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紅雲  作者: Shane
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1話 嵐の前に

例年以上暑い夏に近代化の進む王府市であったが、政府の弾圧に市民の我慢は限界に達していた。最高学府の極央大の学生が中心でハンストなどの活動も効果なく、大規模な集会の必要性を感じていた4人の学生がいた。

龍国 王府市 8月


ブロロロローッ チンッ、 ピチョウッ!!


「あーあ、いっちゃった」


「お前が寄り道とかして遅いからだよ、まったく」


「だってひさしぶりに街に出たんだもん、いいじゃない!」


この春から運行しているトローリーバスに乗り遅れてしまった。街の近代化が進み、デパートもいくつもできてきていた。以前は自転車ばかりだったが車も増えてきた。


学生によるハンストも一時終わり、孫と玲は街の市場での買い物から帰った。


「おーっ、いろいろ買ったなぁ。まともな鶏肉なんかひさしぶりだよ。水だけの生活は辛かったから、ご褒美だな」


翔はおもちゃを買ってもらった子どものように無邪気に喜んだ。



「ごちそうだよね。私もきちんとした食事が摂れるのは嬉しいわ」


メンバーで最も小食な琳でさえ、喜びをあらわにした。


「私が腕によりをかけて美味しく作るからみんな楽しみにしててよ」


玲の言葉に、メンバーは笑顔になった。


龍国の首都である王府市では左北党の市民への弾圧が年々増すばかりで市民の我慢は限界に来ていた。これに龍国で最も難関の極央大の学生の一部が反旗を翻してハンガーストライキなどを行い、国と学生の対立状態が続いていた。


民主化をして欲しいと願う市民をなんとかしたいと活動する学生のグループがいくつかあり、孫をリーダーに、玲、翔、琳の4人も類まれな頭脳を活かして活動していて政府にもマークされていた。


極央大学のキャンパス内に壁新聞が張られていて、学生はそれを情報源にしていた。左北党の都合の良い記事しか書かない新聞を信用する人はほとんどいなかった。



「同じ肌の色をした鯨国の奴らは性能の良い車を作って乗り回し、ディスコとかいう踊場で毎晩踊って人生を謳歌してるのだとか。オレたち龍国は左北党に支配され、自由のない地獄のような日々だ。この差はなんだ? 資本主義のほうがいいんじゃないか」


「子どもの頃、左北党のおかげで社会主義は繁栄して市民の生活も裕福で、資本主義の国には市民の生活保障されず、ご飯もろくに食べれずに餓死する人がたくさんいると教わったけど、今ならわかる、ウソだよな」


「9月に結集だな。極央の学生に市民がつけば、かなりの数になる。さすがに党も我々の主張を無視できまい」「奴ら汚いから手段選ばす、俺ら逮捕されるかもしれないがひるまなければ、必ずやりきれるはずだ」




4人がキャンパスから少し離れたところにある商店の建物のアジトで毎晩議論が交わされていた。


ある日の夕方、孫と玲がアジトの部屋で話していた。


「決行は今度の日曜日か月曜日あたりかな」


「そうね。日曜日のほうがいいんじゃない」


「ああ、いよいよ歴史が変わる」


「怖い?」


「いや、楽しみだ」



沈黙で互いによそを見ていたが、しばらくして孫が玲の背中から抱きついた。


「ちょっ、なに」


「いいだろう」


「ダメよ、急に」


「させろよ!!」


「何その口の利き方、なんなのよ!」


「玲は娼婦みたいなモンだろう?」


「バッカじゃないの!! それを琳に言える?」


「それは無理だ。あいつはマジメだから興味ないだろう」


「じゃあ、わたしもマジメなお姫様っ!」


「ハッハッハッハッハッハッ」


「なにがおかしいの?」


「だって、マジメなお姫様って、なんだよ」


「えっ、あっ、やだ、何かしらね、わたし」


二人にとってひさしぶりの爆笑だった。



◎登場人物

孫 民主化リーダー 21 極央大法学部 

玲 美人女神 21 法学部

翔 裏方 エンジニア 21 工学部

琳 マジメ博士女 21 文学部

武器をもたない学生や市民に対して、鎮圧しようと戒厳部隊がとった歴史的な非道の行動とは。

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