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次の日の放課後アリシアは、ヒロインことミリーの後をこっそりつけた。敵をよく知る為である。クリスハルトは学院を休んでいて丁度良かった。1人になったら聞いてみたいことがある。でも、ミリーは中々一人にならない。今はあの宰相の息子のアーデンとイチャイチャしている。


ミリーってすごいわ。アーデンと仲良くできる女の子なんていないと思っていた。


アリシアは見つからないように隠れた。二人でこそこそ話をしている。そしてアーデンは一人歩いてどこかに行った。


今が話しかけるチャンスだ!


と思ったら、あの近衛師団長の息子ボビーがやって来た。アリシアはまたもや隠れた。二人で何かを笑い合っているボビーは訓練が始まると言い、どこかに行った。


さあ、次こそチャンスだ!


と思ったら、今度はあの学院長の息子、カールがミリーに話し掛けてきた。何か勉強でも教えてるのか、二人で本を開いていたがキャッキャと勉強してる様子がない。今度はミリーが用事があると言って離れて行った。そうして、ミリーは次々、出会った男の子としゃべっている。


男の子に記号でも付けようかしら。アーデンがA、ボビーがB、カールがCでしょ。それから…そんなこんなでアルファベットZまで行ったらどうしよう。


と思っていたが、Jで終わったミリーが突然振り向いて、ぶつかってきたのである。


「痛いじゃないの!本当に怪我をするところだったわ」


「ごめんなさい」


「気をつけてよ!怪我をしたらクリスハルト様に言いつけちゃうから」


「クリスハルト様?あの第一王子殿下ですか?殿下と仲がいいのですか。うらやましいですわ」


やっぱり私の事は覚えていないようで、認識してないみたいだ。少しショックだ。


「ええ、そうよ。ずっとそばにいて、どこに行くのも一緒よ」


ミリーは自慢気に言ったが、急に顔が険しくなった。


「もしかしたら、あんたも、忠告しに来たの?クリスハルト様に近づくなとか、なんとか」


「え?違います」


「え?違うの?あの取り巻きの連中じゃないの?」


「い、いいえ、あの私引っ込み思案で、どうやって男の方としゃべったらいいのかと考え、ミリー様を見て、教えを乞おうと思い、話しかけるチャンスを窺っていたのです」


アリシアは中傷ではなく違う角度から攻めて見ようと思った。あの薔薇姫を押し退けてクリスハルトの側にいる、ノウハウを聞いて見ようと。


「は?何で貴方なんかにモテテクを、教えないといけないのよ?」


「え、駄目でしょうか?」


「そんなの自分で考えていろいろ試して、失敗を重ねて習得するのよ」


結構努力してるんだ。


「でも、貴方って普通に見えてけっこう可愛いわね。どちらかと言ったら、あたしと同じタイプね。これはますます教えられないわ。ライバルになっちゃう」


え?可愛い?ライバル?


「じゃあ、あたしは行くわね。忙しいの。でも、これだけは言ってあげる。あなた、けっこういけるタイプよ、頑張って!」


と言ってすたすた去っていった。


結局何も教えてもらえなかったわ。でも私のこと可愛いって言ってた。


アリシアはぶつかった拍子に落とした鞄を拾った。学院指定のものだ。それを拾ってクラスに戻った。



そして、2日経った今日は年度末の修了式だ。学院の生徒は皆、講堂に集まっている。修了式が終わり、皆帰ろうとして、ざわざわしている中で突然、ひときわ大きな声が響いた。


「アリシア・オブライエン!貴様を断罪する!」


何事だと、皆、振り返り様子を窺っている。


「ミリー・ダウリー嬢に行った数々の悪行、決して許される行為ではない。よって、それ相当の処分を、覚悟するんだな。但し、貴様が素直に罪を認めて謝罪するなら、考えてやらんでもない。婚約破棄のみで許してやろう」


断罪を言い渡しているのは、宰相の息子アーデンだ。他にも近衛師団長の息子ボビー、学院長の息子カールとその三人に守られる様に立っているのが、ミリーだ。アリシアはその三人に突然呼び出されて、壇上の前に来てみれば、この断罪劇だ。


「この事を、第一王子殿下はご存知で?」


呼びだされたアリシアは聞いてみた。

肝心のクリスハルト第一王子殿下がここにはいない。


「当たり前だ。これは殿下のご意向だ。殿下も憤っておられた。観念するんだな!」


神妙にしているアリシアを見て、アーデンは狡猾な薄笑を浮かべて続けた。


「貴様がミリー嬢に対して行った罪をここに明白にするぞ。まず日々ミリーに悪口やひどい言葉を浴びせた。それから怪我をしていたのに、何と足を引っ掻けて転ばそうとしていた。恐ろしく非情な奴だな。それから持ち物もよく無くなっていたと言っている。きっと嫌がらせに取ったにちがいない。ミリーはとても傷ついていたが健気に毎日耐えていたそうだ」


そう言って、ミリーの腰を引き寄せた。


「それから、それにあきたらずに、教科書やノートを破いて捨てた。制服もハサミで切られて一緒に捨ててあった。日々、勉学に励んでいるミリーはショックを受けていたぞ。これが証拠だ」


カールが破かれた教科書やノート、制服を差し出した。


「それから、噴水にミリーを落とした。かわいそうに、ミリーはずぶ濡れになってしまったぞ」


アーデンがミリーの頭を撫でた。


「最後にとうとうミリーの命まで、脅かされる事件が起きた。ミリーを階段から突き落としたのだ」


ミリーの足はまたまた包帯が巻かれている。


「幸い足を捻挫しただけで大怪我は免れたが、これは殺人未遂と言っても過言ではない。全て、目撃者もいるぞ。 アリシア・オブライエン、観念しろ!」


「ちょっと、アーデン様。アリシア様に、変な嫌疑を掛けないで下さい。剣術大会の時の恨みを晴らそうとでもしているのですか!?」


そこにミランダやメアリー、エマを始めとした騎士科の皆が集まっていた。見れば、団長やキーラもいる。


「アリシア様、みんなあなたの味方ですから」


アリシアはその言葉を力強く思った。


「ありがとう。みんな」


アーデンは挙動不審になりながらも反撃してきた


「な、何を言うのだ。全然関係ないぞ。外野は黙っていろ!アリシア・オブライエン嬢がミリーに悪事を働いたのだ。彼女が事件のあった時にミリーの周りをうろうろしていたのを目撃されているのだぞ」


アーデンが言った。


「嘘言わないで!!」


ミランダ達が叫んだ。


「嘘ではない。目撃者も多数いるぞ。それからこれは子供の時の話だが、オブライエン嬢はアレクサンドラを噴水に落としたことがあるのだ。アレクサンドラは王宮の者に助けられたが、彼女は自分が落としたのではないと言い張って謝まらなかった。彼女は子供の時から変わっていないのだな」


絶対にあの女を断罪して、婚約破棄にするぞ。目撃情報は本物だ。それにアレクサンドラを子供の時に噴水に落としたのも本当だ。言い逃れなんてさせない。


生徒達はざわめき立って、周りに集まっている。


あの断罪されてる茶色い髪の女の子がクリスハルト第一王子殿下の婚約者ですって。

ミリーに悪事を重ねたって言ってるけど、あんな大人しそうな子が?

人は見かけによらないぞ。彼女はあの薔薇姫を噴水に落とした前科があるって言ってるし。

前にミリーを苛めていたって噂があったの、あの娘だったんだ。

そうね。事件があった日の目撃情報もあるって言ってるし

あの平凡な令嬢がまるで悪役令嬢ね。


いろいろな憶測が飛び交っていた。

その時!


「ちょっと待ってください!」


急に、三人に囲まれていたミリーが前に出てきて、アリシアを指差して言った。


「あなた、誰?」


「え?」


アリシアを含めそこにいた誰もが目を丸くして、ミリーを見た。


断罪のシーンが後5話続きます。

長いですがあしからずお付き合いください。

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