2話 地獄の決戦
9月に入ってすぐ歴史的な事件が起きる。決戦とよぶには一方的な戦力であり、おぞましい光景になってしまう。4人の若者の運命はいかに。
9月
日曜日になった。 昼食を食べた後、4人は左北党本部近くの皇大門広場へ向かった。極央大の学生も続いた。他のグループも、さらに市民も参加し、夕方にはすさまじい人数が皇大門広場に集まっていた。「市民に自由を選挙を!租税を見直せ!」広場のいたるところで学生グループの演説があり、賛同する学生、市民のボルテージは高まっていった。
夜になると戒厳部隊が現れ、一部では戦車もでてきた。デモ隊に放水するのもあれば、銃撃するのもあり、次々と学生、市民が倒れた。さらに戦車が学生をひき殺したところもまであった。
「これはやばいぞ。奴ら無差別に殺す気だ。逃げるしかない」
4人は党の第一ターゲットだったが異変に気付いて素早く逃げた為、解放軍がなかなか見つけられなかった。
皇大門広場から都大路を西に向い、地下鉄北王府駅近くのところで4人は戒厳部隊に見つかった。
「やばい」
容赦ない射撃が始まり、何人も撃たれた。そして...
パパーン!パパーン!パパーン!パパーン!パパーン!
「うっ、くっ」
孫は頭部、腹部、右肩、大腿部、背中と撃たれ、倒れた。即死だった。
「うわっーーー!!」
3人は伏せた。
「おい!」
軍服の男に見つかってしまった。
「どうか、どうか、命だけは勘弁してください」
「大丈夫だ。左手の路地から西に向かっていけば、まだ解放軍はいない。そこなら逃げ切れる、助かりたかったらすぐにいけ!」
「でも、仲間が!」
「もう死んでる。同じようになりたくなかったらすぐにいけ!早く!」
「は、はい」
3人は軍人の言う通りに左手の路地から西に向かって全速で走り逃げた。
軍人のいうとおり、戒厳部隊はおらず、皇大門広場を離れることができた。
その頃、
パァーン!!!
「いっ、いたいよう。おかあさん!! うぇーーん、うぇーーん」
偶然通りかかった地元の小学生の男の子の腹部に流れ弾が当たった。
市民が助けようとすると、薄という戒厳部隊の中尉の男が手当を拒んだ。
「おい、反対分子に近づくな。近づいたら殺すぞ!!」
その場にいた市民たちは凍り付いた。
少年は血を流し泣き叫んでいる。しかし薄が銃を構えており誰も助けることができない。
10分後、見かねた一人の老人が前に出た。
「大将、ほれ、ワシの身分証明書だ。左北党員で元教師じゃが、倒れているのは子どもで、救っても戒厳部隊に攻撃などしない。病院にはワシが連れていく。それならいいな」
「チッ、目障りだ。おまえだけでやれ!」
老人はふらつきながら、血だらけの少年を抱きかかえ、近くの病院へ連れ込み、そのおかげで少年は数日間手術を受け、なんとか一命をとりとめることができた。
やがて戒厳部隊の攻撃にデモ隊は逃げ出し、広場からいなくなった。軍隊による武器を持たない市民への無差別発砲というおぞましい事件が起きたのだった。
テレビやラジオでは皇大門で暴徒化した市民を戒厳部隊が平和的に静めて解散させたという事実と異なるニュースを流した。地方はともかく、王府市民の大半はそのニュースを信じなかった。
◎登場人物
孫 民主化リーダー 21 極央大法学部
玲 美人女神 21 法学部
翔 裏方 エンジニア 21 工学部
琳 マジメ博士女 21 文学部
薄 戒厳部隊中尉 38 心のないエリート
皇大門から運よく逃げられた連中は追手を交わすことができるのだろうか。