世界転移する奴なんて…


「あんたが、あたしのクレームを対応してた人って…黒髪アップバング、更に背が高くて、吊り目で…結構かっこいいじゃ…って受話器ごと持って来たの?マジウケる!!!!あははははは」


 ………めちゃくちゃ笑うじゃん。


 申し訳ございません。もし、よろしければ、『かっこいいじゃ…』の続きを是非、教えてくださると助かります。身長は百八十センチメートルと吊り目は遺伝だが、髪型に関しては、早苗さんのために気をつけていた。


 少しだけ…喜んだけど、よくよく考えれば、この悪魔クレーマーのせいだった。許さねえええ!!!


 しかし、意外にも悪魔クレーマーの正体は幼く…茶髪のツインテールにガラス玉のような大きな瞳をし、白と紺のセーラー服を着た、身体が百五十センチメートルくらいの小さめな中学生くらいの子が相手だったとは、思わなかったよ…。


 後、フライパンはコンセントじゃなくて…コンロに置くんやで…?


 でも、俺はこの悪魔クレーマーのせいでこのような事態に陥ってるし、笑われた事もあり、嫌いである。


 そのため、今度からはサディスト悪魔クレーマーと呼ばせて頂こう。


「その受話器置かないのー?」


『無理です』


 突然、俺とサディスト悪魔クレーマーの会話に脳内から割り込んできた音声がいるんだけど…!?


「無理らしいです」


 またもや笑い出すサディスト悪魔クレーマー…許すまじ…


「ゴホンッ…勇者様と変な物を持っている…不思議な人よ、我らの国は、現在、邪悪な魔王の手によって…危機に瀕してます」


 わざとらしい咳払いだなぁ…。魔王ねぇ…。そんなに肥えてるのに? と心の中で突っ込んだはずなのに、王様から、殺気を感じたのは気のせいだろう。


「ヴァーゴホッゴホン…それで…お二方…いえ、勇者様には是非…魔王を討伐していただきたく…」


 なんで、言い直した?まさか、さっきのことを引きずってるのか? ——これだからボンボンは…やれやれ、俺の本気を見せる時が来たか…。


「王様…俺にお任せください。魔王なんぞ、捻り潰してやります」


 王様の目を見て、ニヤリと不敵に笑った俺は、受話器を右手に、天を掲げながら宣言した。


「あの…多分あたしが勇者だと思うんだけど…だって…『伝説の受話器を持った勇者』なんてあり得ないし…」


 そ、そんなこと…やってみないとわからないじゃないか!!だから、そんな冷たい視線で俺を見ないでくれ!!


「其方がいると話にならん。勇者様の時間は有限だ。即刻、この異物をこのワンダール王国から追放する」


 あの太ってる王の決定に誰も異議を挟まない。あのサディスト悪魔クレーマーでさえ、やれやれと肩を竦めている始末だ。


 王が俺に対して、追放宣言をした数瞬の間にもかかわらず、玉座の警備をしていたであろう兵士達に一斉に槍を向けられた。


 思わず…漏らしそうになったものの…我慢して、両手を上げる。


 その後、高い地位にいるであろう兵士の方を先頭にその部下達が俺の背中に槍を突き付けながら、玉座から厩舎へと連行された。これが、本当の都落ちってか?


 笑えねええええええええ!!!


「ガハハハッ、ご苦労!!休んでよし。吾輩がここからはこの罪人を国境の森へ連れて行こう」


「「「「はっ、お気をつけて」」」」


 罪人なんて失礼な…!? と心の中で思いながらも、抵抗なんてできるわけもなく、無理矢理、乗せられた。


 


 

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