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初めての投稿です。暖かい目で読んで下さい。

設定はどこかの異世界の架空の平和な国です。

17世紀から19世紀位のヨーロッパ風です。


今日は王立ブランディア学院の年度末の修了式だ。学院の生徒は皆、講堂に集まっている。ざわざわした中で突然、ひときわ大きな声が響いた。


「アリシア・オブライエン! 貴様を断罪する! 」


何事だと、皆、振り返り様子を窺う。


「ミリー・ダウリー嬢に行った数々の悪行、決して許される行為ではない。よってそれ相当の処分を覚悟するんだな! 但し、貴様が素直に罪を認めて謝罪するなら、考えてやらんでもない」


断罪を言い渡しているのは、宰相の息子アーデンだ。他にも近衛師団長の息子ボビー、学院長の息子カールとその三人に守られる様に立っているのが、ミリーである。ピンクブロンドのふわふわした髪と、男の庇護欲をそそると言われる容姿だ。


「この事を、第一王子殿下はご存知で? 」


肝心のアリシアの婚約者、クリスハルト第一王子殿下がここにはいない。


「当たり前だ。これは殿下のご意向だ。殿下も憤っておられた。観念するんだな! 」


―婚約の事を考えなくてはならない―


アリシアは数日前にクリスハルトから言われた言葉を思い出した。


「ちょっと待ってください! 」


急に、三人に囲まれていたミリーが前に出てきて、アリシアを指差して言った。


「あなた、誰? 」


「え?」


アリシアを含めそこにいた誰もが目を丸くしてミリーを

見た。





アリシア・オブライエンは侯爵家の令嬢である。年の離れた7つ上の兄と2つ下の妹がいる。本人は自由奔放で少し負けず嫌いの性格であり、優しくも厳しい両親のもと、兄イーサンと妹ジュリアと時々遊びに来る隣のオリバーなんかもいて、仲良く、時には喧嘩しながら、すくすくと子供時代を過ごしていた。


7歳の時にそんな毎日が覆ることが起こった。この国、ブランディア王国の第一王子、ゆくゆくは王太子になるであろう、クリスハルト・デラルーク=ブランディアの婚約者になったのである。


クリスハルトは輝く金髪と青い瞳の持ち主で眉目秀麗でとても優秀でもある。アリシアはというと 髪の色は茶色、目の色も茶色と茶色づくしで百合だ薔薇だと謳われるような美人ではない。どちらかといえば、みんな可愛いねってひとまとめに言われちゃう容姿である。アリシアは何故そんな美貌の持ち主、クリスハルトが平凡な自分と婚約したのかはわからなかった。


初夏のある日、王宮で貴族の子供達が集められたお茶会が開かれてアリシアも招待されていた。(その日ジュリアは熱が出て母親とお留守番だった)皆、第一王子のクリスハルトがお目当てだ。一応公にはされていないが婚約者選定の趣もある。その第一王子は多くの令嬢に囲まれて、アリシアは近付けなかった。そこでやっぱり子供、早々に諦めて、花より団子、スイーツコーナーに目を輝かせた。側のサイドテーブルに座り、お皿に乗せたお菓子を食べて紅茶を啜っていた。その日は新緑がまぶしい季節で、庭園の花壇の花がそよそよと風に揺れていた。その花壇の奥へ小路が続いていて向こうに見事な薔薇のアーチが見える。そこから男の子が歩いてきた。アリシアは、薔薇の妖精が歩いてきた…と思った。その少年は絹のような金色の髪に、蒼天のような青い瞳、整ったまだ少し幼さが残る顔立ちだ。その少年が話し掛けてきた。


「やぁ、君ひとり?」


妖精がしゃべった!


「君はさっき女の子達の後ろでぴょこぴょこ、してなかった?」


ぴょこぴょこ? 後ろから覗こうとしてたこと?


「なんだかリスみたいで可愛いなって思ってたんだ」


リス?


「僕も座っていい? 」


「えぇ。どうぞ」


それから二人でいろんな話をした。このお菓子がおいしいよとか、妹が熱を出してお留守番なのでお菓子をお土産に

持って帰りたいとか、兄が大好きでいつも妹と取り合いしてるだとか、隣に幼馴染みが住んでるだとか、ほとんどアリシアが話していたがその少年は笑顔で聞いていた。

そのうち使用人が籠に入ったお菓子とお花を持ってきた。


「これはお土産のお菓子だ。持って帰るといい。妹さん早く良くなるといいね」


とアリシアに渡してくれた。お花はここの花壇のものらしい。


「ありがとうございます! 」


「もう、そろそろ帰る時間だね。また今度、庭園を案内してあげるよ」


また、会うことができるのかしら?


アリシアはふと思った。二人の間に風が吹き抜けた。少年の金色の髪を揺らしアリシアの髪のリボンをはためかせた。そんなアリシアを見詰めている少年の青い瞳はどこまでも続く今日の晴れた空みたいだと、アリシアは思った。


それから二日後、オブライエン侯爵一家は王宮に招集された。第一王子殿下からアリシアに婚約の打診があった為だ。家族は大変驚いた。噂では公爵家の娘でクリスハルトの又従姉妹のアレクサンドラ・リーネルが婚約者筆頭候補でおそらく選定されるだろうと言われていたので、両親もアリシアが婚約者に選ばれるとは思ってもみなかった。その時アリシアはあの少年が第一王子のクリスハルトだと初めて知った。そのクリスハルトがアリシアに


「これからよろしくねアリシア」


と笑顔で言うと、アリシアは


「はい! 謹んでお受けします。隣に立てるよう頑張ります! 」


と元気に返事をしたのだった。


婚約が決まったが、何故か正式に婚約発表をするのを二人が王立ブランディア学院に入学する13歳まで延ばされた。その理由をアリシアは知らなかった。そしてアリシアの王妃教育が始まった。最初のうち、クリスハルトは慣れないアリシアに付き添って、一緒にできる勉強は一緒にしていた。それがいつのまにかなくなって、アリシアひとりで王妃教育を受けるようになっていた。その代わり、王妃教育が終わった後にクリスハルトと過ごす時間ができた。婚約者同士の交流である。アリシアはそのほんのひとときの時間が楽しかった。毎日、クリスハルトと早く一緒にいられるように王妃教育を頑張った。クリスハルトとの時間はお茶を飲んだり、散歩をしたりお花を摘んだりして楽しく過ごしていた。でもよくアリシアは王妃教育統括担当のハンナ女史に


「まあ、オブライエン嬢、何をしているのですか?

第一王子殿下の婚約者の自覚を持って行動をなさいませ」


と叱られていた。本人は、クリスハルト様と楽しく遊んでるだけなのに、なぜ叱られるのかわからなかった。クリスハルトはそんなアリシアをいつも笑顔で見ていた。



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