第一試合
アリシアが退室してからしばらくし、試合が始まった。俺は一番、最後なのでしばらくはこの部屋にいるつもりだ。
「そういえば、カトレア様。貴族枠の最後に一人って誰だかご存じですか?」
「ええ、最後の代表選手はシュバイツ公爵家の者です。」
カトレアが最後の代表選手を教えてくれたが、この前の食事の時に確かシュバイツ公爵家は第二王子の派閥のトップじゃなかったっけ?ふむ、ファーレンガルドが第一王子の派閥のトップで、このおじいちゃんのローゼン公爵が第一王女の派閥のトップだったな。俺はカトレアのそばに行き、小声で
「(なんで?各派閥のトップの代表が出場する大会に参加したんですか?」」
「(すみません。てっきり他の貴族も出るものだと、思いまして・・・)」
なるほど、カトレアは他の貴族も出ると考えて参加したわけか。
「(それに、レティシアも参加したかったでしょう?)」
そう上目づかいで言われた。うむ、カトレアはやはり美少女だ!改めてそう思った。
「(全部、潰してもいいですよね!)」
「(ええ、勿論です。)」
カトレアからの許可はとれた。他の貴族が参加しなかったのは予想外だったが、「中立派閥の代表」という事で、参加すればいいのではとカトレアは思ったらしい。実際に伯爵家は中立だし・・・
その後、俺は自分の番が来るまで、他の人のだろう試合を見てた。なかなか白熱した試合ばかりで興奮した。そして
「そろそろ、出番なので、失礼します。」
俺はカトレアと王女に頭を下げ、退室した。
「さて、残すところに後1試合!勝者はどちらの手に!」
司会がそのような事を言っている。
「では選手の登場です。まずはファーレンガルド公爵家代表、レイナール選手!」
名前を呼ばれたレイナールは白い鎧姿でマントをはためかせ、そして片手と天にあげながら登場した。そこから、レイナールがファーレンガルド公爵家の騎士であることや、功績などを説明していた。正直どうでもいい・・・
「続きまして、ファブレ伯爵家代表、レティシア選手!」
俺が呼ばれたので普通に登場する。今回の大会では俺はSランク冒険者である事はカトレア様に言って黙っててもらった。そのため、この試合でも俺がSランク冒険者であるという紹介は無かった。ただの無名選手とだけ紹介された。
「ふん、まさか怖気つかずに出てきたことは誉めてやろう。」
「・・・」
「何だ、今更、怖くなって声が出ないのか?」
「・・・」
「何か言ったらどうなんだ!」
レイナールは俺を挑発するがすべて無視する。そんなことをしていると司会が「そろそろ、
よろしいですか?」と聞いてきたので、俺は頷いた。レイナールの方は「さっさと始めろ!」
という。俺たちは指定の場所へ移動して
「それでは本日最終試合、はじめ!!!」
司会の人が叫ぶ。
「オラァ!」
レイナールは剣を両手でもって走ってくる。そして
「終わりだ!」
剣を上から振り下ろす。しかし
「何!」
レイナールは驚いた顔をする。俺は身体、全体に魔法を施し肉体を強化していた。そして、レイナールの剣を片手で受け止めた。
「エラそうな割には、たいした事ないね。」
「こ、この!」
レイナールは剣を振りほどこうとするも、俺が確りと握っているため、ビクともしなかった。その状態から俺はレイナールの顔を思いっきり殴った!
「ぐはッ」
顔を殴られたレイナールは剣を手放し飛ばされる!あまりにも無様だ!
「貴様!」
レイナールは鼻を抑えながら立ち上がる。
「良くもこの私の顔に!貴様は絶対に許さん!」
「どうでもいいよ!正直、弱い者イジメは嫌いなので、すぐに終わらしてあげるよ!」
「何だと!」
レイナールは下を向きワナワナ震えだし
「この私が弱いだと!Sランクにすら勝てるこの私を!」
「もしかして、自分は強いと勘違いする人?たまにいるんだよね、たいしたことないのに自分は強いと思う人。」
「おのれぇぇぇ」
叫びながら殴りかかってくるが、俺はその攻撃をすべて避けた。正直言って遅すぎる。
「おのれ!私の剣さえあれば貴様なんか!」
レイナールはそんなことを言い出す。そういえば、こいつの剣、俺が持っているな。
「そんなに返してほしければ、返してあげるよ。」
俺はそう言って、レイナールの剣をレイナールに向けて投擲した。魔法で身体能力の上がっている俺の投擲は、予想以上のスピードが出た。当然、レイナールは避けることすらできず、そのまま剣が体を貫いた。貫かれたと当時に、時間が巻き戻り、ケガのない状態に戻った。そして
「試合終了。勝者レティシア!!!!」
司会が試合終了の合図を出す。それと同時に会場の歓声が鳴り響く。
俺は片手をあげ会場を出て行った。後、レイナールは気絶したままだった。
貴族ルームでは
「レティシアさんって、すごく強いのですね。」
「ええ、我がファブレ家の最高戦力ですので。」
エレノアとカトレアはそんな話をしていた。後ろでは
「「「「(聖女の戦い方じゃない!!)」」」」
メンバー全員がそう思ったのである。




