決闘の後
ギルドマスターの声で決闘は終了した。気絶したラルクは、そのままタンカで運ばれて行った。サーシャはハンスを睨みラルクのもとへ向かい、他の二人はハンスと俺にお辞儀をして去って行った。そして周りからは
「すげーな、あの二人。」
「ああ、てかあれ、聖女の戦い方か?ほとんど殴ってた様に見えたが?」
「しかも最後は、素手でファイヤーボールを潰してたな。」
そんな話が聞こえてくる。まあ、俺は聖女らしい戦い方をしてないのはわかっているし、後方支援なんてガラじゃない。どうやら最近の俺は戦いに飢えているようだ。
「聖女もすごかったけど、あのハンスって村人だよ。あんな動き村人にできるのか?」
一人の男がそう言った。
「確かに村人にしては強すぎじゃないか?」
そう言った声があちらこちらから聞こえてくる。
「(さすがに疑われるか?)」
俺は心の中でそう思ったが
「彼の詮索はその辺にしておけ!」
とギルドマスターが言う。
ギルドマスターに言われたため、気にはなるがそれ以上の詮索はせず、皆散り散りになって去って行った。
俺たちは、場所をギルドマスターの部屋に移し
「相変わらず、お前の戦い方はおかしいわ。」
いきなりギルドマスターに言われた。
「あ、やっぱりですか?僕もずっとおかしいと思っていたんですよ。」
ハンスが強く同意する。
「むむ、どこがおかしい?いつものように戦っただけだが?」
俺はそう答えた。
「普通、聖女が剣を持った奴に素手で殴りかからんわ!」
ギルドマスターが言い
「うんうん。」
とハンスが頷く。
「聖女が後方支援という時代は終わったのだ。これからは前に出て戦わないと生きていけない。」
俺は胸を張って言う。
「そんなことを言うのはお前だけだ!」
ギルドマスターが叫ぶ。
「そんなに叫んで疲れませんか?」
「誰のせいだ。」
ギルドマスターが言う。
ギルドマスターは今日も元気だった。
「ふ~、そろそろ本題に入るか?」
ギルドマスターが真面目な顔をする。
「そうですね。」
俺も同意する。俺もふざけるのはやめる。
「今回の決闘で、君たちのことが噂になるだろう?」
「そうですね。ハンスが村人かどうか怪しまれるかもしれないですね。」
「ああ、その通りだ。」
ギルドマスターが言う。
「え?それほどですか?」
ハンスが驚く。
「普通に考えて村人が聖騎士に勝つことはありえない。」
俺ははっきり言った。
「その通りだ。だがレティシアのような例外もいるから絶対とは言えないが。」
そう、俺のように接近戦が苦手な職業でも相手次第では勝つことも可能だ。
「正直、相手が聖騎士だったとはいえ、戦い方が素人だったので、何とかなるかもしれない。だが絶対ではない。」
そうギルドマスターが言いきる。確かに彼女の動きはあまりにも酷いものだった。戦い次第では村人でも勝てるかもしれない。しかし、それなりの上位冒険者であればすぐにわかる可能性がある。となると
「方法はいくつかある。一番早いのはランクを上げること。次に貴族などと関係を持つことなどがあげられる。」
ギルドマスターが言う。
「ランクを上げるにも、これと言った依頼が今は無いですけど。」
基本、俺たちはオーク狩りがほとんどだ。むしろメタルオーガのような魔物の方が珍しい。
「じゃあ、貴族と関係を作るしかないじゃないですか?」
ハンスが言う。
「今はそれが手っ取り早い。それにちょうど息子とは顔見知りだ。この際、一時的とはいえ専属の冒険者になってみないか?」
ギルドマスターがそう言った。確かに、貴族の専属になれば、そう簡単にはちょっかいをかけてくることはできない。その間に功績を積んでランクアップもあるだろう。
「ハンス、この話は受けよう。万が一の場合に備えて。」
俺はハンスに言う。
「わかった。レティシアがそう言うなら。」
ハンスが同意する。
後日、俺たちはファブレ伯爵の専属冒険者となった。
「さて、もう一つ話がある。「青の翼」についてだ。」
ギルドマスターの言葉にハンスが「あいつらについて?」と少し機嫌を悪くしていった。
「まあ、少し落ち着いて。」
俺がハンスをなだめる。そして、ギルドマスターからは
「今回の決闘であの二人がDランクに、ふさわしいく無いと感じてしまってね。」
今回の決闘での二人の態度、そして戦い方。その両方をギルドマスターやほかの冒険者たちが見ていた。態度に関してはまだDランクなので多めに見ることは出来るが、戦い方が余りにも酷かった。正直Dランクにしては弱すぎる。俺はそう思った。ギルドマスターも同じことを考えていたようで
「あの二人には一度、Eランクに降下して、もう一度、一からやり直してもらおう。」
ギルドマスターがそう言った。彼らがDランクのままだと、他の冒険者に示しがつかないためである。彼らの降格の話が終わり、俺たちはギルドを出た。
「ハンス。すまなかったな。」
俺はハンスに謝った。
「ん?なんのこと?」
ハンスが俺に聞き返してきた。
「決闘のことだ。俺が出しゃばらなければ、ハンスが今頃2人をボコボコに出来たのじゃないかって、そう思ってね。」
「ああ、そのこと。気にしなくてもいいよ。」
ハンスはそう言った。
「あの場で2人とも倒してしまったら、村人か本当に怪しまれる。」
確かにハンスの言うとおりである。
「それに、ラルクはレティシアに完敗したって事は、接近戦が苦手な聖女に負けたって噂になるだろう。そっちの方が面白い。サーシャも村人に負けたって噂されるだろう。」
ハンスがそう言った。どうやら彼はそこまで気にしていなかったようだ。
「それに、ラルクの性格上、今回のことで、おとなしくなるとは思えない。機会はいっぱいある。」
そうハンスは言い切る。
「そうか・・・(君が望むのなら俺はどこまでも君についていこう。)」
隣で笑うハンスの顔を見て俺も笑った。




