表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/26

11


アリシア達はあの後、皆で後片付けをした。大変だったけど楽しかった。と思いながらメアリー達と控え室で衣装を畳んでいると、デボラが何かそわそわしている。


「わ、悪かったわね。あなた達」


デボラがモゴモゴ謝ってきた。


「メ、メアリー様にも助けられたわ‥。あの時ひどい事を言って、ごめんなさい」


「あの時の事は余り気にしておりませんわ。アリシア様に庇って頂き、友情も深まりました。そういったことの方が心に残っておりますの」


メアリーはそう返した。


「そ、そう‥。ア、アリシア様‥その、ごめんなさい」


「今回はみんなに助けられて、なんとか解決できて本当に良かったと思っています。だから、お詫びや感謝はみんなにしてくださいね。それにとても楽しかったですし、皆と協力して、劇にも参加できて、いい思い出になったわ。皆にはとても感謝しているの。だから今はあなたのことをとやかく言わないわ。でも今後メアリー様やミリー様に対して何かをしたら、今度こそ承知致しませんのでそのつもりでいらしてね」


「わ、わかりましたわ」


デボラは深くうなずいた。


最後に、団長がアリシア達にお礼を言ってきた。


「君たちのおかげで、いい劇ができた。感謝している。また、時々は遊びに来てくれよ」


そう言って別れた。


アリシアはメアリーやミランダ、エマやオリバー、騎士科の訓練生達にお礼を言った。こんなことに巻き込んでしまったと、謝罪もした。皆は、


「いいって。自分達もとても楽しかった。いい経験ができて良かった」


と言ってくれた。


この人達に出会えて良かった。本当に感謝しかない。

これからはこの人達の信頼を大切にしていかなくては。


アリシアは心に刻んだ。



学院祭が終わった。皆、祭りの後の空しさからか、だらけている。あれから、デボラはひとりで大人しくしていた。デボラがいなくなって他の令嬢も勢いがなくなったのか、ミリーに対して何もしなくなっていた。


それから廊下であの団長やキーラに会うこともある。


「やあ君たちリボン組はいつも一緒にいるんだね。なあ、誰か劇団に入らない?」


と勧誘してくる。キーラも


「メアリー様の家事スキルには感心したわ。アリシア様も器用だし、ミランダ様は情報通だし、いてくれたら助かるわ」


と誘ってくる。アリシアは王妃教育で放課後はアウトだし、メアリーは家に帰ってから妹や弟の世話や家事で忙しい。ミランダはエマの鍛練のフォローをしていると言った

え? フォローって何?二人もはや、怪しくない?


「君って第一王子殿下の婚約者だったの?だから殿下は劇を観に来られたんだ。去年は観に来られなかったし、今年も観に来られたのは君達がいた最終日だけだよ」


え?そうなの?


「そうか、恐れ多くて誘えないな。でも、気が変わったらいつでも言ってくれよ」


と言ってくれた。時々は助っ人で手伝うことを約束したら

喜んでくれた。


そして今、学院ではクリスハルトとミリーとアレクサンドラ達三人の事をおもしろおかしく噂している。何か楽しみがないか探していた人達にはうってつけだった。


クリスハルト第一王子殿下はアレクサンドラ嬢とミリー嬢のどちらを選ぶのか?


これが大きな噂になっている。前のアリシアの噂などはいつの間にか消えてしまっていた。大きな声では言えないが賭けをしている人もいるらしい。


1.アレクサンドラ嬢 殿下の又従妹で幼馴染み。美人で品行方正で優秀。通称薔薇姫。現在殿下と同じ生徒会メンバー。


2.ミリー嬢 怪我をしたことから殿下の世話になる。可愛い。小動物系。通称人たらし(男たらし)。現在殿下から付きっきりで世話をされている。


3.二股


「ひどい噂が出回っているもんですわ」


「本当に。アリシア様を差し置いて、皆何を言っているのかしら」


ミランダとメアリーがとても怒っていた。お昼休みに三人は、いつもの裏庭で小さな声で噂の話をしている。それに、こんな噂も耳にしていた。


『クリスハルト第一王子殿下の初恋の話って知ってる?

髪が綺麗で黄色い髪の人だって。殿下と側近が話してたらしいよ』


黄色い?金髪のこと?それとも亜麻色?かつら?誰だろうと皆が考えた。


『それたぶん、アレクサンドラ嬢じゃないか?彼女はクリスハルト殿下の幼馴染みだし、生徒会メンバーで殿下の側でずっと仕事をしているし、金髪だし。彼女で決まりだな』


『それが、その側近との会話には続きがあって、クリスハルト殿下はミリーのことが可愛くて、放っておけない守ってあげたいと思っているんだって。それで、怪我が治った後も側にいるそうだよ。ミリーの方が優位じゃないか?』


『そうか?アレクサンドラが婚約者筆頭候補から婚約者になるって聞いたぞ。何でも令嬢が生徒会に入るのは婚約者選定で、彼女が選定されたと』


『そうなるとやっぱり二股しかなくない?』


そういった、情報が錯綜していた。


クリスハルトは相変わらずミリーに優しくしてそばにいるし、アレクサンドラも生徒会メンバーでそばにいる。

学院の廊下でクリスハルトとミリーとばったり会っても、クリスハルトはアリシアには声も掛けなくなった。学院祭の後からはずっとそうだ。何故か冷たい目で見てくる。


「アリシア様、落ち込まないで下さい。全部でたらめに決まってますわ」


「そうですわ。アリシア様と殿下は強い信頼関係で繋がってますもの。あの殿下がアリシア様を裏切るような事はしないと思いますわ」


「そ、そうね」


アリシアは力なく笑って答えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ