過去を思い出して
死神聖女!ざまぁを執行するサポートをしよう!の連載版です。誤字脱字があるかもしれませんが温かく見守ってくださると幸いです。更新は不定期になる可能性がありますので、あらかじめご了承ください。
「ハンスお前を追放する!」
ギルド内でそんな声が聞こえた。
「ど、どうして・・・」
「お前が役立たずに決まってるからだろうが!」
パーティーのリーダーっぽい人がそんなことを言っていた。
「(確か、あれは最近噂になっている「青の翼」だったかな?)」
俺は離れた机からそれを見ていた。
「(「青の翼」は男二人と女三人の五人パーティーだったかな?彼を追放してハーレムでも考えているのか?)」
「俺だけじゃない。これはパーティーメンバーで決めたことだ!」
「ごめんね、ハンス。私、彼についていくことにしたの。」
一人の女が彼にそんなことを言った。
「そんな!サーシャ!ずっと一緒だって言ってたじゃないか。」
「そうね、確かに言ったわ。でも、今は彼が好きなのよ。」
そういって彼を突き放す。そしてリーダーはニヤニヤ笑っている。
「(彼女を奪われたってところか・・・)」
そのあと、男は下を向いたままギルドを出て行った。
俺は、その姿が昔の自分によく似ていた。この世界では天職といった、ゲームのような職業がある。俺は転生するときにヒーラーを選択した。そして、この世界に転生するときに「外見は神様にお任せします」って、言ってしまったため、女としてこの世界に転生した。女になったときは正直いろいろあったけど、今は受け入れている。当時の俺は、ヒーラーがどういった扱いなのか全く知らなかった。ヒーラーとは回復魔法しか使えず、回復量もポーションと同じかそれより劣り、転職までの経験値稼ぎ(レベル上げ)に時間がかかるため、どこのパーティーからも断られた。ヒーラーを育てるパーティーはそれこそ、お金があるような上位ランクくらいで、新人冒険者には自分のことでいっぱいなため、積極的にパーティーに入れようとはしないというのが理由である。
「(ずっと、断られ続けたせいで、精神的にあの時はキツかったな~)」
俺は昔のことを思い出していた。
中には俺が女だってことから、別の意味で仲間にしてくれると言った人もいたが、目元がニヤニヤして気持ち悪かったので断った。確かに自分でも言うのはあれだけど、結構な美少女でスタイルもいい。だがそれでも譲れないものはある。そして、俺は決めた!パーティーが無理なら俺は一人で強くなってみせると。ヒーラーだからと言って武器が持てないわけでもないので、その日から俺は回復魔法の訓練だけでなく、基礎体力などの筋トレをし、初心者でも簡単なクエストばかりを受けて生計を立てていた。そしてレベルがあがり、転職し「聖女」になることができた。聖女は回復魔法だけでなく攻撃魔法、支援魔法などが使え、攻守優れている。回復量もヒーラーの時とは格段に違い、部位欠損なども治すことができるため、パーティーからの勧誘が多い。
「(まあ、俺の場合は、チートスキルをもらっていたから聖女まで簡単になれただけで、運が良かっただけだけどね。)」
そう俺は「成長」というスキルをもらった、成長はそのままの通り、人よりも早く成長するといったものだ。もちろんそれなりの努力は必要だけど・・・
「(あの時は、必死で強くなることばかり考えていて、多少の無理はよくやったな。)」
もともと、ヒーラーは体力などが無いのに、朝早くから剣士並みの訓練をギルドの訓練所で行い、そのたびに筋肉痛になり回復魔法を使っては魔力切れ寸前まで追い込んだ。朝のうちに訓練所で訓練していた理由は、朝はみんな依頼を受ける人が多く、訓練所を使う冒険者が少ないのと、あまり他の人に見られたくないことが理由である。まあ、それでも何人かは訓練所にいるけど・・・その冒険者も、ヒーラーが剣を持って剣士のまねごとをしている俺を見ては笑っていたが、俺は無視して黙々と訓練を続けた。
そして、新人教官。のちに先生と呼ぶ人に出会い、先生にはそれではダメだと言われてしまった。その後は、先生に訓練メニューを立ててもらい、訓練を続けた。お金に関しては、この世界に転生した際に、ある程度のお金は持ち合わせていたけど。ざっと今の宿なら1か月くらいは問題ないくらいもらっていた。
1週間が経ってからようやく「成長」スキルの効果が出てきたのか、疲れにくくなり、朝は基礎訓練と魔力量をあげる訓練。昼からは、小さな個人の診療所で回復魔法の依頼を受けていた。最後の方には、町の外に出て、単体、もしくは2体までのゴブリンを剣で倒せるようになっていた。魔物を倒すことによってレベルというものが上がりさらに能力も上昇する。そして、成長スキルによって、ふつうの人よりも多くの経験値を習得しさらに強くなれた。聖女に転職できる手前には、武器を剣から槍に変え槍の練習をした。最終的には大鎌を使いたいと思ったからだ。理由は、大鎌はこの世界でも死神のイメージあり、「魂の刈取り人」と言ったふうに、冒険者にとっても恐怖の対象となる。ギルドの冒険者に、俺は一人で、ここまで強くなったと教えるためでもある。それからしばらくして、ついに俺は、聖女に転職することが来た。
そして、俺が聖女になったとたん、パーティー勧誘が増えた。そりゃあ、聖女がパーティーにいるだけで、回復手段だけでなく支援などによる身体能力の上昇などが増え、パーティーの戦術の幅が増える。初心者にとってはポーションなどによる雑費が減るといった、いいことばかりだ。
しかし、俺は・・・
「申し訳ありませんが、お断りさせていただきます。」
そう言って
「回復魔法が必要なら、ヒーラーを仲間に入れればいいのでは?」
と勧誘する人に言った。
当然だ!聖女になったから入れてやるって聞こえて腹が立つ。
中には「ヒーラーなんかより聖女の方がいいに決まってるだろ!ヒーラーなんてポーションくらいの回復量しかないし、戦闘もまともにできないお荷物だ。」そういう冒険者もいた。だからこそ俺は
「俺がヒーラーだったとき、カラダ目的のゲス以外は誰もパーティーに入れてくれなかった。だから、これからも誰とも組まない。」
そうはっきりと言い放った。それからは、他の冒険者も、思うところがあったのか、俺を誘う冒険者はいなくなった。
まあ・・・そんな感じで俺はずっとソロで活動を続けている。武器は聖女になったときに買った大鎌だ。そして、真っ黒なボロボロのローブ。聖女が大鎌を使うという異様な姿から、「死神」と言われるようになっが、今ではなんと冒険者最高のSランクにまで上り詰めた。理由は簡単、自分に回復魔法と支援魔法をかけた状態で戦い、「成長」スキルでガンガン成長していたら、いつの間にかSになっていた。とまあ、俺の話はここまでにして、さっきのハンス君を追いかけよう。