閑話~ラルク編②~
~武闘大会が始まる数週間前~
ラルクは盗賊をまとめる頭をやっていた。
「オラァ、酒と飯を持ってこい。」
ラルクは盗賊の頭になってからは仕事のほとんどを手下にやらせていた。
「お頭、そろそろ食料が底をつきます。」
手下の一人がそんなことを言う。
「んなぁもん、また商人、襲って奪えばいいだろうが!」
ラルクはそういうも
「お頭、手下の奴らはほとんど戦闘経験のない者ばかりです。」
「それがどうしたってんだ?少人数の商人を狙って、数で攻めれば問題ないだろうが。最近、数だけは増えてきてるんだからなぁ。」
ラルクが盗賊の頭になったときは10人くらいだったが、今は倍の20人くらいになっている。
「とりあえず、見張りを向かわせろ。それで少ない商人だけを狙って奪って来い。ああ、ついでに女もいれば連れてこい。」
ラルクはそんな事を部下に命じ、自分は酒を飲むのであった。
「くそっ、何なんだ!いつは!俺たちはあいつの奴隷じゃないっての!」
手下の1人がそう言った。しかし
「やめておけ。あいつは上級職の魔法剣士だ。俺たち村人じゃあ勝てない。」
そう、この盗賊のすべてが住むところを無くした、もしくは家族から口減らしのために捨てられた者ばかりだ。数が多くても村人じゃあ魔法剣士には勝てない。みんなそれが分かっているから、おとなしく従っているのである。
「とにかく命令どおり、何人かを見張りにつけよう。それで、人数の少ない商人もしくは護衛のいない商人がいればそれを襲おう。」
男たちはそんなことを話していた。そのとき弓矢の一本が仲間の頭に当たった。
「誰だ!」
男たちは周りを警戒しだす。しかし、そこには鎧をまとった騎士団の姿があった。
「全員、盗賊を逃がすな!進め!」
騎士団の隊長らしき人が騎士に命令をする。
「騎士団だ!騎士団が来たぞ!」
盗賊の1人が大声で叫ぶ。
「お頭!!」
「何だ!騒々しい!」
ラルクは睡眠を妨げられイライラした。
「それが、騎士団が現れました!」
手下の一言に
「何だと!」
ラルクは慌てて立ち上がる。しかし酒を飲みすぎたせいで足がフラフラしていた。
「お頭!俺たちはどうしたらいいんですか?」
手下がそう聞いてきたので
「とりあえず、時間を稼げ!俺は戦う準備をする!」
「お頭が戦ってくれるんですか!」
手下は驚いていた。今まで自分勝手のラルクが初めて仲間のために戦ってくれることに感動したのである。
「早くいけ!」
「へい!」
手下はそう言って、走り出した。
「(冗談じゃない!こんなところで終わってなるもんか!)」
ラスクは近くにあった装備と食料、そしてお金をまとめ、アジトから抜け出す。
「(あいつらには、この俺様が逃げる時間稼ぎをしてもらわないとはなぁ。)」
ラルクは手下を見捨て、逃げだした。
逃げ出すこと数時間
「ここまで、来ればもう大丈夫だろう。」
ラルクはまだ酒が抜けてない状態であったが、何とか逃げ出すことに成功した。
「とりあえず、今後のことを考えないとなぁ!」
ラスクは自分のアジトが騎士団のせいで使えなくなってしまったので、今後どのように活動するのかを考えていた。そんなとき
「お前がラルクか?」
後ろから聞き覚えのない声が聞こえた。
「誰だ!」
ラルクは後ろを振り向く。そこには数人の騎士がいた。
「チッ!こんなところまで追手が来るとはな!」
ラルクは剣を抜き構えるが
「まあ、待て。こちらは戦うつもりはない。むしろお前を迎えに来たとでも言おう。」
「何だと!」
さすがのラルクも驚く、騎士団が迎えに来たと言うのだから仕方ないことだ。
「一応言っておくがラルク、君は現在、指名手配されている。このまま町に行っても捕まるのがオチだ。」
ラルクに現在ギルドが指名手配していることを伝えた。そのうえで
「指名手配されている上で君の力が必要なんだ!」
「俺の力が必要?」
「そうだ。ぜひ君の力を我々に貸してほしい。もし今回のことがうまく言ったら君の指名手配を取り下げると約束しよう。そして君が望む報酬を上げよう。」
「・・・それは本当か?」
「本当だとも。」
ラルクは考えるふりをしたが結局、騎士の手を取ることにした。こんなおいしい話が目の前にあるのだから、この話に乗るのがいいとラルクは思ったからだ。
「いいだろう。協力しよう。」
「そうで、なくてはな。」
男は笑う。
「それで俺に何をさせたい?」
「今は特にない。時期が来ればこちらから連絡をしよう。取りあえず今は我々が用意した場所で英気を養ってくれればいい。勿論、その間の衣食住はこちらで保障しよう。」
「いいだろう。」
ラルクはそう言って、騎士たちのもとに言った。
「俺はラルク、あんたは?」
「・・・レイナールだ。」
そう言って、レイナールはラルクを自分の部下に任せた。ラルクの姿が見えなくなった後
「・・・あのお方のご命令でなければ、あのような薄汚い冒険者などと関わりたくもない。」
レイナールはそう言って前髪をかきあげる。
「せいぜい、あのお方のために役立ってくれよ。ラルク君。」
レイナールはそう言うのであった。




