巡礼の護衛②
俺たちはカトレアの用意した馬車で現在、王城に向かっていた。馬車には伯爵家の紋章があるので、すんなりと王城に入ることができた。こうして王城に来るのは二回目だ。
「(ガクガク)」
アリスがガタガタ震えていた。アリスにとって王城は初めてなので緊張するのは無理ないが・・・
「大丈夫ですよ、アリス。私たちがついています。」
リーシャがアリスを抱きしめている。うん、いつ見てもお姉ちゃんが妹を慰めているようにしか見えない。これはこれですごく絵になるけど。
「ようこそ、お越しくださいました。」
出迎えてくれたのはエレノアであった。
「まさか、王女様が出迎えてくださるとは光栄です。」
ハンスが頭を下げる。その後、俺たちはエレノアについて行って賓客室まで案内してもらった。
「そういえば、こちらの方は初めてでしたね。」
そう言って、エレノアがアリスに自己紹介をする。アリスはガチガチに緊張しながらあれの挨拶をしていた。しばらくしてから、部屋にレオンハルトとアリシア、そして陛下と王妃が入ってきた。
「よく来てくれたね。「暁」のみな。」
陛下がそう言った。
「こちらこそ、王族の方に指名していただき光栄でございます。」
ハンスが代表で頭を下げる。
「そう、固くなる必要はない。君たちは我が国を救ってくれた英雄なのだから。」
陛下はそう言った。そして
「さて、今回は我が息子、レオンハルトとその婚約者であるアリシアの巡回の護衛を務めてもらう。君たちには主にアリシアの護衛を頼む。」
陛下が俺たちにそう言った。
「かしこ参りました。」
ハンスはそう言った。その後、俺たちは細かい内容などを確認し、城をあとにする。ちなみにアリスの事もみんなに紹介した。
「今夜はこちらの宿にお泊り下さい。」
王城から一緒に来ていたメイドにそう言われた。
「わかりました。」
ハンスがそう言って、それぞれの部屋に入って行った。
翌日、俺たちは王城に向かった。王城には騎士たちがすでに準備を終えていた。その中には冒険者の姿も見える。どうやら騎士団だけでなく、冒険者も雇ったようだ。そして
「おい、あれって「暁」じゃないか?」
冒険者の誰かがそう言った。
「ほんとだ。すげ~」
尊敬のまなざしを向けてくるものもいる。ふむ、いい心がけだ!なんてことを思っているとハンスに肘でつつかれた。全く冗談なのに・・・
その後、俺たちは騎士団の方と軽く挨拶をし、レオンハルトとアリシアが来るのを待っていた。
「はじめまして。君たちが噂の「暁」か?」
冒険者の人が俺たちに話しかけてきた。
「そうですが、貴方は?」
ハンスが聞き返す。
「失礼、私はヨハン。Aランク冒険者さ。」
そう言って彼は俺たちに挨拶をする。後ろには三人の女性がいた。
「君たちの事はよく知っている。なんせSランクが二人もいるのだからな。まあ、私もいずれSランクになって見せるがね。」
ヨハンはそう言って俺たちのもとを去って行った。何が言いたいのだろう・・・
「あれって、いったい何が言いたかったの?」
アリアが聞いた
「おそらく、私たちにライバル意識でも持っているのではないでしょうか?」
サーシャがそう言った。ライバルねぇ~
「ヨハンは、何でも自分が一番でないと気に入らないタイプだからな。」
後ろから別の冒険者が話しかけてきた。
「そうなのか?」
俺はその冒険者に聞き返した。
「お!あんたが噂の死神か?なんか噂とはまるで違うな。」
「どういった噂なんだ?」
「ん?俺が聞いたところでは二メートルを超えた巨体で、ゴリラみたいに素手で殴りまくり、大鎌ですべての首を切り取ったとか、そんな噂だ。正直、あんたみたいな美少女からは、そんな想像は出来ないが・・・」
冒険者の男がそう言った。後ろではアリス以外のメンバーが下を向いて肩をプルプルさせていた。
「・・・」
俺もなんていえばいいのか微妙だった。半分以上噂は正しい・・・
「そういえば自己紹介がまだだったな。俺はリオンだ。」
「ああ、俺はレティシアだ。」
「女なのに俺って言うんだな。」
まあ、口癖は今更だな。前にリーシャたちにも言われたが直す気がないとはっきり言った。
「こればかりは口癖だ。」
俺はそう言って他のメンバーを紹介した。リオンは男四人のメンバーらしくそれなりに仲が良いらしい。彼らと俺たちは交流も兼ねて話し合った。あちらは女性の俺たちと話ができたことに多少舞い上がっていた。まあ、男四人だとね~。しばらくすると、レオンハルトとアリシアが姿を現した。
「それじゃ、そろそろ俺たちは皇太子殿下の護衛があるからこの辺で」
そう言ってリオンたちは去って行った。
「僕たちも聖女様の方に行こうか。」
ハンスがそう言い、俺たちもアリシアのもとに向かう。
「そういえば、ヨハンって男のパーティーは皇太子殿下の護衛につくみたいだね。」
ハンスの話に
「ああ、リオンが言うには女癖が酷いらしいからな・・・」
そう俺は答えた。よくよく考えればあの時も、ハンスではなく俺たちを見ていたような気がする。
「一応、警戒しておくか。」
俺はそう言い、みんなが頷く。一応アリスには一人での行動は控えるよう伝える。彼女も基本的な剣術などは叩き込んでいるが、まだ心配な部分がある。なので、誰かと一緒に行動するように伝えた。まあ、基本俺たちはずっと一緒に行動しているが・・・
「(もし、アリスに手を出せばヨハンはこの世から消えてもらうけどね。クックック。)」
俺はそんなことを考えながら護衛任務に就いた。




