装備購入
「さて、ハンス君、これからは俺のことは呼び捨てで構わない。」
「なら、僕のことも呼び捨てで構いません。レティシア。」
「了解だ!ハンス。それでこれからのことだが」
俺はこれからのことをハンスと話す。まず、宿に関しては、俺の部屋で寝泊まりしてもらうことにした。ハンスは今宿なしのため、そして空いている部屋が今はないためである。
「いいんですか?同じ部屋でも?」
「ん?何だい?俺と同じ部屋は不満かい?」
「いえ、そんなことはないですけど・・・」
「なら問題ない。君と俺は同じパーティーなのだから。」
少なくても自分の正体を伝えているため、大丈夫だろう・・
「さて、今日はもう寝よう。明日は君の装備を買いに行こう。」
「え?でも僕お金があまりないですけど。」
「問題ない。お金は俺が出そう。蓄えはそこそこある。」
「でも、悪いですよ。」
「そう思うなら、後で少しずつ返してくれればいい。君はもう勇者なのだから。」
「そうでしたね。わかりました。いつか必ず返します。」
ハンスはそう言って眠りについた。
翌日
「うむ、ハンスの門出にいい天気だ。」
俺は輝く太陽を見上げてそう言った。
「大袈裟ですよ。レティシア。」
ハンスはイマイチノリが悪い。せっかくいい天気なのに・・・
「まあいい、それではまずは装備を見に行くか。」
鍛冶屋に向かう。しばらく歩くと、俺は人通りの少ない場所に入る。そこには、小さな鍛冶屋があった。昔から俺が通っているお店だ。
「こんなところに鍛冶屋があったんですね。いつもは大通りのお店ばっかり行ってました。」
「ああ、当時の俺はヒーラーだったのでね。剣など武器をヒーラーに売れるかって、追い出されてしまってね。それ以来、大通りの店には顔を出していない。唯一、ヒーラーの俺にも武器を売ってくれたのがこの店でね。それ以来、この店以外は行かなくなったんだよ。」
「そうだったんですね。ここの店主はすごくいい人だったんですね。」
「まあな・・・見た目はあれだけど。」
「??」
そんなことを話ながら、俺たちは店に入った。
「あら~、レティシアちゃん。いらっしゃい~」
そこにはムチムチマッチョのオネェがいた。これには、さすがのハンスも・・・
「すげ~、こっちの世界で、オネェに出会えるなんて。」
感動していたが、まあいいとしよう・・・
「オネェ様、久しぶりです。実は彼の装備をいただきたく参りました。」
「なるほどね~、こっちの坊やの・・・それでどんな装備をご希望?」
あっさりとそういわれた。
「え?職業は聞かないんですか?」
さすがのハンスもオネェ様に言った。
「うふふ、ふつうはそうかもしれないけど、私は職業に捕らわれたやり方が嫌いなのよ。だから、私はその人が欲しい装備を提供するって決めたのよ。」
俺もその言葉に救われたんだっけな・・・オネェ様はヒーラーだから剣はダメって言わなかった。それより、どういった剣がオススメかまで教えてくれた。
「私だって、みんなこの姿を見るだけで逃げ出すのよ?人は本来自由であるべきだと思うのに。私やレティシアちゃんのように。」
ハンスは俺を見た。まあ大鎌にボロボロのローブ、その下はラバースーツのような物と言った聖女ではありえない恰好をしていることは間違いないだろう。
「そうですね、僕もそのことには賛成です。なるほどレティシアが薦めるだけあります。」
ハンスも関心していた。
「僕も村人だってことで、武器を売ってくれなかったんです。」
ハンスは呪いのせいで村人だった。村人に剣は売れないって言われたんだろう。
「あなた?村人?それにしては強すぎない?」
オネェ様はハンスにそういった。なるほどオネェにはハンスの強さがわかるみたいだ。
「実は・・・」
ハンスはオネェ様に呪いのせいで村人であったこと、俺に呪いを解いてもらって勇者になったことを話した。
「そんなことがあったのね・・・あなたも辛かったのね。いいわ、今回は私が最高の装備を見繕ってあげる。」
「え?でもお金が・・・」
「いいのよ。勇者様が私の店の装備を使ってくれているそれだけで十分。」
「(オネェ様マジ、かっこいい)」
俺はそう思った。
「お金はレティシアちゃんにつけとくから。」
前言撤回、やっぱりいつものオネェだった・・・
「それじゃあ、レティシアが・・・」
「ん、大丈夫。オネェ様とはいつもこんな感じだし、俺が払えない金額を請求することはないから。」
俺はそうハンスに言った。
「とりあえず、勇者様ということで装備はオリハルコン一式できましょう。」
「ええ、それがだとうでしょう。」
俺も同意した。
「ちょ!オリハルコンって・・・」
そう、オリハルコンはこの世界でアダマンタイトの次に固い鉱石であり、ミスリル以上に魔力を通しやすい。上位冒険者でもなかなか揃えることができない最高級の装備である。とはいえさすがの俺も・・・
「(お金・・・足りるかな・・・)」
同意したけど、ヤバい、不安になってきた。オネェはそんな俺の顔を見て
「大丈夫よ。大体、白金貨3枚ってところかしら・・・」
オネェはそんなことを言った。
「白金貨であれば金貨3000枚くらいか・・・なら大丈夫かな?」
「ちょ、金貨3000枚って、日本円で3000万くらいじゃない?」
ハンスは驚くが、
「3000枚なら安い方だよ。正直オリハルコン一式なら白金貨10枚は最低必要だよ。」
「10枚・・・」
さすがのハンスも驚くだろう。この世界のお金は、銅貨(10円)、大銅貨(100円)、銀貨(1000円)、金貨(10000円)くらいになる。白金貨だけ金貨1000枚分に匹敵する。
「まあ、大丈夫、俺とハンスなら、これから簡単に稼げるから!」
俺はそう言った。
「大丈夫よ。あなた達なら簡単に稼げるわ。自信を持ちなさい。」
とオネェも励ましてくれた。
そして、ハンス君は黒一式の鎧と長剣をそろえた、黒髪黒目に似合う装備だ。
「あなた達が立派な冒険者になることを期待しているわ。」
そう言ってオネェが見送ってくれた。
余談だが、オネェは乙女連合という連合に所属しているらしく、そこの知り合いにオリハルコンを安く仕入れることができたみたいだ。乙女連合・・・・うん、忘れよう・・・