代表選手
「聖女様!」
俺は頭を下げた。さすがに「げっ!アリシア=ファーレンガルド!」と言いそうになったのを何とかこらえた。俺、エライ!
「え?この方が?」
ハンスたちも慌てて頭を下げた。
「初めまして。アリシア様、私はカトレア=ファブレと申します。」
カトレアが頭を下げた。
「初めまして、カトレア様。どうぞ私の事はアリシアとおよびください。」
アリシアがそう言った。そして
「エレノア様もいらっしゃったのですね。」
アリシアが、エレノアに言う。
「ええ、アリシア様もいらっしゃったんですね。」
「昔みたいに姉さんとは言ってくれないのですね。」
アリシアは少し悲しそうな顔をする。やはり派閥の関係でお互いギクシャクしているのかもしれない。正直この空気は嫌いだ。
「これは、これはアリシア殿。このようなところでお会いできるとは。」
そこにローゼン公爵が話に入った。
「まあ、ローゼン公お久しぶりです。」
アリシアとローゼン公爵が話し出す。そのおかげで少しは空気が和らぐが、ここでお約束があった
「まさか、貴様のような薄汚い冒険者がここにいるとはな。」
そう、アリシアと一緒にいた護衛の一人だ。俺は正直どうでもいいので無視をする。ハンスたちは俺を見るが、俺が無視しているので、ハンスたちも何も言わなかった。
「おい、なにか言っ」
「やめなさい!」
アリシアが護衛の男に言った。
「どうして貴方はいつもそうなのですか?」
「しかし、アリシア様。ここは・・・」
護衛が何か言おうとするも、「貴方のその態度こそが、貴族としての品格を落とすのです。」と言われてしまい。黙り込んだ。そして
「ごめんなさい。不快な思いをさせてしまって。」
アリシアが頭を下げるが
「気にしていませんよ。」
とだけ言った。正直、あの男のことなど、どうでもよかったからだ。
「それより、みなさんは誰が優勝すると思っていますか?」
と話を変えるようにアリシアが聞いてきた。
「ふぉっふぉっふぉ、そうですの~。わしは、自分のところの代表が勝つと思っておるよ。」
ローゼン公爵がそう言い後ろに控えている騎士を指さす。そこには大男が立っていた、見たところパワータイプってところだな。
「そういう、アリシア殿は誰ですか?」
「そうですね~私は・・・」
「当然、この私です。」
また、この男が出しゃばってきた。
「彼は?」
ローゼン公爵がアリシアに聞く。
「彼は、ファーレンガルド家の代表です・・・」
アリシアはそう言った。しかも小声で・・・
「ふん、この私にかかれば、たとえ相手がSランク冒険者であろうと、たやすく倒して見せましょう!」
そう啖呵を切る。俺はその言葉にピクリと反応するも、ハンスたちに目で「おとなしくしてろ。」と言われた。
「Sランクに勝てるとはず随分と大きく出るのですね。」
カトレアがそう言った。
「ん?そちらは伯爵家の・・・確かこの国で唯一のSランクがいる領地を管理していたんでしたね。」
その男はカトレアにそう言った。口では普通に言っているが態度が完全に舐め腐っている。
「そういえば、貴女も代表を出すのでしたね?いったい誰です?」
「我が伯爵家の代表は彼女です。」
そう言ってカトレアは俺を紹介する。
「この女が?ご冗談を?どう見ても弱そうじゃないですか?」
男はそう言った。さすがのカトレアも我慢の限界だったようだが
「そこまでです。先ほどから聞いていれば、何なんですかあなたは。」
王女のエレノアが言った。
「仮にも貴族の護衛でありながら他者を見下す。それが騎士のすることですか?」
エレノアはさらに続けて言った。
「申し訳ありません。エレノア様、私の護衛が不快な態度を取ってしまい・・・」
そう言って、エレノアとカトレアに頭を下げた。そして「私がいてはご迷惑ですね。」と言って護衛を連れて出て行った。アリシアが出て行った後
「レティシア、試合であの男をボコボコにしてあげなさい。」
とカトレアに言われた。カトレアも結構怒っているようだ。
「わかりました。ですが彼が俺と戦うところまで来るかわかりませんが・・・」
「え?何言ってるのですか?レティシアさんの最初の相手ってあの男ですよ?」
エレノアに言われて
「え?そうなのですか。」
と言ってしまった。さすがに王族に対しての対応ではなかったので「申し訳ありません」と謝ろうとしたが、「あなたにとって、あの男はその程度の存在としてしか認識してないようですね。」と俺の言葉に不快に思事なく普通に返してきたのである。




