指名依頼
ハンスがDランクに昇格してから、今日までいろいろな依頼を受けていた。初めは薬草採取からゴブリンなどの魔物狩り、そこでレベルをあげ、次にオークなどの魔物を退治していた。
そのとき、俺は、殴りかかってくるオークの腕を掴み背負い投げしたら、ハンスに引かれてしまった。200キロ以上あるオークを聖女の俺が投げればそうなるのかもしれないけど・・・まあ、そんなことがあったが、依頼は順調にこなしていた。もうじきハンスはCランクになるのではないかと思う。中には「Sランクの俺に引っ付いている、おまけ」って言っている者もいるが、ハンスは気にしていないようだ。確固たる自信が今の彼にはあるから。
「さて、オークの討伐も終わったし、帰るか?」
「レティシア、なんでオークの首がみんな綺麗に無いの?」
「ん?だって俺の武器って大鎌だからね。大鎌と言ったら首切りのイメージがあるじゃない?だから確りと首を綺麗に切り取ったのだ。」
「いや、そもそも聖女って、そんな職業だっけ?」
最近、ハンスは聖女の職業について悩まされていた・・・レティシアはことあることに、大鎌をもって肉体強化と回復魔法を自分にかけて、オークに突っ込んでいく。正直本当に聖女って思う事ばかりだ。
「そういうハンスも、オークに突っ込んでは切りまくっていたじゃないか?」
「僕は勇者だからね。これが普通なの。」
ハンスはそう言ってきた。ふむ、俺のどこが、おかしいのだろうか?そのようなことを思いながら、俺たちはギルドに戻った。
「あ、レティシアさん、ハンスさん。ちょうどよかった。探していたんです。」
受付嬢が俺たちを見てそう言った。
「何かあったの?」
ハンスが受付嬢にいう。
「はい、すぐにギルドマスターの部屋に来てほしいと」
「ふむ、ハンス。取りあえず行ってみよう。」
俺たちはオーク討伐の完了と受付で済ませ、ギルドマスターのもとへ向かった。
「来たか?待っていた。」
部屋に入るとすでにギルドマスターが机の上で書類をまとめながら言ってきた。
「ギルドマスター。何かありましたか?」
ハンスが聞くと
「ああ、ちょっと息子が君たちに依頼したいことがあるそうだ。」
そういうと、奥の部屋から、ニコラス=ファブレが姿をだした。この町の領主。伯爵家の現当主だ。即座に席を立ち、「お久しぶりです。ファブレ伯爵。」と頭を下げ、俺はニコラスに言った。
「レティシア。君はいつも固いね。僕と君の仲じゃないか?普通で良いって言っているのに・・・」
「そうは言われても・・・」
さすがの俺も困る。基本、俺は貴族だろうと敵対する奴は容赦しないが、ギルドマスターやファブレ伯爵とはヒーラー時代によく面倒を見てもらったので、今でも頭が上がらない。
「え、えっと・・・」
ハンスは困惑していた。
「ハンス君だね。君のことは父上より聞いている。もちろん職業についても。」
ニコラスがハンスにいった。
「伯爵という立場であれば君を保護したいが、僕個人としては父上と同じ意見だ。だから、これからは友として付き合ってくれないだろうか?」
「そんな、恐れ多い・・・」
「ダメだろうか?」
「いえ、その・・・」
判断に困るハンスに対して、ギルドマスターが「友になってやってくれ、こいつは昔から友と呼べる人がいないのだ。今ではレティシアくらいだ。」
「あははは・・・」
俺は苦笑いする。
「わかりました。友と呼ばれるように頑張ります。」
「うん、よろしくね。ハンス。」
二人は握手する。
「それで伯爵様。ここに来た理由は何でしょうか?」
俺はそう聞くも
「レティシア、敬語禁止。普通に話す。」
と言われてしまった。
「はあ~わかり、いや、わかった。ニコラス。」
俺はそうと満足したようだ。
「うん、よろしい。と自分も普通に話すよ。」
「今回はね、この町の近くにある、この森の調査をしてほしいのだ。」
そう言って、地図を見せてくれた。場所はよく初心者が薬草採取をするところだ。
「この森に何かあるのか?」
俺が聞き返すと
「うん、何でも、森の奥から聞きなれない魔物の声がするみたいなんだ。」
そうニコラスが言う。
「俺もその話を聞いて、冒険者に調査を依頼したんだが、ケガをしてな。それで、お前たちを呼んだってことだ。」
ギルドマスターが言う。
「その冒険者は何と言っていたんですか?」
ハンスが聞くが
「いや、それがよくわからないって言ってな・・・」
ギルドマスターが目をそらす。
「一体どこのパーティーですか?」
俺が聞くと
「「青の翼」だ。」
とギルドマスターがいう。その言葉にハンスがピクリと反応する。
「「青の翼」ってDランクのパーティーでしょ?それが、わからないってどういうこと?」
俺がギルドマスターに問い詰めると・・・
「いや、森が薄暗くて見えにくかったと言っていた。」
「・・・ランプなどはもって行ってなかったの?」
「多分、もっていってないかも・・・」
ハンスが言う
「え?」
俺も驚く
「いつも、そういった道具などは俺がそろえていたから・・・」
「ギルマス。なんでそんなパーティーに依頼したの!!」
「いや、最近噂のパーティーだからな・・・」
ギルドマスターもさすがに慌てて俺に弁解する。
「そもそもハンスを追放するようなパーティーですよ。」
「いや、その・・・な」
ギルドマスターが俺に押されつつあったが
「レティシアもういい。」
そうハンスが言った。
「でも・・・」
「いいんだ。むしろ、彼らが失敗した依頼を俺たちが達成すればいいのだから。」
ハンスは笑顔で笑う。それもとびっきりの!まさか、こんなに早く機会が訪れるとは・・・そうハンスは思っている。
「ッ!(そうだね。確かにその通りだ。ああ、なんて素敵な笑顔なのだろう。)」
俺は男に興味はないが彼のその笑顔に惚れそうになった。
「わかった。ハンスの言うとおりだね。」
「話はまとまったみたいだね。」
ニコラスが言う。
「今回は、この領地の問題でもあるため、伯爵家の依頼として、君たちにお願いしたい。引き受けてくれるか?」
「ええ、もちろん。」
そうハンスが言った。
この後、正式に伯爵家の依頼として俺たちは依頼を受けることになる。俺たちは準備を済ませ。問題の森に向かうのであった・・・
一応、溜めてあった小説が切れてしまったので、ここからは不定期になると思います。ご了承ください。次の章ができ次第投稿させていただきます。