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2話にアレクサンドラが薔薇姫と呼ばれているという記述を付け足しました。


それから、誤字を訂正致しました。


それからひと月程経ち、続いて学院の次の行事ブランディア学院祭が始まった。この行事は生徒達が催し物をしたり、外部から商人が店を出したりして一番盛り上がるイベントだ。三日間続く。


今年もクリスハルトは学院祭の運営に忙しくて、さすがにミリーのそばにはいなかった。ほっとしたアリシアはいつもの仲間達と出店を廻っていた。今日は最終日だ。メアリーはジルと、ミランダはエマの隣にいる。ミランダ、婚約者の方はどうしたの?普通、二人で廻ったりするだろうに。


それから、もうひとつ、アーデンとカールは一週間の謹慎になった。それぞれの家で説教を食らい、学院でも評判はがた落ちだ。そのアーデン、カール、ボビー三人でつるんでいるらしい。


よからぬことを考えてなければいいのだけれど…


そんなことを考えながら歩いていると、向こうからその三人が歩いて来るのが見えた。そして驚いたことにその真ん中にミリーがいたのである。三人を引き連れるようにミリーが歩いて来る。目の前に来るとアーデンが絡んで来た。


「お前達、あの時はひどい目に合わせてくれたな」


全く反省していないようだ。


「おかげで俺達は家でも学院でも散々な目にあった。お前達のせいだ。どうしてくれる」


その上言いがかりまで付けてくる。


「ご自分のせいでしょう?まだ絡んでくるのですか?」


ミランダが反撃している。


「アーデン様、あの時のことは終わったはずです。まだ、文句があるなら騎士科が受けて立ちますよ」


オリバーが前に立って言ってくれた。


「騎士科の上級生に向かってその態度はなんだ。オリバー、優勝したからっていい気になるなよ。生意気なんだよ」


今度はボビーが反撃してきた。面倒くさい人達に絡まれてしまった。


その時、ミリーは話の途中で駆け出した。


「クリスハルト様!ずっと捜してたんです」


と言って、駆け寄るミリーの先にはクリスハルトとアレクサンドラがいた。


アーデン達三人はクリスハルトを見るとそそくさと逃げていった。それと入れ替わるように、取り巻きの令嬢達が現れて、またもやミリーに対して口を開いた。


「あなた、いきなり何ですか?今日は第一王子殿下は生徒会のお仕事で、見廻りをされているのですよ。邪魔をしては駄目でしょう?」


「えーっ!初めての学院祭だからクリスハルト様に案内してもらおうと思ったのに… それに足もちょっと痛くて歩きづらいし」


「今走ってましたけど?怪我をしてからだいぶ日数も経ちましたし、もうとっくに治ってらっしゃるみたいでお世話も必要ないとお見受けしますが。それに第一王子殿下のお名前をお呼びするのは駄目だと、何度言えばわかるのかしら」


「走ってなんかいません!それにそこの人だってクリスハルト様の名前を呼んでるじゃないですか」


アレクサンドラを指差して言った。


「ア、アレクサンドラ様はいいのです。第一王子殿下とは幼少の頃からのお付き合いですし。なにしろ、婚約者筆頭候補だったのですから」


また、言い合いになってる。あーあ、また、私のせいになるのかな。にしても、未だに薔薇姫には逆らえないみたいね。気を遣ってか、彼女の前で私のこと絶対に婚約者って言わないし。


「言い合いはそれ位にして、せっかくの学院祭だ。楽しんだらどうだ」


クリスハルトが言葉を挟んだ。


「そうですわよ皆様。こんな所で大声を出して他の方々に迷惑ですわよ。ねぇ、アリシア様?」


アレクサンドラがまたもアリシアを見て言ってくる。


「ごめんなさ~い。だったらクリスハルト様、案内してください!」


ミリー、めげない子だ。


「わかった、わかった。このまま見廻りついでに一緒に廻ろう」


「本当に?ありがとうございます。クリスハルト様はやっぱりあたしに優しいですよね」


「アレクサンドラ、悪いが他の生徒会メンバーにそう伝えといてくれ」


そんな会話をして二人はそのまま歩いて行ってしまった。


アリシア達は気を取り直して、出店コーナーに来ていた。

いろんなお店があり見ているだけで楽しい。アクセサリー屋さんに入ってみた。部屋に置く飾り物や可愛いハンカチなんかも売っている。騎士科のみんなは、革製品のコーナーで防具入れや、ベルトなどを見ている。アリシアはブローチを購入した。その後アリシア達は、食事コーナーにやってきた。ここでは町の屋台を体験できる。アリシアはクレープを頼んでみた。


「美味しい!このストロベリークレープ!初めて食べましたわ」


「本当ですね。クリームとも相性抜群だわ」


オリバー達は串に刺さった食べ物をそのまま食べている。


みんなで楽しく食べていると、


「ちょっと、どうしてくれるのよ!」


と声が聞こえてきた。声の方に行ってみると制服ではなく何だかドレスの様なワンピースを来ている娘が喚いていた。


「ご、ごめんなさい。わ、わざとじゃないのよ」


見るとデボラが震えて謝っていた。


「うそ言いなさいよ。あなたコップを持ってわざとかけてきたじゃない?あの娘に」


ワンピースを着た娘の指した先にはミリーがいた。


「そ、それは、頼まれたから… 」


「頼まれたからって誰に?あなた頼まれたら、こんなことするの?おかしいわよ。そんなことより、この衣装はこれから劇で使うのよ。どうしてくれるの」


そこにクリスハルトがやってきた。


「ミリー、こんな所にいたのか?先生方と話している間にいなくなって探したぞ。どうしたんだ。この騒ぎは何だ」


「クリスハルト様、はぐれてしまい申し訳ありませんでした。何だか懐かしくなって、出店に立ち寄ってしまいました。そしたらこの人達が揉め出して……」


ミリーがクリスハルトの所に駆け寄った。そこにアレクサンドラが来て、


「どうしたのです、アリシア様。デボラは貴方の懇意の方じゃありませんか?何か問題でも起こしたのですか」


まだ何も言わないうちから私のせいになってるよ。


「え、ええ、それが間違えてこちらの方にオレンジジュースを掛けてしまって‥」


デボラはしどろもどろに答えた。推察するにミリーにオレンジジュースをかけるつもりが、二人の間を通ろうとしたこの女の子にかけてしまったらしい。


「間違えたって何よ。あなた達やっぱりおかしいわよ。それより、衣装よ。元々色が付いているからこのままでいいと思って食べに来たら、こんな目に遭って、ああ、どうしよう。団長に怒られる」


見ればワンピースは模様かと思ったら、紫色の染みが大きく付いている。スカート部分のその上からオレンジ色の汚れが付着している。


「新しい衣装になる服を持って来させよう」


クリスハルトがそう提言すると


「第一王子殿下!?いらっしゃるとは思わなくて。え?新しい衣装ですか?とてもありがたいのですが、この衣装は対になってまして、染みがない衣装からこの衣装に早着替えをするのです。それに時間が余りありませんので‥」


せっかくクリスハルトが提言してくれたが、それでは

駄目らしい。


ミリーにジュースをかけるなんて、かなりひどい苛めにエスカレートしているわ。しかもそれが他の人の大事な衣装を汚してしまうなんて。でも知らない内にされたことだし防ぎようがないわ。だからと言って、このままではこの人や劇団に迷惑がかかってしまう。どうしよう。


「アリシア様、前にわたくしの前で仰られたこと、覚えておいでですか?最初は思惑があって近づく人とも信頼を築くのは自分次第だって。ですから、知らないでは通りませんわよ。今それを証明して見せてくださいませ」


アレクサンドラがアリシアに辛辣に言ってくる。


そうだった。あんな風に本のセリフを受け売りして言ってしまうんじゃなかった。あの時はアレクサンドラ達を撃退させる為に言っただけなのに。


その時メアリーが口を挟んだ。


「そのオレンジ色の染みなら今の内に目立たなくする事ができますよ」


アリシア達が勢いよく振り向いてメアリーを見た。


「ええ?そんなことできますの?」


それに少し怖じ気づいたようだが


「何か布を挟んでとんとんと叩いたら、ある程度目立たなくできますわ」


と進言した。


「ありがとうメアリー。あなたは救世主だわ。布を用意しないと……」


ここでメアリーの家事スキルが役に立つなんて。


「ハンカチならさっきのアクセサリー屋さんにいっぱい売ってありましたわ。私とエマが買ってきますわ」


ミランダが言ってくれた。隣でエマもうなずいている。


「わかりました。お願いしますわ。お金は後で払いますわ」


アリシアは今度は劇団員の方を向いて言った。


「劇団員様、今回の事は申し訳ございませんでした。お詫びは後日させて頂きたいと思いますが、今はこの衣装を何とかしたいと思いますので、その劇団の所に案内していただけませんか?」


「わかりました。講堂の控え室です」


「ミランダ、エマ、ハンカチをお願いしますわ」


「わかりましたわ。後からすぐに行きます」


「俺たちも一緒に行くよ。何か手伝えることがあるかもしれないし」


「オリバー、一緒に行ってくれるの?ありがとう。騎士科の皆様もありがとうございます。クリスハルト様、急いでいますので失礼致します。デボラ様、あなたも一緒に行きますわよ」


「は、はい」



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