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「もう、約束の2年も過ぎた、これからはまた一緒にいられるよ」


入学した当初、裏庭で友達二人と楽しそうにお弁当を食べているアリシアを見てほっとした。


「君にも友達ができた。楽しそうに過ごしていて、僕も嬉しかった」


「でも、君がオリバー達と過ごす様になって、気になって仕方がなかったんだ」


二人は幼馴染みだ。気心が知れているのか、本当に仲が良さそうだ。アリシアはオリバーといるといつも笑っている


僕を忘れて。僕なんか、生徒会のメンバーの男ばかりに

囲まれて過ごしているというのに。( アレクサンドラのことは忘れてるらしい )


などと心の叫びをしていた。学院祭の時もそうだ。アリシアは仲間達と楽しそうにしていた。それはいい。オリバーさえいなかったら。僕は見廻りでいつもの喧騒と、いつもの二人に付き合っている。そこに、劇団員の衣装がミリーの代わりに、ジュースで汚れてしまった事件が起こった。アリシアはてきぱきと指示をして、オリバー達を連れて行ってしまった。


「あの時も、僕は何もできなかった。何も守れない。それでどうなったか、劇を観に行った。君は優秀だよ。ちゃんと解決させていたんだね。仲間達も君の為に協力を惜しまなかった」


それがどれだけ凄い事かわかる。アリシアは仲間の信頼を得ていた。


「ええ。でも、クリスハルト様は先にハンカチを買って、手配してくれてましたわ。後からお店の人に聞いて知ったのです。あの時は焦っていて、お金のことまで気が回らなかったので、助かりました」


クリスハルト様はちゃんと守ってくれていた。


「できたのはそれ位だよ。それで安心して劇を観ていると君が出演していたから驚いた。でもそれよりももっと驚いたことがある。君が赤いリボンをしていたんだ」


「あのリボンは劇の時に目印につけていて、記念にもらいました。移動の時に教科書を束ねるのに使っていました。だって、髪にはクリスハルト様からもらったリボンをつけていますから」


そうだったんだ!あの時は剣術大会で優勝したオリバーからもらったものだと思ってしまった。アリシアがオリバーに近寄る令嬢を蹴散らしていたと聞いていたし、オリバーのリボンの行き先も気になっていた。


「それを聞いて安心したよ」


「まさかオリバーからもらったと思っていたのですか?」


「悪かった。無理矢理奪ってしまって。ここに返すよ」


クリスハルトは生徒会長の机まで行き、引き出しからあの赤いリボンを取り出してアリシアに返した。


そんな時、アリシアとオリバーが授業中に二人きりでいるとクラスに来たボビーから言われた。慌てて駆けつけると、二人は親密そうに話している。オリバーがアリシアの髪を撫でている。それを見て、頭に血が昇った。今まで我慢していたが今日という今日は我慢できない。クリスハルトは怒りを爆発させて、怒鳴り、アリシアを、連れ出したのである。


「あの時もごめん。怒鳴ったりして。本当はオリバーは君の妹ジュリアの事が好きだったんだね」


オリバーは昔から、妹、ジュリアが好きだった。それを利用して、いろいろ頼み事をしていた。手作りの試食とか。ひどい出来だから、オリバーに無理矢理試食してもらっていた。それから、ジュリアもオリバーが好きみたいで、悪い虫が付かないように頼まれていたのだ。確かに一緒にいて気が楽で笑い合っていたけど、姉弟と同じだ。


クリスハルトにそのことを黙っていたのは、アリシア達の両親がジュリアとオリバーの婚約をまだ早いと言って反対していたことだ。その原因がアリシアとクリスハルトの急に決まった婚約だ。婚約した日からアリシアはずっと王妃教育で王室に通いづめだ。それで妹のジュリアだけでも、できるだけ長く手元に置きたかったらしい。クリスハルトは王妃教育のことで負い目を感じているようなので、言えなかった。


「それに君は勘違いしている。僕の初恋は誰でもなく、アリシア、君なんだよ」


「ええっ?」


「知ってると思っていたよ。あのお茶会の時からずっと

君が好きだった。リスみたいで可愛いなって、くるりとした大きな瞳と、艶やかな栗色の綺麗な髪、黄色いリボンがとても似合っていた」


黄色い髪ではなくて、黄色い髪につけたリボンね。勘違いをしていたわ。そういえば、誕生日には毎年黄色いリボンが贈られていたわ。


クリスハルトは自分の金髪を黄色に見立てて贈っていた。ちなみに髪飾りは青いサファイアでもちろん彼の目の色だ

アリシアは気づいていないようだが。


それから側近との会話で


『あのミリーって子、オブライエン嬢に少し似ていて可愛いですね。守ってあげたくなる、というか離したくなくなるというか』


『そうか?アリシアの方が何倍も可愛いし、守ってあげたくなるのも、離したくないのもアリシアだけだ』


そう会話していたのをどこでどう間違ったのかミリーの事をそう思っていると言う話になっていた。


アリシアは勘違いとわかってほっとした。


「だからお茶会からすぐに君の家のオブライエン家に婚約の申し込みをしたんだ。でも、難色を示された」


「ごめんなさい。だって相手が誰かわからなかったから」


「そうだったんだ。無理やり婚約を結んだとばかり思っていたから。しかも何年もの王妃教育で君を縛ってしまった」


「無理やりではありません。私だってクリスハルト様が初恋なんですから… 」


アリシアは恥ずかしくなって真っ赤になってうつむいてしまった。


クリスハルトはふふと笑って、続けた。


「それから君はクッキーと一緒にこれも忘れて行ったんだ」


クリスハルトが胸のタイを手に載せて見せてきた。アリシアがタイをよく見ると、刺繍がしてある。アリシアが誕生日プレゼントにと、タイに刺した刺繍だ。


「誕生日プレゼント、ありがとうアリシア」


「ええっ?」


気がつかなかった。私って本当にクリスハルト様のことを見てないんだわ。指摘されるはずだ。


「それからハンカチも大事にして、いつも身に付けているよ。でも、使うハンカチは違うものだ。ミリーの足に当てたハンカチは、妹が刺繍したものだ。似てるけど、アリシアとは別のものだ。それもノートに書いてあったから訂正させてもらうよ」


ハンカチの刺繍は王宮の刺繍の先生からもらった、モチーフを元にして刺しているのだ。王女の刺繍したハンカチと似ていて見間違えたのだ。


そんなところまで読んでるなんて。お願いだから、早く返してほしい。


「アリシア …君が好きだよ」


クリスハルトが急に距離を詰めてきた。アリシアの手を取り、瞳を見つめて言った。青い瞳。初めて会った時の空と同じ色。アリシアが一目惚れしたあの時と同じ。


「だから、これからもずっと僕の隣にいてほしい」


え…え…なんなの?この展開…恥ずかしすぎて無理かも


「アリシア、返事を聞かせて?」


クリスハルトが更にアリシアに近付いた。顔が触れそうになる。近い、近い、どうしたらいいの?


「はい…」


消え入りそうな声で返事した。クリスハルトはにっこり笑って、アリシアの頭の後ろに手を回して、そのままくちびるにキスをした。


!!


急なことにアリシアは驚いた。手をクリスハルトの胸に当て力一杯押した。でも、びくともしない。息ができない。今度は胸を叩いた。クリスハルトがようやく離れてくれた。


「はぁはぁ」


息を整えていると、又、クリスハルトが近付いてきた。


「鼻で息をして、アリシア」


そう言いながら、二度目の口づけをしてきた。優しいキス。


唇を離して、おでこをくっつけて見つめ合った。そのまままた、口づけをしようとした、その時、


トントンというノックの音がした。


「殿下、宜しいでしょうか」


「何だ。用はない。帰れ」


「入りますよ」


と言って、ガチャガチャと音がしてドアが開いた。側近が入って来た。


「ちっ!」


クリスハルトが舌打ちした。


「おや、お邪魔でしたか」


アリシアは顔を真っ赤にしてうつむいている。


「何の用だ。休みじゃないのか」


クリスハルトが不機嫌に聞いた。


「いえ、あの5人の処分が決まりましたのでご報告を」


「アリシア様、説明をさせていただいてよろしいですか」


側近がアリシアに尋ねた。


「はい…」


アリシアは羞恥心に、小さい声で返事した。


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