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「誰って、ここにいるのがアリシア・オブライエンだが?

ミリーに悪行を重ねた」


「何を言ってるの!こんな取り巻きの下っ端に用はないわ。あたしは、クリスハルト様の婚約者に、いじめられたの!」


「だから、ここにいる、アリシア・オブライエンが、殿下の婚約者だが?」


「ええ?何とぼけたこと言ってるの。こんな地味で普通の子が婚約者な訳ないじゃない。またまた~。アレクサンドラ様を庇おうなんて許さないから。本人でなければ取り巻きがやったに決まってるでしょ。いつもの上品ぶった笑いで、後ろに隠れていたに違いないわ。あたしはそんな奴は嫌いなの。早く彼女を呼んで、断罪してちょうだい」


「もしかして、もしかしてだが、殿下の婚約者はアレクサンドラだと思っているのか?」


アーデン達三人は焦った。ミリーは何を勘違いしているのだ。


「ええ、そうよ。ってみんなどうしたの?」


皆、驚き、呆れ返っている。


「ミリーよ。何を勘違いしているのだ。アレクサンドラは殿下の婚約者ではない」


「えっ?うそっ?だって、クリスハルト様が言ってたのよ、婚約者はアリーだって。アレクサンドラ様の略称はアリーでしょう?いつも二人で一緒に生徒会の仕事してたし。

えっ?婚約者筆頭候補?同じようなものでしょ」


ミリーの妙な名前の略称の知識や、アレクサンドラの自分が婚約者にふさわしいとした振る舞いのせいで、勘違いを生んだらしい。

それに周りの生徒は反応した。


え?どういうこと?ミリー様はアレクサンドラ様に苛められてたの?裏で取り巻き達を使って、アリシア様に罪をかぶせようとしたの?何て卑怯なんだ。薔薇姫の名が泣くぞ。


「アーデン様、ミリー様を苛めていたのはアリシア様ではないみたいですね。とんだ茶番劇ですわ」


ミランダがアーデンに言った。


「アレクサンドラ・リーネル嬢を連れて参りました」


そこにアレクサンドラがいつもの側近に連れて来られて、アリシアの隣に立った。


すかさずミリーが言い放った。


「そうよ。この人よ。アレクサンドラ様にひどいことされたのよ。早く断罪して下さい」


側近め、わざわざアレクサンドラを連れて来るなんて、余計な事をしやがって。いけない、このままではアリシアではなく、アレクサンドラが断罪されてしまう。


アーデンは焦っていた。


呼び出されたアレクサンドラはいつもの優雅な態度でミリーの言葉にこともなく言い返した。


「どうして、わたくしが断罪されるのですか?断罪すべきなのはアリシア様でしょう?」


「それはアレクサンドラ様は取り巻きに言わせて、後ろでニヤニヤ笑ってるだけですから。最後に取り巻きの下っ端のせいにしてたわ」


ぷぷっ。ニヤニヤって。


生徒達の中に吹き出す者がいた。


「何ですか?その言い様は?わたくしは薔薇姫と呼ばれ、微笑みを湛えた優雅な佇まいと言われてるのですよ。それに中傷をしていたのは、アリシア様の懇意の取り巻きご令嬢の方々ですわ。わたくしはクリスハルト様の婚約者でもありませんし」


アレクサンドラが顔を赤くして叫んだ。


薔薇姫って自分で言うものなの?


冷笑している声も聞こえてきた。


「え?本当にアレクサンドラ様はクリスハルト様の婚約者ではないの?アリシアって…前にいるその子が婚約者なの?それであたしを苛めていた令嬢達もアリシアって子の取り巻きなの?」


「ミリー様が勘違いをするのもわかりますわ。アリシア様はご自分の取り巻きのご令嬢達に中傷させている間、全く関係がないと言う態度でいましたもの。わたくしが仕方なくご令嬢達に注意をしていたのです。それがまるでわたくしが令嬢達に言わせているように仕向けていたと思われるとは思いも寄りませんでした」


アレクサンドラはいつもの調子を取り戻したようだ。

淀みなく反論した。


「アリシア、貴様はミリーに悪事を重ねただけでなく、アレクサンドラに罪を着せようとしていたのだな。何て非道な奴だ。人の心があるのか!こんな奴が将来、王を支え、国も担う王妃になるとは信じられない。国の未来の為にも、貴様を断罪するぞ!」


アーデンがアリシアに向けて狡猾な顔で言った。


周りの生徒はアリシアに対して不穏な眼差しを向け始めていた。


アレクサンドラ様ではなくアリシア様こそが裏で取り巻きに悪事をさせていたってこと?

ミリー様に勘違いをさせて、アレクサンドラ様が裏で悪事を指示していたかのように、思わせたって言うこと?

平凡な令嬢に見えるけど相当ひどい奴だ。


「どういう事?何でアリシア様が悪者になってるの」


ミランダ達は不穏な空気にどういうことか訳が分からなくなっていた。


「取り巻きの令嬢達がミリーに対して行った悪事は、全てわたくしが責任を取ります。彼女達の言葉や行為は、わたくしが指示したことです。直接、ミリーに忠告する事もせずに彼女達に悪事を任せる結果になってしまいました。卑怯な事をしたと後悔しています」


何と、ここでアリシアは悪事をしたと認める発言をした。


「アリシア様、急に何を言い出すのですか?そんなことを認めてはなりません!」


「ようやく認めたな。では貴様を断罪し、婚約も破棄させてやる!」


ミリーが勘違いをした時はどうなるかと思ったが、それを逆手に取ってアリシアを追い詰めることができた。


ふん。何をいい子ちゃんぶっているのかしら。罪を認めたのは、デボラ達が仕掛けていた学院祭迄の軽いもので、断罪までいかないと思っていらっしゃるようですが、甘いですわ。これで全部の悪事があなたのせいになるのよ。

取り巻きの令嬢位、従順にさせとくべきだったわね。あなたが何事に対してもスルーするからこういう事態になるのよ。今まで、お茶会もせずに、裏庭に引っ込んで他の貴族の子息達と繋がりを持たなかったつけが回って来ているのですわ。早く断罪されればいいのよ。


アレクサンドラはほくそ笑んだ。

その時、ミリーが思い出した様に呟いた。


「そういえば、あなたどこかで見覚えがあるわ。あ!思い出した。あたしのモテテクを盗もうとした子ね」


「ミリー、思い出したか!アリシアめ!又何かを盗んだな。ミリー何を盗まれた。言ってみろ」


「物じゃなくて、モテテ…い、いえ…何でもないです」


ミリーは何かを考え込んでいる。


「ところでミリー・ダウリー嬢、あなたは噴水や階段から落とされた時、犯人を見ましたか?」


側近がミリーに尋ねた。


「はい。はっきりとは見てないですが、茶色い髪の毛の女の子だったと思います。そういえばアリシア様……に似ていたような…ええ。はっきり見たわけではありませんが」


ミリーが急にアリシアが犯人のような証言をして来た。


ミリーがちゃんと思惑通りの証言をしたのでアーデンは安堵した。


ミリーの証言はそれで充分だ。 周りの目撃情報もある。何故アリシアがうろうろしていたのかは謎だが、自ら目撃されにきたようなものだ。愚か者め。


その時、アリシアが手を挙げて側近に発言の許しを求めた。


「はい。アリシア・オブライエン嬢、まだ何かありますか?」


「はい。あの、その捨てられていた教科書を見せて欲しいのですが」


それには又、アーデンが大声で叫んだ。


「証拠品の教科書を見たいだと?今度は証拠隠滅でもするつもりか。やっぱり貴様が犯人だ。罪人、アリシア。貴様は王太子妃にはなれない。今ここで婚約も解消すると宣言しろ」


「わたくしはクリスハルト様の婚約者です。ですからクリスハルト様から直接言われたことしか信じませんわ」


アーデンがうるさくて、この便利なセリフを言ってみた。

これで乗り切ろうかしら。






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