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ハンスBランクになる

「町よ!私は帰ってきた!」


「・・・」


もうハンスからは何も言わなくなった。何気に少し離れたところにいる。


「どうした?ハンス?そんな可哀想な子を見る目は。」


「レティシア。君、わかって言っているでしょう?」


「いや、だって今回は俺が異世界転生で言ってみたい言葉トップ10に入っているのだぞ。」


「そんなの、知らないし!」ハンスから反論を受ける。うむ、異世界に転生したというのに夢のない奴だ。まあハンスはこの世界で15年生きてきたのだったか、そのせいか・・・自分は異世界転生歴2年、まだまだ異世界を謳歌したい年頃なのだ。


「頼むから人のいるところではしないでくれ。僕まで変な人って目で見られるから。」


「失礼な。さすがに人前ではしない。もし、したとしても、その時は道ずれだ。」


「もうヤダ、この人」そんなことを言いながら俺たちは町に入ってギルドへ向かった。



ギルドをくぐり依頼完了の報告を受付で済ませる。そして、しばらくしてからギルドマスターからの呼び出しにより部屋に向かった。


「おう、お疲れ様。どうやら無事に依頼は完了したようだな。」


「ええ、思った以上の大物がいましたけど、ハンスがトドメをさしましたよ。」

俺がそう言った。


「レティシアが時間を稼いでくれたおかげだよ。」

ハンス言う。


その後、森で何があったのかをギルドマスターに説明をした。


「メタルオーガか、確かに聞いたことのない魔物だな。死体は持って帰ってきているのか?」


「ええ、もちろん。」


ギルドマスターは俺がアイテムボックスを持っていることを知っているので聞いてきた。


「なら話は早い。早速だがそれを見せてもらおう。」


そう言って俺たちは訓練所の奥の解体所に向かった。



「なるほど、確かにこれまで見たことのないオーガだな。」


解体所で、そうギルドマスターが言う。


「ええ、皮膚が鉄でできているという所から、変異種で間違いないでしょう。」


「ああ、しかし何であの森にこんなのがいたのだ?」


「わかりません。メタルオーガ以外は特に何も問題ありませんでした。」


「ふむ、ハンス君はなんか気づいたか?」


「いえ、僕もレティシアと同じです。」


「そうか、一度、こちらでも他の冒険者に再調査の依頼をしてみよう。」

そうギルドマスターが言うも


「大丈夫でしょうか?メタルオーガがいた後で・・・」

俺が聞いたが


「ああ、大丈夫だろう。2パーティーと今回は領主軍も一緒に調査することになっている。」


一応人数はそろえているようだ。


「まあ、それでもヤバいと思った場合はお前たちにも参加してもらうかもしれないが。」

そうギルドマスターが言った。


「わかりました。そのときは協力します。」

そうハンスが言ったのである。


「ふむ、随分と逞しくなったな!ハンス君は。」


「ええ、あれから彼なりにいろいろ努力して少しでも強くなりたいと思ったのでしょう。」


俺はギルドマスターの言葉にそう返した。実際、この3か月。ハンスは俺の予想以上に強くなった。元々、勇者というだけでも他の者よりもスペックが高いのに、その能力に胡坐をかかず、必死に努力していた。その結果が今の彼だ。回復と支援以外では既に俺を超えているだろう。このまま行けばSランクも、そう遠くはないだろう・・・


「どうした?レティシア?」


ハンスがそんな俺の顔をみて言ってきた。


「いや、この3か月。ハンスは強くなった。そう思っただけさ。」


「僕が強くなれたのはみんなのおかげさ。決して一人の力ではここまで来ることはできなかった。そしてありがとう。あの時レティシアが僕の呪いを解いてくれて。君のおかげで僕は今ここにいる。」

ハンスは笑顔で俺に言った。


「・・・そうか。(こんな顔もできるのだな。)」


俺はハンスの見たことのない笑顔をみた。初めて会った時の笑顔ではなく、心の底からの感謝の笑顔だ。


「(まあ、俺もきっと先生たちにはこんな顔をしていたのかもしれないな・・・)」


あの時の俺はギルドの冒険者はクズばかりだと思っていた。それでも先生やギルドマスターと言ったいい人に出会えたのは幸運だったのかもしれないと俺は改めて思った。あとオネェも。

人から感謝されるのも悪くない。ハンスの顔を見てそう思った自分がいた。


「ところで、ギルドマスター。ハンスのランクはどうするの?」


俺は話を変えるようにギルドマスターに言った。


「ああ、その件に関してはとりあえずBランクにしようと思っている。」


「え!Bランク」

ハンスは驚くも


「Bですか?メタルオーガはAランク相当のはずですが・・・」

俺が言うと


「ああ、だが一応Sランクのお前が一緒にしたという事になるため、ハンス君が一人で倒したと、説明ができない。よってBランクが妥当と判断したまでだ。それにあまりホイホイとランクアップすると周りに怪しまれる。今回はメタルオーガと普段の実績を考慮してBまでなら何とか言い訳もできる。多少心情が混じったと思われるくらいで済むだろう。」


「なるほど・・・確かに言われてみれば納得ですね。」


俺もギルドマスターの意見に同意した。その後、驚いているハンスを連れて受付に向かいBランクのカードを受け取り、今日のところは宿に戻ったのである。

次に閑話~青の翼編②~を入れて一章は終わる予定です。

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