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25


新年度になりアリシア達は学年がひとつ上がった。

ある教室で隣同士、机をくっつけてひとつの教科書を見ている二人がいた。手はずっと繋がれている。


「あ、あのクリスハルト様、これではノートが書けません」


「え?この時間は僕がノートを取る番だよ。大丈夫、ちゃんとまとめているから」


本当はノートなど取らなくても二人は困らないのだが、


「それとクリスって呼んでって言ったよね」


「ク、クリス様、それに、あの少しお顔が近いようですが」


「ふふっ。アリシアの顔が可愛いから近くで見たいんだ」


バカップルの誕生である。毎日この調子だ。


「君のノートに書いてあった。青春の1ページ。僕と机をくっつけて一緒に教科書を見たり、手が触れあったりしたいって。だから、手はずっと繋いでおくよ」


それって、たまに机をくっつけたり、手がちょっと触れあったりして、甘酸っぱい思いを感じるものじゃないの?


アリシアはこの2年で、普通に羞恥心が芽生えたが、クリスハルトの方は逆に拗らせてしまったようだ。


講師も生徒も何も言わない。相手が第一王子殿下とその婚約者だからだ。この国の王に次ぐ最高位のカップルだ。言える訳がない。


お昼休憩は、アリシアを膝の上に乗せようとした。


「昔は、アリシアの方から膝の上に乗ってきたのに」


「子供の時の事は忘れて下さい」


「うーん。忘れられないな。このノートに記されているし」


「そのノート、早く返して下さい」


「2巻目、期待してるよ」


「そんなのありません!! 」


クリスハルトは生徒会を辞めた。これからアリシアと一緒にいる時間を増やす為である。妹の王女が入学してきて、

生徒会に( 無理やり )入れて、生徒会は王族がメンバーになるという暗黙の了解をクリアした。生徒会長はあの側近だ。本当はアレクサンドラが生徒会長で、王女を補佐するはずだったが、もう無理だ。二人でひいひい言いながら、生徒会の仕事をしている。


「お兄様は鬼畜です。優秀なお兄様だから、できていたのです。わたくしには無理ですわ。代わって下さい」


「無理だな。私の生徒会の年数はクリア済だ。後は2年後の弟の入学迄、頑張るんだ」


「…2年後…」


王女と側近は去って行った。


「そうだ、あの二人は婚約するよ」


「え?そうなのですか?」


「そうだ。二人で生徒会の仕事をしてるんだ。僕の時とは大違いだ。楽しそうで羨ましい限りだよ」


側近、名前を知らないけど文官のエリートですって。けっこう優秀なのね。


それから、メアリーも騎士科のジルと婚約した。そして

メアリーには卒業後、アリシアの侍女として、一緒に王宮に上がってもらうことにした。


「アリシア様、ありがとうございます!心を尽くして、お勤めさせてもらいます」


「ありがとう、メアリー。私もあなたがいて心強いわ」


信頼できる友達がずっと一緒にいるのは嬉しい限りだ。


ミランダはエマと相変わらず仲がいい。最近はミランダの婚約者もお昼休みに来て、みんなで剣のけいこをしている。良かった。変な風にならなくて・・と、思っていたら。

オリバーはジュリアが婚約者になってから、人気が落ち着いた。その代わりエマは剣術大会とあの劇に出てから人気がうなぎ登りだ。特に令嬢に。


「なんだよ。オリバーが婚約して、俺たちにようやく順番が廻ってきたと思っていたら、今度はエマかよ。どういうことだよ。いつになったら俺達の番が来るんだ」


ミランダはエマに近づく令嬢をけちらかしているらしい。


「エマは駄目です。私が一番最初に目をつけたのですから。え?ファンクラブの名誉会長?そういうことでしたら喜んで」


本当にどういうことだ。


ある日、団長がアリシアに告げてきた。


「次の演目が決まったぞ。完全なオリジナルだ。題名も

もう決まっている」


デボラは劇団員になっている。他の令嬢達には断られたそうだ。


「え?何て言う題名ですか?」


「平凡な令嬢は悪役令嬢になれなかった」


「‥‥」


「さあ、脚本をこれから書くぞ!アリシア、あの断罪劇の事を詳しく聞かせてくれ」


「絶対に嫌です!! 」


ミリーの事をアリシアはやっぱり、クリスハルトに陳情していた。ついでにアレクサンドラも。二人の行き先を孤児院と併設の教会の緩い修道院に変えてもらった。そこで10年勤めたら、出て行ってもよし、残ってもよし、ということにした。但し、王都には二度と入ってはいけない。


あの娘は私の事を可愛いと言ってたしね。アレクサンドラも生徒会の事が何だか可哀想になってしまったし。


それから、クリスハルトとアリシアは王と王妃に呼び出された。堅苦しいものではなく、私室でお茶を飲みながら。


「アリシア嬢、良くやった。あの厄介者の息子達を全部

処分してくれた」


「本当ですわ。アレクサンドラの母親のリーネル家の公爵夫人は、いつも娘を王子の婚約者にしろとうるさかったのです。ごめんなさいね。親戚のごたごたに巻き込んでしまって」


「いいえ。とんでもございません」


「それから、アリシアさん、お茶会でのあなたの評判も上々ですわ。礼儀も所作も完璧ですって。わたくしも鼻が高いわ」


アリシアはハンナの忠告で貴族のお茶会に出席しなければならなくなった。しかし周りの心配をよそにアリシアは礼儀も所作も完璧だ。何年王子とお茶会をしてきたと思っているのか。


「それに学業も優秀だと褒めていたわよ。特に詩の造詣が深いと。一度聞かせてね」


それから成績もあがった。現在、3位である。1位はクリスハルト、2位は側近だ。苦手だった詩の授業で、アリシアが例のノートに書き留めていた詩をクリスハルトが勝手に提出したのである。いつも恥ずかしくて、適当に作った詩を提出していた。今回勝手に提出された詩が講師にいたく感動され、皆の前で、朗読させられた時はまだ断罪のシーンの方が良かったと思った。


「はい、母上、アリシアの詩はとても感動致します。是非に聞いて頂きたい」


アリシアがクリスハルトを睨んだ。


「まあ、仲が宜しいことで」


「おほほほ‥」


「それからアリシア嬢よ、今回はすまなかった。この様な事態になってしまって」


王とて本気でアリシアを王太子妃から降ろそうとは思っていなかった。二人は学院に入ったら、ずっとくっついているに違いない、それではアリシアは人間関係が構築できないのではないかという王妃教育担当のハンナ女史からの進言で、クリスハルトにアリシアから離れるように命じたのである。ただ、きつく言っておかないと絶対にアリシアのそばにいようとするし、過分に守ろうとして行き過ぎてしまうのが目に見えていた。今の二人がいい例である。


「いいえ。全てはわたくしが立派な王太子妃になる為とわかっております。陛下にはわたくしの事をその様に案じて頂いて感謝しております」


「ははは。そうか。それなら良かった。ところでクリスハルトよ。そなた、学院でアリシア嬢に過分にくっついて、周りの迷惑になっているらしいな。アリシア嬢も困っていると聞いた。程々にしたらどうだ?」


「いいえ。決してその様なことは‥‥」


「言い訳はいい!それに生徒会も辞めて妹の王女に押し付けたと聞いている。アリシア嬢に張り付くのもいいが、少しは王女を助けてやったらどうだ!! 」


「はっ!陛下のおっしゃられる通り、少し自粛して生徒会も手伝い、妹の助けになります」


今度はクリスハルトがアリシアを睨んだ。


「後少ししたら、クリスハルトの立太子と、そなた達の婚約式がある。とても立派な式にするつもりだ。その後の舞踏会もな。そなた達のデビュタントも兼ねている。心して準備するように」


「本当に。わたくしも待ち遠しく思っていますのよ」


「はいっ。お二方に恥じることがないように立派に務め上げてみせます」


アリシアは勢い良く答えた。


「はははは。いい心意気だ。楽しみにしているぞ」





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