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そうすれば、やっぱりわたくしが次の婚約者に選ばれるのです。結婚相手に見られないとか仰ってますが、王家の婚姻に政略結婚なんて当たり前。恋情なんて後からどうとでもなりますわ。わたくし程クリスハルト様の婚約者にふさわしい者はいませんもの。


アレクサンドラはほくそ笑みながら思いを巡らせていた。すると急に、


「発言を宜しいでしょうか」


一人の令嬢が割って入り、手を挙げて側近に発言の許可を求めた。


「はい。何でしょう。デボラ・ヨーク嬢。あなたは取り巻きのひとりでしたね」


学院を辞めるはずのデボラが話し始めた。


「発言の許可を認めて頂きありがとうございます。先程のミリー様に対する数々の嫌がらせはアリシア様から指示されたものではないのです」


「デボラ様、何を言い出すの?あなた、アリシア様と懇意になったんじゃないの?庇おうったってそうはいきませんわよ」


アレクサンドラのきつい言い様にデボラはびくっとして縮こまった。


「デボラ様、お止めになって。何も言わずにみんなの所に戻って、お願いしますわ」


アリシアもデボラに向かって懇願した。


デボラは首を振って、アリシアを見た。そして、背筋を伸ばして隠していたことを今こそ言おうと思った。


あの日、団長に連れられて来て令嬢達と話をしたのは

もちろん劇団員スカウトの事ではなかった。


『デボラ様、学院を辞めると聞きましたが、逃げるおつもりですか?』


『そうですわ。私達はアレクサンドラ様の口車に乗せられて、気に入らないミリーに誹謗中傷などをしてきました。それをアリシア様のせいにできると』


『アリシア様はせっかく取り巻きになったのに、何も恩恵がなかったのですもの。騎士科の令息とも繋がりが持てると思ったのに、逆に阻止される始末ですし、それにアレクサンドラ様と懇意にも戻れますし』


『今から思えば逆恨みだったかしらと後悔してますけど、

デボラ様だけ、アリシア様に謝罪して打ち解けていたのにはびっくり致しました』


『それでデボラ様には詰めよりましたわね。アレクサンドラ様からは脅されて、ミリーに対しての嫌がらせがエスカレートしていってるのに』


『わ、私はそんなつもりではなくて……』


『ええ。わかっております。デボラ様はアレクサンドラ様から私達を庇ってひとりだけ学院を辞められるのですね』


『ですから、私達は一致団結してアレクサンドラ様に対抗しようと思いますの。デボラ様も逃げられませんわよ』


『え?どういうこと?』


『そういうことですわ。確かに、第一王子殿下の婚約者に対してこんなことをしていたとわかれば、それなりの処罰はありますけど、それも覚悟の上ですわ。ですから、デボラ様も学院を辞めないで下さいね』


アリシアは令嬢の一人から事情を聞き、この集まりを計画して、団長達に協力してもらったのである。団長達はデボラの為と聞き、快く引き受けてくれた。


私はあなた達を責めないわ。あなた達の事を考えずに

行動していた私にも非があるのだし。これでは王太子妃としては失格ね。何かあれば責任は私が持ちますわ。


そうアリシアは言っていたとその令嬢は言った。


みんなで良かった、お互いにありがとうと言い合った。


これが事の次第である。デボラはアレクサンドラから指示されてミリーに嫌がらせをしていたこと。それをアリシアのせいにしていたこと。それには自分達の意志もあったことを伝えた。


「全てお話した通りです。アリシア様には本当に感謝しています。先程もわたくし達を庇って責任を取ると言って頂き、未来の王妃様にふさわしいお方だと思います。どうかアリシア様が無実だと証明してくださいませ。わたくしはどんな処罰も受ける覚悟です。それでは発言を終了致します」


デボラはカーテシーをして下がった。


「ありがとう、私達を代表して言って頂いて」


「でも、良かったのですか?私達も処罰の対象になってしまいました」


「ええ。今しがた皆で相談したではありませんか。これで良かったのです。胸のつかえが取れました」


令嬢達と手を取り合っている。


「デボラ、偉いぞ。よく勇気を出して真実を言った。なかなかできることじゃない。頑張ったな」


団長がデボラに声をかけていた。


周りの生徒の様子もデボラの発言によって変わった。


なんだ、二転三転しているぞ。結局、アレクサンドラ様の

指示だったのか?

そういえば学院祭のジュース事件は知っているわ。

そういう事だったのね。


「デボラ様は嘘を申しておりますわ。わたくしは何の指示もしておりません」


アレクサンドラはデボラの発言にかなり動揺した。

想定外だ。絶対デボラは何も言わずに学院を去ると思っていたのだ。本当の事を言う勇気なんてあるわけがないと。


それと共にアーデンも唇を噛み締めた。


何だか、旗色が悪くなってきたぞ。これではアリシアが

いい奴でアレクサンドラが影でこそこそと指示したと印象付けてしまう。


ミランダ達もこれでアリシアの無実が証明されてこの断罪から解放されると喜んでいた、が、


その時、今度は近衛師団長の息子、ボビーが発言の許しを申し出た。


「何だ。言ってみろ」


「はい!アリシア・オブライエン嬢には不貞を働いている疑惑があります。騎士科のオリバー・ジェイロンとの浮気疑惑です。オブライエン嬢はクリスハルト殿下の婚約者でありながら、オリバーと公然と二人きりで親密にしております。由々しきことです!」


「ちょっと何でここにオリバーの名前が出てくるのよ。オリバーにいつも敵わなくて恨みがあるからって、おかしなことを言い出さないで!」


又も、ミランダ達が庇ってくれる。そこに何故かミリーが

口を挟んだ。


「そのアリシアって子はあたしに質問してきたのよ。どうやって男の人と話ができるかって。クリスハルト様の婚約者なのに相手にされてないからだと思ったけど、他の男の人のことだったのかしら」


やっぱり、この本当の婚約者のアリシアって子が一番のライバルなんだわ。だってこの子はアレクサンドラと真逆のあたしに似た、小動物のような可愛さがあるんだもの。きっとクリスハルト様のタイプだ。だからこの子を陥れる為に証言を変えたのよ。


クリスハルトが冷たい怒気を含んだ低い声で遮った。


「オリバーとの事は知っている。だからアリシアとの婚約のことを見直そうと思っている」


「殿下…!それは考え直して下さい。この婚約は王家とオブライエン家との契約です。そう、易々と変更できません」


側近が青い顔で進言したが、クリスハルトは無視して叫んだ。


「オリバー・ジェイロンを呼べ!」



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