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紅雲  作者: Shane
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3話 菖蒲

世界を震撼させた皇大門の事件から逃れた3人だったが、指名手配になり、さらに偶然会ってはならない人物に遭ってしまうが予想外の展開に。3人の運命はいかに。

龍国の王府市にある皇大門の衝撃的な事件のニュースは瞬く間に全世界に広がった。


王府市には戒厳令が敷かれた。


運良く広場から逃げた3人(玲、翔、琳)は王府市内のはずれにある床屋の一室に隠れていたが、見つかるのは時間の問題であった。


玲が切り出した。


「ねぇどこか遠くへ、安全なところにいけないの?」


「難易度は高いけど、一つだけあるよ」


翔が答えると琳がすかさず


「難しくても、こんな状況だからやるしかないよね!!」


「おお、そんな積極的な琳、はじめてだね」玲が驚いた。


「解放軍に見つかったら終身刑か死刑かもしれないよ」


「それでも何もしないよりはいい!」


「わかった。話すよ」


翔が逃亡案を詳細に話した。



その数日後、皇大門事件の主犯として学生16名が全国で指名手配された。その中に玲と翔が含まれていた。


さらに左北党は得意の密告奨励を王府市内で始めた。犯人をかくまっているというのを第三者が密告すれば米、牛肉、酒が大量に配給されるという。


床屋の主人も身の危険を感じ始めており、そろそろ部屋を出て行ってほしいと3人に伝えてきていた。



それを知った3人も早々に作戦を決行する必要があったが、どうにも逃亡する為の足が用意できなかった。


あてもなく床屋を出た3人が路地から通りにでたところ、後ろから見知らぬ男が声が聞こえてきた。


「あら、また会っちゃったね。運命だね」


「えっ? どなたでしたっけ?」


「北王府の時はどうも」


「あーー、戒厳部隊の?」


「シッ、声が大きいよ」


「ごめんなさい。人民服だったから」


「悩んでいるなら、何か手助けましょうか。ボクはあなたたちの味方ですよ」


3人は兵士と人気のない橋の下に移動して話し込んだ。


再会した坊主頭のこの男の名前は張といい、戒厳部隊の一番下っ端で、22歳、3人と同世代だった。よくみるとあどけない顔をしていた。


「ボクは農村の育ちだから、君たちエリートには叶ないよ」


「いいや、命の恩人だ。アンタがいなければ俺たち終わってた」


「叔父さんに家に預かってもらえるか頼んでみるよ」


「ありがとう。2度も助けてくれるなんて」


「こんな状況だからOKしてもらえるかわからないけど」


「近いうちに港に行きたいんだ」


「なるほど。そうしたほうがいい。車は叔父さんが出してくれると思うよ」


「もしかしたら助かるかもしれない」


3人は希望がうっすらと湧いてきた。


しばらくして気分を取り戻した3人は張を交えて雑談をしていた。


「どんなお花が好きなんですか」


「わたしはチューリップ」


「いいね。玲さんは?」


「わたしは菖蒲よ」


「へぇ、どうして?」


「葉っぱは鋭く剣、花は炎、侵略者と戦い死んだ姫の生まれかわりといって、わたしみたいな気がするの」


「おおっ。ぴったりだね」


翔が驚いた。


「ねぇ、どうして私たちにそんなに優しいの?北王府で殺せたでしょ。そうしたら表彰されたんじゃないの?」


「農村出身で中専卒のボクにでも戒厳部隊と学生とどっちが正しいかはわかります。龍国が腐っていることをボクはどうにもできないけど、あなたたちなら世界に広めたり、変えられるんじゃないかと思って」


「絶対に変えるよ、変えてみせる!!」


「琳、どうしたの?やけに熱いけど」


「だって、私たちは龍国の市民みんなを代表してるんだよ」


「そっか。そうだよね。琳の言う通りだわ」


こうして3人は国外に逃亡することに腹をくくったのだった。



つづく



◎登場人物

玲 美人女神 21 法学部

翔 裏方 エンジニア 21 工学部

琳 マジメ博士女 21 文学部

張 戒厳部隊兵士 22 農村出身

龍国の市民を代表して亡命を決意した3人に襲い掛かるものはいったい。恐怖国家が牙をむく。

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