閑話~ラルク編①~
「青の翼」が実質、ラルクだけになってしまったので、これからはラルク編で進めて行こうと思います。
「はぁ、はぁ、はぁ。」
一人の男が森の中を走っていた。
「ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう!!!!」
その男はラルク。元「青の翼」のリーダーだ。
「なんでだ!なんで英雄になるはずの俺が、こうして無様に逃げ回らなければならない!」
ラルクは先の盗賊襲撃の隙をついて逃げ出した。そして、盗賊が落とした剣を手に持って逃げ出したのである。
「くそ!これもすべてハンスのせいだ!あいつのせいで俺はこんな惨めな状況になってしまったんだ。あいつさえいなければ俺は・・・」
ハンスさえいなければ今ごろ、俺は英雄になり、たくさんの女とハーレムを送れるはずだったとそう思いこんでいた。ラルクはこれもすべてハンスのせいであると勝手な思い込みを始めた。
「とにかく、今は生き延びて今後のことを考えないとなぁ・・・」
ラルクは、今は生き延びることを優先に考え移動をする。
「盗賊が襲ってきたんだ。この辺りにあいつらのアジトがあるかもしれない。」
ラルクは先の盗賊の襲撃で近くに盗賊のアジトがあるかもしれないと思い、アジトを探すことにした。
「とはいえ、相手は複数だ。さすがの俺も今の状況だと勝てるか分からない。」
ラルクは今の自分の状況を考えなるべく戦闘は避けるべきだと考えた。
「まずは、アジトの場所と人数の確認だな。盗賊が襲ってきたときはそれなりの数だったはず。であれば、アジトには多くても数人くらいだと考えていいだろう。」
ラルクはそのように考え、まずはアジトを探し出し、そして残った盗賊の人数を把握するために動き出した。それからラルクは盗賊のアジトがあると思う方へと進む。そして、運よくアジトを探し出すのだった。
「(くっくっく。さすが俺様だ。見事あいつらのアジトを見つけてやったぜ!)」
ラルクは自分の隠れた才能に惚れ惚れするくらいに褒めたたえた。
「(さて、アジトは確認できたが人数がどれくらいいるかだな。)」
ラルクは今のアジトにどれくらいの人数がいるか確認する必要があるがそうすればいいか考えていた。そのとき
「すまん。ちょっと用を足してくる。」
そう言って、見張りをしている一人が、茂みに入って行った。
「(これは、チャンスではないか!ますます俺に運が回ってきた!)」
ラルクはそう思い、見つからないように男の後をつけるのであった。
「ふぃぃぃぃ。は~、すっきりした。」
「動くな!」
ラルクは後ろから剣を男の首にあてる。
「とりあえず。ズボンをはいてもらえるか。」
ラルクはズボンをはかせる。
「さて、妙なことはしないことだ。この場で斬り殺されたくなければな!」
「何が目的だ。」
「なに、ただ情報が欲しいだけだ。お前たちのアジトにいる賊の人数をな。」
ラルクは捕らえた盗賊から情報を聞き出した。男の情報によると、主力メンバーは今、とある貴族を襲うために出向いていないとの事。勿論、その貴族とはカトレアのことだ。そして、主力メンバーとリーダーのガベールがすでに倒されたことは、この男は知らない。なので、ラルクは
「その事なら、もうすでに終わっているぜ。お前たちの主力メンバーが全滅した事でな。」
「うそだ!主力メンバーにはガベールさんがいる!あの人を倒せる人なんかいるはずがない。」
盗賊の男はそう言った。しかし
「残念ながら本当だ!なぜなら、今回はSランク冒険者の死神が護衛についていたからな。」
「死神!!」
盗賊の男は思った。いくらガベールが強かろうと、この辺りで唯一のSランク冒険者の死神が相手であれば負けてしまうのではないかと・・・
「なんで、死神が護衛に参加しているんだ。Sランクなら貴族の依頼だって断ることくらいできるだろう。」
「さあな、そんな事、俺が知るか。」
ラルクはそう言った。Sランクは冒険者の中で最高ランクであると共に圧倒的に数が少ない。今の冒険者でもSランクに辿り着いているのはレティシアを含め、わずか10名くらいだ。もちろん、Sランクくらいの冒険者となると勇者ほどではないが単独もしくはパーティー単位で軍を相手にできるレベルだ。さすがに国を亡ぼすことはできないが・・・そのため、貴族の依頼だって断ることも多いと聞く。
「まあ、そういうことだ。諦めろ!それで今何人くらい残っている。」
ラルクは盗賊の男から情報を聞き出した。実際、今残っているメンバーが10名程度で
すべてが下っ端ばかりだ。剣すら持ったことのない者もいるとの事。それを聞いたラルクは
「それは良かったな。なら、俺が代わりにこの盗賊のリーダーをやってやるぜ。」
「何を言っている?」
「言い忘れたが、俺の職業は魔法剣士だ。」
ラルクの言葉に
「魔法剣士!上級職の?」
「そういう事だ。これからよろしくな!」
その後、ラルクは盗賊の男とアジトに向かい、下っ端の10名を叩きのめし、盗賊のリーダーになったのである。
「クックック。俺の運は終わっちゃいなかった!ここからが俺の英雄になる一歩の始まりだ!」
ラルクは大声で笑ったのである。
これで第三章は終了です。第四章もよろしくお願いします。




